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神を狩る者  作者: 柏木 幸人
3/7

人間狩り 2

今回はついに、神降臨です。

多少グロ表現あります!

やっと戦闘シーンも書けてすっきりです!

烈が少年を傷つけてしまったせいか、

村の人々は汚物を見るような目から、、鵜神兄弟を敵視するようになった。

とゆうより、恐怖心を持っているのかもしれない。

いくら村のはずれにある教会だって無事ではなかった。

翼は入り口に貼り付けられた「村から出てけ」と書かれた張り紙をはがしていた。

「烈、出ておいで。大丈夫だから、ほら、今日からビシバシ特訓するんだろ!」

腕を振り回しながら教会の中に呼び掛けたが、返事は返ってこない。

無理矢理連れ出してきてもいいが、それでは特訓にならない。

「仕方ないか・・・烈なりにショックも大きいだろうし。でも、ほら!こんだけ張り紙あると火には

困らないよな~、なんて!」

焚き火に張り紙を突っ込みながら、翼は一人で笑う。

「あははは・・・はぁ」

いくら待っても返事はこない。

翼は腰の剣に手をかけて、深い深い溜め息を吐く。

「今日は兄ちゃんの剣使わせてやるから!」

「ほんと!?」

「おう!って烈、教会の中にいたんじゃないのか?僕は寂しく無人の教会に話しかけてたのか?」

翼の真後ろから出てきた烈は、きょとんとしながら焚き火に食材を近づけた。

「ご飯探してたんだよ!今日は特訓だから、たくさん食べなきゃと思って」

「おぉ、そっか。ありがとな」

そう、烈の頭を撫でて笑う翼は、一番大きな魚に手を伸ばすが・・・

ぺしん!

「これ僕のー!」

烈に阻止され、仕方なく小さな魚を選んだ。

ポカポカとした、とても気持ちのいい朝だった。

ついうとうとしていると、烈にほっぺをつままれる。

「これから特訓!」

「はいはい、ハハハ!」

12歳の弟に、18歳の兄。

歳はそこまで離れてはないけれど、どことなく翼が父親に見えてしまうのは、彼が精神的に大人だからだろう。

逆を言えば、烈が幼いのかもしれないが、

これは禁句だ。

「今日はどこでやるの?」

「そうだな~、谷に行くのは危ないし・・・森はさらに危ないし・・・」

考えていると、烈が突拍子のないことをいいはじめた。

「ガルザ平原に行きたいな!」

翼は食べていた魚を盛大に吐き出した。

「ばか!お前知ってて言ってるのか?あそこは魔獣の住みかだぞ!ここから山二つは越える必要があるんだ。それに、魔獣をもとめて神が魔獣狩りに来ることもある!危険すぎる、だめだ!」

神が兵として使うキメラは、魔獣と人間が不可欠だ。

ガルザ平原には数多くの魔獣がいるため、

人間狩りに天空からやってきた神が訪れることも多い。

「えぇ!?行ってみたかったのに」

「兄ちゃんだってそうそう行かないぞ?危ないからな」

「でも、魔獣がたくさんいるから、早く強くなれるよね!」

翼はこのとき、烈の気持ちを悟った。

だから、あえてガルザ平原に行くことを拒否した。

「焦るなって、早く強くなれる奴なんかいない!」

少し、荒っぽくなってしまうが、

止めなければならない。

こうゆう烈みたいな焦りが、人を死へ誘うのだから。

「ちぇ~、わかった。」

「烈はいい子だな、よし、今日はここでやろう!」

「ここで!?」

「あぁ、素振り千回な!まずは基礎からな」

ぶーたれる弟を、翼はいとおしそうに見つめた。


同時刻

「あの孤児の兄弟は油断ならねぇ!」

一人の男がビール瓶を投げつけた。

周りの人間はそれに同調し、次々にわめきたてた。

「そうよ!私の息子、足を切断するしかなくなったのよ!!でもあのこは足をつかまれただけって言ってたわ、片腕でそんなことできるなんて、

やっぱり化け物だわ!」

「片腕でかい!?」

「ええ、瞳はまるで獣で、右手は青い光に包まれていたそうよ!」

女性はヒステリックに叫び続けた。

「あの子の兄もそうなんでしょ?早くどうにかするべきよ!」

「確か不思議な力を持っていたな。

なにか手はないものか・・・」

一人の男が手を挙げた。

「村から追放したら?」

「ばっか、それじゃあ恨まれてよけいに被害にあうじゃないかよ!」

「確かに・・・」

次第に黙っていく男たち。

その中で、息子の足をやられたあの女が前へ出てきた。

「私に、妙案がありますわ」


「78・・・79・・・はぁ、はぁ」

「どうした烈、まだ100にもなってないじゃないか。そんなんじゃ、七瀬みたいになれないぞ?」

汗が止まらない。

拭いても拭いても出てきて、剣を握る手を滑らせてしまう。

「これ、細いのにこんなに重たいんだね」

「そりゃあ、烈より剣のほうがでかいからな。

おっきくなれば、慣れるよ」

「へぇ~、僕も剣がほしいな~」

素振りの手を休めて烈が額の汗を拭うと、

翼はにこやかに剣を指差した。

「いつか烈が兄ちゃんくらいおっきくなったら、

それは烈にあげるさ」

それを聞いた烈は、素振りのことなんか忘れて

翼に詰め寄った。

「ほんとにほんと!?」

「あぁ、兄ちゃんはその頃になったら剣をやめるからさ」

烈の喜びは、翼の言葉によって半減した。

とても翼が冗談で言ったようには思えない言葉だったからだ。

「烈が兄ちゃんくらいになったら、学校行かせてやりたいんだ。そのためには金がいる。服がいる。教科書がいる。だから兄ちゃんは仕事して、お前に楽しくすごしてもらいたい。学校は楽しいだろうな。

あ、学校行くなら剣なんかいらないか、ハハハ!」

これは冗談なんかじゃない。

翼は照れ屋だから、ほんとのことは冗談のように話す癖がある。

今もきっとそうだろう。

座っていた翼は立ち上がると、大きく伸びをした。

「僕ができなかったこと、したかったこと、

みんな烈にしてほしいな。それが、兄ちゃんの

一番の願いかな」

「それ以外になんにもないの?」

「ん?そうだな~・・・嫁さんでももらおうか!」

「えー!兄ちゃんは僕のものー!!」

「アッハハハ!こりゃまた可愛い嫁さんだ!」


はっきり言って、兄ちゃんが考えてそうなことだと

思っていたけど、

改めて本人から聞くと、やっぱり大人なんだなって実感した。

でも、学校なんて行かなくても、

僕は充分幸せだと思うけどね。


「よし!つづきつづき!」

剣を拾って烈に投げた翼は、再び空を見上げた。

「幸せだなぁ」

「なぁに?兄ちゃん」

「いや~、嫁さん来ないかなってね!」

「来ない来ない!」

「言ったな~?待ってろ!明日にでも連れてくる!」

「追い返す!」

「な、なんだと!」


結局、千回やるのに夜までかかってしまった。

烈はもうくたくたになり、その場に倒れた。

「お、終わった・・・」

そんな烈に追い討ちをかけるように、翼は笑いながら言った。

「明日からずっとな!」

「死んじゃうよ~」

「素振りで死ぬなんて、聞いたことないな!」

烈は翼の声を聞きながら空を見ていた。

たくさんの星が、キラキラと輝いている。

けど、あの神の塔に全て支配されていると感じたとき、星は綺麗に見えなくなった。

「兄ちゃん、僕、悪いけど学校には行かないかもしれない」

「だろうな」

「え?」

あまりにあっさりした返答に驚き、上体を起こす。

翼も星を見ていた。

「きっと言い出すだろって思ってたよ。僕自身、

このまま幸せになれるとは思ってない。

神を潰さないかぎりな」

「うん」

「・・・まぁ、まだ先のことだ。

よし、帰ってご飯にしようか!」

「やった!今日はなに?」

「そうだな~・・・?烈、兄ちゃんの背中に乗れ」

いきなり何を感じたのか、翼は真剣な表情になった。

言われたとおりに背中に乗り、辺りを見回した。

「あ、あれは!?」

「ちっ、大方村の人間が厄介払いしにきたな・・・

烈、ガルザ平原に連れていってやるよ」

「え?今?」

「今しかない。どうせこんな村に未練はないだろ?」

「・・・っ」

烈は全てを悟った。

「うん。ない!」

その烈の返事を聞いた瞬間、翼は走り出した。


「火を放てー!」

その頃、民の手によって鵜神兄弟のすみかであった教会に、火が放たれた。


「ガルザ平原についたらどうする?」

「魔獣を倒すー!」

「素振りでへばってたのにか?」

「う、うー!」

烈はポカポカと翼の頭を叩いた。

「わ、わかった。わかったから!」

そのとき、いきなり空が明るくなった。

風で雲が払われたようだが、そんなに強くもなかった気がする。

「な、なに?兄ちゃん」

「わからない・・・魔獣ではなさそうだが」

一応剣に手をかけ、集中する。

「に、兄ちゃん!あれ、なに?」

烈はひどく怯えていた。

何かと思い翼も空を見上げた。

「っ!!」

月に浮かび上がったのは、奇妙な翼を持つシルエット。

そして、その真ん中には人が・・・


「烈!死ぬ気で逃げるんだっ!!」

「う、うん!」

翼は烈を背負いながら全力で走った!

あのシルエットがなんなのかを、知っているから!

(僕が烈を一人にさせちゃいけないんだ!!

烈を、守るんだ!)


ーー神、人間狩りに降臨ーー


村の人々は教会を焼き払い、帰る途中だった。

悪魔を退治しただのなんだの、とにかく人々の気分は酔っていた。

そこへ・・・

「グオォォォォォォォォ!!」

いきなり轟いた重たい鵜なり声。

村人はいきなり背後からキメラに襲われたのだ。

集団で襲いかかられた村人は逃げ惑い、人と押し合いながら走り出す。

しかし、キメラの大きな足が数人を一気に踏み潰していく!

グシャッ、ビシャッ

ブチッ

キメラは潰した人間の頭をねじり切り、うまそうに

口の中に入れていった。

「きゃあああぁあぁ!!」

足を烈に潰された男の子が木に投げつけられ、

腹が破裂し、内臓が辺りに飛び散った。

それは彼の母親の顔にもべっとりとこびりついた。

「い、いやあぁっ!!誰か、誰か助け・・・ゴハッァ!?」

母親は充分な悲鳴さえあげられず、顔面を爪で吹き飛ばされて死んだ。

坂の地面を、血の雨が流れていく。

神はそれを、つまらないものを見るように

見下していた。

「ふ、ふざけやがってー!」

一人の男が神に石を投げつけるが、石は飛ばなかった。

男の肘はあり得ない方向に曲がっていたからだ。

ベキッという音と共に、肘から骨が突き出た。

「う、うがああおぉぉっ!!」

神は、さらにひとさしゆびを自由に振り回しながら男の体をバラバラにしていく。

それも、死なない程度に。

両手両足をもぎ取られた男は、最後に神の声を聞いた。


「死ね」


神が足を上げ、踵てわ男の喉を踏み潰した。

返り血をあびながら、神は不服そうに呟いた。


「ここには、いないようだ」



村人の悲鳴は、烈や翼にも聞こえていた。

「くっ・・・」

「う、う、ぁ・・・」

「烈、しっかりしろ!」

烈は拳を握りしめ、やっとのことで呼吸を整えた。

「村にいなくて良かった・・・それだけが救いだ」

「う、うん・・・」

「烈、絶対逃げ延びるぞ!」

翼は焦っていた。

能力者がいないとわかれば、すぐに追いかけてくるに決まっているからだ。

それに、神からは逃げられない・・・。

「兄ちゃん!キメラが!」

「?!」

「わっ!!」

キメラの接近に気付けなかった翼は、キメラの蹴りによって吹き飛ばされてしまった。

それをいいことに、背中にいた烈を茂みに蹴飛ばして隠すことができた。

「出てくるなよ、烈・・・」

三体の巨大なキメラが地面に降りたった。

そして、その中心に神が降臨する。

美しい、としか言えなかった。

緑の長い神を風に泳がせ、血の滴る腕を払った。


「鵜神 翼。余は貴様を選ぶ」


声さえも、絶対服従の重さが感じられた。

だが、負けられなかった。

「残念だな。天空なんかでこんな化け物に

なるんなら、僕は人間に化け物と罵倒されたほうが

気が楽だ」

翼が剣を鞘から抜くと、辺りには青い光が広がった。


「・・・その剣・・・やはり貴様が持っていたな」


「フッ、これでも、鵜神だからなぁっ!」

剣を構えると、神目掛けて突進した。

後ろから二体のキメラが出てきて立ち塞がるが、

翼は剣を上に振り上げた。

「汝、光の雨に貫かれるであろう!

流星の太刀!!!」

そう叫ぶと、剣から羽が舞い上がり、星ほどの小ささになると、まるで流星のように羽が降ってきた!

「グオォ、グオォォォ!!」

二体のキメラは体をズタズタに引き裂かれ、

血の噴水を残して倒れた。

最後の一体が口から炎を吐き出すと、翼は剣を

一振りした。

炎が真っ二つに割れ、吐き出していたキメラをも

両断する。

「次は、貴様だ!」

スッと刃先を神に向ける。


(兄ちゃんって、こんな強かったんだ!

勝てる!これなら勝てるよ!)

烈はそう信じていた。


「余を、殺せるか?」


「殺ってやるよ、そして、僕たちは幸せに

なるんだよぉっ!!」

翼が剣を振り上げるより早く、神がひとさしゆびを降り下げた。

「ぐっ!!」


(あっ・・・ぁ、ぁ)


翼の右腕が、剣を握ったままはね飛ばされた。

ボタボタボタ・・・

「がはっ、くそ、剣を・・・」


「所詮、この程度なのだよ」


神が右手を振り上げようとしたとき、翼の左手が青い光に包まれた。

「消えろぉぉっ!!」

無数の羽が翼の左手から放たれ、神の左目を

貫いた。


「な・・・に?」


そして、片腕でもう一度突進していく翼。


(こんな兄ちゃんだったけど、烈は良かったかなぁ)


左手の光が大きくなる。


(まだ、たくさん教えてあげたかったのになぁ)


神の顔面向けて拳を振り上げる。


(あいつ、これから一人になっちゃうのかなぁ)


ひとさしゆびで軽く吹き飛ばされてしまう。


(もっと、一緒にいたいなぁ)


何度も突進を繰り返す。


(僕がいなくなったら、あいつ、誰が育てんだろ)


避けられ、盛大に転ぶ。


(誰か、)


立ち上がる。


(誰でもいい、)


そして、全てを込めた拳を神に・・・

(烈を、一人にしないでくれ・・・)




目映い閃光がほとばしり、烈は目を瞑った。

「兄ちゃあぁぁぁぁぁぁん!!」



やっと光がおさまり、目を開くと目の前には翼が

立っていた。

そして、僕の頭をいつものように優しく撫でて。


「ごめんな・・・?」

「兄ちゃ・・・はっ!?」


翼の胸から、神の腕が突き出ていた。


「兄ちゃん、お前一人にして・・・ごめんな?」

挿絵(By みてみん)

烈の両目から、涙が溢れた。

翼が涙の滴を溢すと、滴は一枚の青い羽となり、

烈の両手におさまった。


「嫌だ、やだやだやだやだ、兄ちゃん、兄ちゃん!」


愛しい兄の笑顔は、烈が手を伸ばした直後、

神と共に、空気のように消えてしまった。

烈の両手は、しばらく虚空に浮いていた。

「一緒に、いるって言ったのに、神なんかに、

孤児は選ばれないって言ったのに・・・

幸せだと、思ってたのにいぃぃぃぃぃっ!!」


烈は、一晩中そこで泣いていた。


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