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第八話

言った言葉を、君はどう取る?


その言葉を、あなたはどう思って言ったの?


          ☆


「もう、僕のことなんか忘れてくれって。」

おそらく篠が傷つくであろう言葉。

そして、想像以上にその言葉は僕をも傷つけた。何でだろうなぁ……覚悟してきたのに。どうしてだろうなぁ……。覚悟したのに、どうして篠の泣き顔に揺らぐんだろ……?

言いたいことを勝手に言ってしまって、手持無沙汰になった僕は頭をかきながら瞳に涙をため、溢れさせていく篠を見る。篠は、呆然と零れる涙を無視して、言葉を紡いでいた。

「何で……何でそんなこと言うの……?」

否。それはきっと、思ったことが行き場をなくして吐き出されているだけ。

「何で、忘れてくれ、何て……」

どうすれば分からなくなって吐き出されているだけ。

「何で……私は隼のこと、忘れたくないのに……!」

そして、嘘偽りのない言葉だからこそ、心に突き刺さった。罪悪感が深く来た。

「僕だって忘れたくない。」

だから、その罪悪感に押し負けて本音がこぼれる。隠し通そうと思っていた理由を引き連れて。

「けど、さ。」

言う。

「もし、僕と篠が逆だったとして。」

その問いかけに、篠が涙のたまった瞳をこすって……やっぱあの仕草可愛いよなぁ。初めて会った時から思ってるんだけど篠って美人系で、でも時々の仕草が子供っぽくてでもそれが妙に似合ってて……死んでるけど彼氏でよかったなぁ……あれ独占だもんなぁ……でも今篠の研究室には男子が一人いたはず……まさか篠を狙って、

「隼?」

脱線した思考が篠によって戻される。あの首を傾げる仕草も本当に以下略。今はシリアスシーン。のろけるのは神様相手にやっておこう。

「逆だったとして……僕が、自分の人生を篠のために無駄にしてるって思ったら、どうする?」

「いやだよ。」

即答が来た。僕は頷いて、

「つまり、そういう事。篠がやってることはそういう事だよ。」

「じゃあ、研究止めるから!」

内容はもう理解したから、と篠が再び目に涙をためて

「やめるから!だから、忘れろなんて、言わないでよぉ……。」

泣いた。その、僕が言った理由がわからないから、と全身で語っているかのように。

そうだろうなぁ……。

ぼんやり思う。きっと、僕が篠でもわからないだろう。相手に謝るために研究をして、その研究をやめるというのにそれでも尚自分を忘れろ、なんて。でも、篠が僕のせいで篠の人生が無駄になってるのは研究だけじゃないし。……でも、言いたくないなぁ……。

本当は言いたくない。僕はもう死んでいて、隣にいれないからそう言う資格はない。でも、篠がそれで人生を存してるのなら、僕は言うべきなのだ。

篠の魅力に気付いて、それを一時期とはいえ独占した人間として。

本人相手にのろけ、スタートかなー。

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