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拝啓 最強を殺します  作者: ヒト
一学期
7/7

5.樹獣狩り

大戦級。現時点で世界で6体を確認。

光を操る、天候を自在にする、あらゆる物を食い尽くす。どれも同じ樹力ではない。

しかし、一貫性がある。それは樹獣の生成。


小戦級、中戦級を作り出し、従わせる。その規模は一部隊にも匹敵する。それだけでも十分だと言うのに、大戦樹獣は生まれてからの時間にもよるが、覚醒者2人分にも匹敵する力を持っている。


知能はない。なので連携も取らない。力のみを使って蹂躙する。それが樹獣であり、大戦級の恐ろしいところだ。


それが、今目の前に立ちはだかっている。

視線をこちらに向け、見つめている。湊は冷や汗のようなものが出てきた。


「どうする?こいつから逃げるのは難しそうだよ·····?」

一色は大戦樹獣を目の前にしても全く変わらない態度でいた。冷静にこの状況を分析していた。


湊は戦えば確実に殺されるだろう。かといって、自分だけ残ると言えば確実に拒否するだろう。

死なせずに、ここから離脱させる方法·····。

「ちょっとこっちに来てくれ」


それは·····


「どうし·····」

強制的に離脱させることだ。意識のない湊を抱え、ヤヨイを呼ぶ。

「ワン!」

木の陰から気配もなく、ヤヨイが表れた。


「いいか?こいつを基地まで送り届けろ。途中の樹獣は無視しろ。追われてもいい。とにかく走れ」

そうして、湊をヤヨイの背中に乗せ、任せたぞと言って基地へと向かわせた。


これで、1対1での勝負が始まった。

一色の見立てでは、体の構築が少し簡易なので、こいつは生まれてそれほど時間の経っていない樹獣だと考えた。


そこで様子見として、そこそこの力を込めて槍を投げた。

目で捉えることができないほど速度だった。

しかし、それは貫通もせず、少し抉っただけだった。


そこまで固くはない。やはり生まれてそこまで経っていない樹獣だと考えた。

「それなら、再構築の危険はないな·····」


大戦樹獣がゆっくり歩み寄る。先ほどの傷を、当然のように治しながら。

ギシギシと木の擦れる音が聞こえる。


その音はどんどん大きくなっていく。音量も、数も。気付けば周りには大量の樹獣がいた。

それは一人でさばく数ではない。明らかに勝ち目のない戦いだ。


そんな光景を目にしても一色は焦らない。逃げようともしない。ただ奴と目を合わせ続ける。

「ギシッ!ギシッ!」


途端に一色の目に光が消える。

踏み込むと同時に木の鞭のようなもので一色を攻撃してきた。


それを一色は切り落とし、大剣で斬りかかろうとした。

しかし、相手は大戦級·····。上手くは行かない。

中戦級とは比べ物にならないほど大規模に大地を盛り上がらせ、弾き飛ばられた。


「クソっ!」

一色は着地点を見る。そこには多数の樹獣がいた。落下の衝撃を利用し、地面に大剣を思いっきり突き刺して攻撃を防ぐ。


そして体勢の崩れた樹獣を殺して行った。しかし、次から次へと樹獣が湧く。倒しても倒してもキリがない。


そんな時、背中に寒気が走る。それは、飛ばされた方向·····大戦樹獣だ!嫌な予感がして、目を凝らす。


「ゴオォォォォ!」

そこには、大量の岩が流れるように向かってきた。

一色は前に盾を作り出し、岩を防ぐ。

辺りの樹獣は岩に潰されたり、流されていった。


一色自身は、避けることもできたが、この岩に隠れて攻撃するほうがいいと考えた。

これを好機と捉えて、攻撃の準備をし始めた。


右腕の骨格、一つ一つの強度を高め、関節部分をより精密に構築。これにより、関節にかかる力をより槍に伝えやすくする。


そして、強度を限界まで高め、重くなった槍を生成した。

それを握り、大きく振りかぶって力の限りを尽くして投げる。


腕の殻は割れ、肩からはバキッと音が鳴る。

右腕は使い物にならなくなる。

しかし、犠牲を払い投げた槍は、音すらも置き去りにし、迫りくる岩をも砕いた。


槍は見事に命中し、硬い皮膚を破り貫通した。

左半身が消し飛び、大戦級は地面に倒れる。

一色は駆け寄り、様子を見る。


目に光は消え、力無く横たわっている。

倒したように見えた·····。

死んだか確認しようと、もう少し近づいて行った。


「ギシ·····」

大戦級の動く音が聞こえた。

「ギシ·····ギシッ·····」

その音はどんどん強くなるように聞こえる。

一定のリズムで、ギシッギシッ、と。


まずいと思い一旦距離を取る。

遠目で体を確認するが、どこも動いていない。

一色は考える。


外観は動いているように見えない。だとすると内臓?だとして、一定のリズムで動く内臓と言ったら·····。

「心臓か!」

一色は、急いで心臓を斬ろうとしたが·····遅かった。


大戦樹獣の周りに木の根が球体のように張り巡らされ、近づけなくなった。根を切ろうとしたが、刃が通らない。

「硬すぎだろ!」

一色はやけくそ気味に叫ぶ。


仕方なく、下がり様子を見る。

すると、周囲の異変に気づいた。

木がどんどん枯れていっている。


終いにはボロボロと崩れていく。

一色の顔が険しくなる。

「再構築か!」


再構築とは、大戦樹獣のみ行える、いわばレベルアップだ。

体に死なない程度の攻撃を食らい、生きようと再生する時に起こる現象だ。


再構築が行われれば、より巨大になり、強靭な体を手に入れ、樹力の力が増す。

そして、そのエネルギーとして植物や大地の生命力を使う。


そして、ボロボロになった木、卵のようにも見える木の球体·····。

恐らく······いや、確実に再構築だろう。

一色は酷く悔んだ。もう少し早く気づいていれば、しっかりトドメを刺せば·····。


しかし、もう遅い。間に合いはしない。なったものは仕方ない。なら、責任はきっちり取る。

いざとなれば、本気でこいつを殺す。

そう、決意する。


「ギィィィィィィィィ!」

球体がボロボロと崩れだす。中から大量の根がウニョウニョと動き、1つの塊へとなっていく。


足、体、頭と形が鮮明になっていく。

その姿は、大戦樹獣に相応しい。恐怖と神秘を併せ持っていた。


体は最初の簡易な作りではなく、隙間なく埋まっている。そして、大きくなった体に角。

角には、花とツルが巻き付いており、生き生きとしていた。


歩く森と言ってもいい。綺麗で、可憐に生きるそれは、実に·····実に神秘的だった。

しかし、それは動いており、命の有り、殺意もある。


しかし、存在感すら感じない。恐怖も感じない。本当にただの森のようだ。

戦い、感じてきた一色は、その異常性にいち早く気づいた。


一色は、首を少し触る。すると、無数の十字が浮かび上がり、首輪の様になる。

そして、折れた右腕を殻で無理矢理動かして、剣を構える。


冷たく、死んだような目で、見下すように一色は言葉を放つ。

「こいよ、バケモン。殺してやるよ」

どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。

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