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第四話

言われる。

否定する。

可能性だと示される道を。


言う。

否定される。

行きたいと望んだ道を。


          ☆


「……寝癖ぐらいは整えたらどうかね?」

院長室に行ってまず言われたのは、おせっかいなそんな言葉だった。院長に言われて早く来たのになんと贅沢な奴だ。……桐木君もこの髪形のまま出ていく僕を止めようとしてたから本気でやばいのかもしれないけど。

「すみまっせーん。」

気楽に誤り、手櫛で髪を整える。長い髪は切るのが面倒臭いという怠惰が100%の理由だ。特にファッション性も何もないのだが、手櫛で髪を整えた僕を院長は満足そうに見て、けれどため息をついて

「全く……もう少し身なりに気を付けたまえよ。」

「……はぁ。」

桐木君と言い、院長と言い、ここには思考回路が不安な人ばかりなのだろうか……?少し不安だ。

閑話休題。

「それで、何の御用です?」

分かってるけど。理解って(分かって)るけど、知って(分かって)るけど、聞き飽きた(分かってる)けど……

諦められ(分かって)ないから、僕は聞く。何回も……何万回も繰り返された言葉を。

「もう分かっているだろう?」

院長も分かっているのか、少し呆れたようにため息交じりに言う。意見は曲げれないけれど、それに少し申し訳なく思う。変な実験ばっかする僕を置いておく余裕なんかないはずなのに、『才能がある』という理由でおいてくれてる院長は善意の塊だ。彼の頭の白髪の九十パーセントはきっと僕のせいだし、彼がしている苦労の九十パーセントも僕だ。それに彼が太いのは……それはちょっと責任とれないなぁ、と思った。

そんなバカなことを考えている僕の思考を無視して、院長は続ける。何度も、何度も言った言葉をまた重ねる。

「新しい研究が始まる。……難解な研究だ。今の研究をやめて、研究チームに入ってもらえないかね?」

彼が、桐木君が、友人が、親が、近所のおばちゃんが、ホタルイカが止めろという僕の研究。


















それは、死んだ人と意思疎通を図る、というものだ。


          ☆


求められていないし、必要とされていないけれど。

語り、探そう。

未来の自分という観客のために。


          ☆


僕がしている研究。『死んだ人と意思疎通を図る』。それは、単純に言えば死後の世界……冥界にある魂と通信をするものだ。

冥界がなければ前提が成り立たないし、人の魂は輪廻転生するとも言われているからその人の魂が冥界にあるとも限らない。馬鹿馬鹿しい研究。それに全力で挑んでいるのが僕だ。

死んだ人のDNA、死ぬ直後の脳波の変化を始め、関係なさそうな物事にも首を突っ込んで、研究をしている。

出来ないなんて分かっている。けれどやりたかった。

無理だというのは分かっていた。けれど、叶えたかった。







だって僕には、彼に言わねばならないことがあるから。

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