第一話
夢があった。
多くの人に色々言われ、
それが難しいという現実も知っていて、
夢見がちだということも知っていた。
けれど、諦められなかった。
ずっと望んでいたから。
そうある世界を、
それが当たり前だという、たったそれだけのことを。
だから、足掻いて、足掻いて、足掻いてきて……
ある日、僕は彼に出会った。
☆
「ねぇ、いい加減起きたらどうなのかな?」
「――――ッッ!?」
その声とともに降ってきたのは拳だった。
腹に来た重さに、声もなく悶絶する。そして閉じていた眼を開いて、呆然と周囲を見渡す。そこは暗い空間で、闇がどこまでも広がっている。なぜか僕と――僕を殴った奴の輪郭だけは光って見えるけど。中途半端なホタルイカかよ……。まぁ少なくとも僕のあの散らかった部屋じゃないってことは分かる。僕の部屋はコーヒーのにおいがしみ込んで空気まで苦くなってるし。
「ここは君の夢の世界だ。」
僕を殴った人間がそう言う。その声はどこかで聞いたかのように懐かしく――けれど思い出せなくて……そこまで僕はようやくするべきことを思い出した。急に殴ってくれやがったこいつに文句を言ってやらねば。
「……。」
けれど、口は言葉を発さず、ただ開閉を繰り返すだけだ。とりあえず、内心で思いのたけを叫ぶ。うわぁぁぁぁぁぁぁあぁ!?好きな人に告れないじゃないか!
「いないでしょ?」
そうだけども。
ホタルイカの―――
「ホタルイカ固定なの?」
嫌なら名前言えよ。
「無理だと思うよ?」
何で?
「言ってみたらわかるけど―。僕は――――だ。」
え?何お前。ピーッって規制入ったけどどんな単語言ったの?つかそれが名前ってどんなR-15存在?
「規制されてるんだよ!なんなら某ラノベみたく『それは禁則事項です』っていちいち言ったろーか!」
規制って時点で某ラノベっぽいけどな。というより規制って誰にされてるの?上司?
「神だけど?」
マジ?神見たことあんの!?
「一応上司というか、お世話になってるというか。」
じゃあさ、神って剥げてんの?剥げてたら『神は太陽に化身して世界を見守ってるんだぜ!説』通称『神は太陽説』が本説に!
「それこそ禁則事項だよ。それ言うと僕消されるし。……ていうか、それまだいってるんだ?」
……?まだ?僕前に会ったことあるっけ?
この説は本当だった場合、この世界を騒動に巻き込む。この説を発見したのは僕だから、その騒動で発生する金銭が全部僕に入ってくるよう、誰にも言ってない気がするけど……あれ?でも一人だけ言ったような……誰だったっけ……?
僕はふと記憶に欠陥を覚え、首を傾げる。忘れてしまったものはいったい……
「何でもないよ。それで、僕に聞きたいことあるでしょ?」
……じゃあ、ホタルイカ。
そういったホタルイカの言葉で、僕はその出来事を考えるのをやめ、(気分的に)居住まいを正し、ホタルイカをまっすぐ見る。
ここ、どこ?夢の世界なんて言う厨二全開なことはいいからさ?
「でも、夢の世界でしかないからなぁ……。」
ホタルイカは困ったように言って……思いついたように
「僕は、君に言いたいことがあって来たんだ。」
言いたいこと?何それ?
ホタルイカは急にまじめになって、真剣な口調で
「君、夢諦めなよ?」
ありがとうございました。
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