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武器は拾うものです。~世界最強のウェポンマスター、転生してなおダンジョン攻略試みます~

この物語は「最初の一歩で負け筋を全部潰す」タイプの主人公が、異世界の制度ごと攻略していく話です。

 第一話 赤ちゃん?!――そして“拾う”が始まった


 目を開けた瞬間、世界はやたらと明るかった。


 天井がある。白い布が揺れている。鼻の先に丸い手――いや、これ、俺の手?

 握ろうとしても、指がうまく閉じない。


「……ぁ……」


 声が出た。変な声だ。というか、喉が勝手に震えてる。


 脳の奥が、じわっと熱い。

 ゲームの最終ボス。ミス一回で全部パーになるクソゲー――『異界潜心イカイセンシン』。

 クリアの瞬間の、あの静かな達成感。ランキング一位、唯一の攻略者。

 画面の向こうで流れた「Congratulations」を、俺は確かに見た。


 そこから先が、ない。


 ――転んだとか、事故ったとか、そういう記憶もない。

 ただ、意識が途切れて。


 そして、現在。


「赤ちゃん?! いや待て、俺が? 俺が赤ちゃん?!」


 叫んだつもりだった。

 実際に出たのは「うぁー」みたいな音で、情けなく空気を揺らしただけだった。


 あ、やばい。涙まで出てくる。勝手に。

 泣くな、俺。泣くな。


 ……落ち着け。

 状況整理。まずは――


 視界の端に、淡い光が浮かんだ。


【ステータス】

 名前:瀬戸 蓮(せと れん)

 種族:人間(ヒューマン)

 職業:――

 称号:――


 俺は一瞬、息を止めた。


 来た。

 システムだ。『異界潜心イカイセンシン』の、あの冷たいUI。


 でも、表示が違う。

 ゲームでは“職業:ウェポンマスター”だった。称号:攻略者。

 今は空欄。まだ、始まってもいない。


 ……つまり。


「この世界、ゲームの設定がある……?」


 口に出したつもりが、また「ぁ…」になった。

 くそ、声帯。


 だけど、確信は固まる。

 俺の知ってる世界じゃない。なのに、俺の知ってる“システム”がある。


 ――なら、やることは一つだ。


 もう一度、攻略してやる。

 好きなゲームを、今度は“現実”で楽しむために。


 そして、俺は思い出す。


異界潜心イカイセンシン』で勝つ方法は、いつだって同じだった。


 最初の一歩で、負け筋を全部潰す。

 油断しない。慢心しない。拾えるものは拾い、捨てるべきものは捨てる。

 勝てる戦いを選び、危ないなら逃げる。

 ――でも、逃げるのは“次に勝つため”だ。


 俺は、泣き声の代わりに笑う練習をした。

 赤ん坊の喉から出るのは「ふぁ…」みたいな変な音だったけど、それでも。


 この世界は、きっと面白い。


 そこから先の時間は、体感で言えば一瞬だった。


 言葉を覚えた。

 歩く練習をした。

 木の枝を握って振り回して、何度も転んだ。

 転んで、泣いて、悔しくて、また振った。


 家族は普通だった。

 名前を呼んでくれる声があって、飯があって、眠れる場所があった。


 だから俺は、焦らずに“土台”を作った。

 この世界の常識を飲み込むために。


 ――驚いたことが、一つ。


 この世界では、ユニークスキルは生まれつきだと言われていた。

 けれど“取得”は別だった。


 冒険者学校で三年かけて、ようやくスキルを一つ取る。

 それが常識。努力の証。


 俺は、そこで一瞬だけ思考が止まった。


 ……三年で一つ?

 『異界潜心イカイセンシン』なら、同じ行動を積み上げれば勝手にスキルが生えた。

 武器熟練度も、戦い方で伸びた。スクロールでブーストもあった。


 なのに、こっちの世界は“やり方”を知らないせいで、遠回りしている。


 ――最高だ。


 攻略の余地しかない。


 そして今


 俺は森の縁に立っていた。

 風は冷たい。土は湿っている。

 背中の袋は、ずっしりと重い。


 荷重上限を越えないよう、常に計算している。

 拾いすぎたら死ぬ。

 それが、この世界の“当たり前”だ。


 目の前の藪が、かすかに揺れた。


 俺は、呼吸を浅くする。

 耳を澄ませる。足音。二つ。軽い。獣じゃない。


 ――来る。


「……索敵サーチ


 小さく呟く。

 これは魔法じゃない。俺が積み上げた“技術スキル”だ。


 視界の輪郭が少しだけ研ぎ澄まされ、気配が一本の線になる。


 次いで、斜め前。

 枝の陰から、灰色の肌が覗く。


 ゴブリン。

 『異界潜心イカイセンシン』では序盤の雑魚。油断したら死ぬ雑魚。


 ゴブリンは短い棍棒を持っていた。粗悪品だ。

 でも、それでも殴られたら痛い。


 俺は腰の片手剣を抜いた。

 ……が、すぐに気づく。


 地面に落ちている。折れかけの斧。

 柄が短い。刃は欠けている。粗悪だ。


 ――でも、今の距離なら斧のほうが速い。


 俺は剣を戻し、落ちていた斧を拾い上げた。


 その瞬間、手の内が“馴染む”。


 反動の癖。重心の偏り。刃の欠け具合。

 普通なら初見武器は、ぶれる。外す。怖い。


 でも、俺は違う。


【ユニークスキル】武器同調レゾナンスLv.2

 ・拾った武器の癖/反動/暴発を抑えて扱える

 ・性能そのもの(攻撃力)を上書きしない

 ・呪いの完全無効化はできず、抑制止まり


 “拾う”ためのスキル。


 俺は一歩踏み込み、斧を振り下ろした。

 ゴブリンの棍棒が上がるより速い。


 ガツン、と鈍い衝撃。

 斧の刃が浅く入って、相手がうめいた。


 その瞬間、二匹目が飛び出してくる。

 横から――狙いは俺の足。


 俺は斧を捨てた。

 捨てる。迷わない。


 腰から短剣を抜き、身体をひねる。

 刃の軌道は小さい。だから速い。


 短剣がゴブリンの腕を掠め、棍棒が空を切った。


 間合い。

 距離。

 『異界潜心イカイセンシン』で叩き込んだ感覚


「……甘い」


 俺は相手の懐に入り、短剣の柄で顎を打つ。

 気絶まではいかない。だが、一瞬止まる。


 その隙に、最初の一匹へ視線を戻す。

 傷を押さえて後退している。逃がしたら面倒だ。


 俺は地面の棒――ただの木の枝を拾い、投げた。

 投擲の熟練度は高くない。だけど、狙いは当てる場所じゃない。


 枝がゴブリンの視界を塞ぐ。

 それだけで十分。


 俺は短剣を逆手に持ち替え、足元を刈るように動いた。

 ゴブリンが転び、土を噛む。


 そこに、最後の一撃。

 短く、確実に。


 戦闘が終わると、森が静かになった。


 俺は息を吐き、手を開いた。


 ――装備の耐久、確認。


【装備耐久(DUR)】

 短剣:DUR 62 → 58(戦闘後反映)

 粗悪斧:DUR 14 → 9(摩耗+重衝撃)※限界域


「……斧、もう使えねぇな」


 DUR10以下。

 ここからは戦闘中に折れる可能性が出る。

 運が悪けりゃ、折れた瞬間に死ぬ。


 俺は迷わず斧を捨てた。

 拾う。捨てる。拾う。捨てる。

 世界最強のウェポンマスターは、“執着”で死ぬのが一番ダサい。


 代わりに、ゴブリンの棍棒を拾う。

 粗悪。癖がある。反動が変だ。


 でも――同調がある。


 俺は解体用の小刀を取り出し、素材を回収した。

 耳、爪、粗い皮。換金は大したことない。


 けど、積み重ねが効く。

 銅貨は日常だ。銀貨が冒険だ。金貨は別世界だ。


 俺は袋を揺すって重量を確かめ、森を出る。


 目指すのは、街のギルド支部。


 今日の目的は二つ。

 素材の換金と――もう一つ。


 学院の掲示板を見る。


 王立共学総合学院《アルカ=ノヴァ学院》。

 貴族も平民も関係ない、身分の持ち込み禁止。

 バッジ制度。白→青→赤→黒。


 『異界潜心イカイセンシン』を現実で遊び直すなら、ここは最短ルートだ。


 俺は歩きながら、意識の奥でステータスを開いた。


【ステータス】※自己閲覧のみ(他者閲覧不可)

 名前:瀬戸 蓮(せと れん)

 種族:人間ヒューマン

 レベル:Lv.10

 職業:武器達人ウェポンマスター

 称号:攻略者


 HP:218 / 218

 MP:82 / 82


 STR:24 AGI:23 INT:20 LUK:17


 武器同調レゾナンスLv.2

 集中保持 Lv.1

 追跡 Lv.2/索敵 Lv.2/解体 Lv.2/野営 Lv.2/応急手当 Lv.1


 加護:多武器成長の加護

 祝福:成長加速の祝福(経験値2倍)


 笑いが漏れた。


 Lv10。

 この世界の同年代は、せいぜい2〜8。

 俺は幼い頃から、森で“狩り”をしてきた。


 もちろん、無茶もした。

 危険を顧みないところがある。自覚はある。


 ――でも、それが弱点なら、対策すればいいだけだ。


 俺はギルドの石造りの建物を見上げる。

 受付の前には、依頼票が並ぶ。

 F、E、D……低ランクでも、銅貨は積み上がる。


 そして、掲示板の端に――

 学院の入学案内が貼られていた。


 《アルカ=ノヴァ学院 入学試験 募集》


 俺は紙を見つめる。

 胸の奥が、静かに熱くなる。


 ――もう一度、ゲームを楽しむ。


 そのために必要なのは、強さだけじゃない。

 規則。連携。補給。撤退。

 そして“制度を攻略する頭”。


 俺は素材袋を握り直し、受付へ歩いた。


「素材換金を。……それと、入学手続きの相談も」


 受付嬢が俺を見て、にこりと笑う。


「承りました。冒険者等級と――」


 俺は心の中で付け足す。


(“等級/依頼”併記な。ここのギルド、教育が行き届いてる)


 そして――俺の知らない紙が、受付の奥から出てくる。


 封蝋付き。

 宛名は、俺の名前。


 嫌な予感じゃない。

 “イベント”の匂い。


 俺は封蝋を見つめた。


 そこに刻まれていた紋章は――

 学院でも、ギルドでもない。


 国家のものだった。


 俺は、笑った。


「……面白くなってきた」

最後まで読んでくれてありがとうございます。

第一話は「戦闘の攻略」と「制度の攻略」、両方の入口まで。

で、国家の封蝋=強制イベント発生です。逃げ道も報酬も、だいたいここから増えます。

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