5.樹獣狩り
大戦級。現時点で世界で6体を確認。
光を操る、天候を自在にする、あらゆる物を食い尽くす。どれも同じ樹力ではない。
しかし、一貫性がある。それは樹獣の生成。
小戦級、中戦級を作り出し、従わせる。その規模は一部隊にも匹敵する。それだけでも十分だと言うのに、大戦樹獣は生まれてからの時間にもよるが、覚醒者2人分にも匹敵する力を持っている。
知能はない。なので連携も取らない。力のみを使って蹂躙する。それが樹獣であり、大戦級の恐ろしいところだ。
それが、今目の前に立ちはだかっている。
視線をこちらに向け、見つめている。湊は冷や汗のようなものが出てきた。
「どうする?こいつから逃げるのは難しそうだよ·····?」
一色は大戦樹獣を目の前にしても全く変わらない態度でいた。冷静にこの状況を分析していた。
湊は戦えば確実に殺されるだろう。かといって、自分だけ残ると言えば確実に拒否するだろう。
死なせずに、ここから離脱させる方法·····。
「ちょっとこっちに来てくれ」
それは·····
「どうし·····」
強制的に離脱させることだ。意識のない湊を抱え、ヤヨイを呼ぶ。
「ワン!」
木の陰から気配もなく、ヤヨイが表れた。
「いいか?こいつを基地まで送り届けろ。途中の樹獣は無視しろ。追われてもいい。とにかく走れ」
そうして、湊をヤヨイの背中に乗せ、任せたぞと言って基地へと向かわせた。
これで、1対1での勝負が始まった。
一色の見立てでは、体の構築が少し簡易なので、こいつは生まれてそれほど時間の経っていない樹獣だと考えた。
そこで様子見として、そこそこの力を込めて槍を投げた。
目で捉えることができないほど速度だった。
しかし、それは貫通もせず、少し抉っただけだった。
そこまで固くはない。やはり生まれてそこまで経っていない樹獣だと考えた。
「それなら、再構築の危険はないな·····」
大戦樹獣がゆっくり歩み寄る。先ほどの傷を、当然のように治しながら。
ギシギシと木の擦れる音が聞こえる。
その音はどんどん大きくなっていく。音量も、数も。気付けば周りには大量の樹獣がいた。
それは一人でさばく数ではない。明らかに勝ち目のない戦いだ。
そんな光景を目にしても一色は焦らない。逃げようともしない。ただ奴と目を合わせ続ける。
「ギシッ!ギシッ!」
途端に一色の目に光が消える。
踏み込むと同時に木の鞭のようなもので一色を攻撃してきた。
それを一色は切り落とし、大剣で斬りかかろうとした。
しかし、相手は大戦級·····。上手くは行かない。
中戦級とは比べ物にならないほど大規模に大地を盛り上がらせ、弾き飛ばられた。
「クソっ!」
一色は着地点を見る。そこには多数の樹獣がいた。落下の衝撃を利用し、地面に大剣を思いっきり突き刺して攻撃を防ぐ。
そして体勢の崩れた樹獣を殺して行った。しかし、次から次へと樹獣が湧く。倒しても倒してもキリがない。
そんな時、背中に寒気が走る。それは、飛ばされた方向·····大戦樹獣だ!嫌な予感がして、目を凝らす。
「ゴオォォォォ!」
そこには、大量の岩が流れるように向かってきた。
一色は前に盾を作り出し、岩を防ぐ。
辺りの樹獣は岩に潰されたり、流されていった。
一色自身は、避けることもできたが、この岩に隠れて攻撃するほうがいいと考えた。
これを好機と捉えて、攻撃の準備をし始めた。
右腕の骨格、一つ一つの強度を高め、関節部分をより精密に構築。これにより、関節にかかる力をより槍に伝えやすくする。
そして、強度を限界まで高め、重くなった槍を生成した。
それを握り、大きく振りかぶって力の限りを尽くして投げる。
腕の殻は割れ、肩からはバキッと音が鳴る。
右腕は使い物にならなくなる。
しかし、犠牲を払い投げた槍は、音すらも置き去りにし、迫りくる岩をも砕いた。
槍は見事に命中し、硬い皮膚を破り貫通した。
左半身が消し飛び、大戦級は地面に倒れる。
一色は駆け寄り、様子を見る。
目に光は消え、力無く横たわっている。
倒したように見えた·····。
死んだか確認しようと、もう少し近づいて行った。
「ギシ·····」
大戦級の動く音が聞こえた。
「ギシ·····ギシッ·····」
その音はどんどん強くなるように聞こえる。
一定のリズムで、ギシッギシッ、と。
まずいと思い一旦距離を取る。
遠目で体を確認するが、どこも動いていない。
一色は考える。
外観は動いているように見えない。だとすると内臓?だとして、一定のリズムで動く内臓と言ったら·····。
「心臓か!」
一色は、急いで心臓を斬ろうとしたが·····遅かった。
大戦樹獣の周りに木の根が球体のように張り巡らされ、近づけなくなった。根を切ろうとしたが、刃が通らない。
「硬すぎだろ!」
一色はやけくそ気味に叫ぶ。
仕方なく、下がり様子を見る。
すると、周囲の異変に気づいた。
木がどんどん枯れていっている。
終いにはボロボロと崩れていく。
一色の顔が険しくなる。
「再構築か!」
再構築とは、大戦樹獣のみ行える、いわばレベルアップだ。
体に死なない程度の攻撃を食らい、生きようと再生する時に起こる現象だ。
再構築が行われれば、より巨大になり、強靭な体を手に入れ、樹力の力が増す。
そして、そのエネルギーとして植物や大地の生命力を使う。
そして、ボロボロになった木、卵のようにも見える木の球体·····。
恐らく······いや、確実に再構築だろう。
一色は酷く悔んだ。もう少し早く気づいていれば、しっかりトドメを刺せば·····。
しかし、もう遅い。間に合いはしない。なったものは仕方ない。なら、責任はきっちり取る。
いざとなれば、本気でこいつを殺す。
そう、決意する。
「ギィィィィィィィィ!」
球体がボロボロと崩れだす。中から大量の根がウニョウニョと動き、1つの塊へとなっていく。
足、体、頭と形が鮮明になっていく。
その姿は、大戦樹獣に相応しい。恐怖と神秘を併せ持っていた。
体は最初の簡易な作りではなく、隙間なく埋まっている。そして、大きくなった体に角。
角には、花とツルが巻き付いており、生き生きとしていた。
歩く森と言ってもいい。綺麗で、可憐に生きるそれは、実に·····実に神秘的だった。
しかし、それは動いており、命の有り、殺意もある。
しかし、存在感すら感じない。恐怖も感じない。本当にただの森のようだ。
戦い、感じてきた一色は、その異常性にいち早く気づいた。
一色は、首を少し触る。すると、無数の十字が浮かび上がり、首輪の様になる。
そして、折れた右腕を殻で無理矢理動かして、剣を構える。
冷たく、死んだような目で、見下すように一色は言葉を放つ。
「こいよ、バケモン。殺してやるよ」
どうも、ヒトです。この作品を読んでいただきありがとうございます。良ければ感想やブックマークをしてくれると嬉しいです。誤字脱字もあったら報告していただけると助かります。




