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第二話

あの日。失うことの怖さを知った。

あの日。失われるという事実を知った。

あの日。あることが普通でない常識を知った。


そして、今。手を伸ばしても、届かないものを見ている。



          ☆


「君、夢諦めなよ?」

諦めろ……って。

僕はホタルイカの言葉を繰り返し、繰り返し呟く。そして、返す。

聞き飽きたって、それ。

「……?」

ホタルイカが驚いたようにシルエットで首をひねる。ホタルイカが知らないことを知っているのは勝った気がして、ちょっと優越感。まぁ、単に自分のことだから……自分の過去のことだから分かることなんだけどなー。

僕はちょっと苦笑して、ホタルイカに話しかけるように思う。別にぐっちゃぐっちゃの思考でもわかるだろうけど、まとまってたほうが分かりやすいだろ?

「それはな。」

じゃあ続行。夢を諦めろ……だったっけ?それ、散々言われたよ。教授にも言われたし、家族にも友人にも、部下にも……あ。近所の噂聞いたおばちゃんからも聞いた。本当に耳にタコができるんなら僕の耳の穴は塞がってるぐらい聞いたんじゃないかなぁ?

「じゃぁ……何で?」

諦めないのかって?

僕の言葉にホタルイカが頷く。ホタルイカは何か難しく考えてるみたいだけど、僕が諦めてない理由なんて単純明快だ。ただ、諦められないだけなんだから。

「諦められないだけ……?諦められないから諦めないって、そういう事?」

そう。単純だろ?

「単純だけど……そうしたら、いつ諦めるの?」

そうだな……叶ったときか、死ぬときじゃね?

「それは諦めないのと同じだよ……!」

ほら、粘着系ってやつ?

「きれいに掃除できそうだね……ってそうじゃないよ!」

ギャグを入れる余地があるなら大丈夫でしょ?答えの出てる小難しい話はもういいからさ。そういう話しようよ。

「君が変なこと言うからだよ!」

変な風に拾うからだよ。

ホタルイカの雰囲気に懐かしさを覚えながら、僕は笑う。それは、懐かしい心から出てくる安心できる笑いで……けれど、以前そうやって笑ったのが何時かは思い出せない。

「それは、誰に諦めろって言われても?」

うん。ていうか知ってる人の全てには言われたかな?それでも諦めないけど。……あ。叶いっこない夢ばっか追いかけるんじゃなくて親孝行白って言っても意味ないよ?だってそれ、親に言われたし。

「じゃあ……僕が……――――――が言っても?」

あ、またピーーーッって入った。ホタルイカお前どんな存在だよ。

そう突っ込んだ僕の言葉に、ホタルイカは落ち込んだように下を向き、沈んだ声で

「そっか……そこまで、言っちゃダメなことなんだ……。」

……?どういう事?

僕はホタルイカの異変を感じ取って、首を傾げつつ聞き返す。けれど彼は慌てて再び微笑みを浮かべ、

「何でもない。気にしなくてもいいよ。―――それより、さ。」

ホタルイカは、再び真剣な口調で言った。

「もうすぐ夢が覚めるよ。だから―――――もう少し、自分の人生を考えてほしいな。」

それは、切実な願いが込められた――――

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