4.樹獣狩り
「う、うわぁぁぁぁ」
襲われていた生徒に、尖った岩が迫る。
しかし、その攻撃は当たらない。間一髪で一色が間に合ったのだ。
「無事か?無事なら早くここから逃げろ」
そう言って中戦級の群れに突っ込んでいった。
そこに遅れて湊たちが来た。
「大丈夫か?無茶するからだろ!」
藍太郎が怪我の有無を確認すると、幸い生徒は無傷だった。どうやら腰が抜けて動けないようだ。
「僕がここに残って戦う。藍太郎と皐月は3人を頼む」
湊が一色の元へ行こうとしたその時、一色が全員の前に立ち、盾を作り出した。
そして、とんでもない地響きと共に激しく盾が押される。その攻撃を何とか防ぎきったと思うと、左右から2体の中戦級が攻めてきた。
一色はそれを意に介さず、盾から大剣へと変形させ、片方を斬り殺した。
そしてもう1体は大きく口を開け、噛みつこうとしていた。
それにも一切動揺せず、右手を噛ませた。
「一色!」
ようやく体が反応し、藍太郎が動き出す。
それを一色は止める。
「大丈夫だ。勝ったから」
次の瞬間、樹獣の体から無数の棘が突き破って出てきた。
一色は樹獣を投げ捨てる。
深呼吸をして、双剣を作り出す。
それを見た、藍太郎と皐月は自分たちが邪魔になっていることを痛感する。
しかし、湊は違った。
「藍太郎、皐月·····3人を連れて逃げてくれ。僕はここに残る」
そう言って、一色の方へと歩き出す。
「何やってんだ!死ぬぞ!」
藍太郎が叫ぶが、皐月がそれを止める。
「私たちの役目はこいつらを無事に避難させて、救援要請をすること。これは私たちにしかできない大事な役目だよ」
藍太郎は渋々分かったと答え、3人を避難させに行った。
「一色、僕の援護だけする。思う存分暴れてくれ」
一色は諦めた顔をして、ため息をついた。
「了解」
一色が踏み込み、次々と樹獣を倒していく。
その戦い方は、実に暴虐武人。
全ての攻撃を砕きながら進み、樹獣の硬い皮膚を高い精度と技術で刃を通している。
まさに戦場は一色に支配されているに等しい。
湊も凄まじい。樹獣を凍らせて、動けないようにしたり、最も効果のあるとされる炎での攻撃でダメージを与えている。
完璧な援護により、一色の独壇場が完成する。
しかし、2人はその状況に全く有利さも勝機も感じていない。
それは漂う雰囲気だった。
先ほどから森が静かすぎる。木々が風に揺れる音すらしない。
そして樹獣たちが背を向ける方·····やけに暗い山の奥からはただならぬ雰囲気がある。
何か悍ましいものに睨まれている感覚だ。
そんなものを感じつつ、2人は順調に戦いを進め、中戦級の群れはいつの間にか、後数体となっていた。
「行ける·····。湊!こいつを倒したら、全力で逃げるぞ」
2人は戦いを終わさせるべく、身を引き締めた。
順調に、慎重に·····あと、後少し!
一色がさっきよりも速く動く。湊もそれに適応し、とんでもない速さで樹獣が死んでいく。
すると、最後の一匹が奥へと下がる。
一色は追撃に行こうとした。
しかし、それは突然きた。死が隣にある感覚·····。殺気ではない。でも、それを彷彿とさせるほどの迫力を感じる。
2人の体の動きが完全に止まる。全ての感覚を今から見えるであろう「それ」に向ける。
「バキバキッ」
木が折れる音が聞こえる。「それ」が確実に近づいてきている。
音がどんどん近づく。そして奥の山を隠していた木が倒れた。
「それ」は暗闇をゆっくりと脱ぎ、こちらに姿を表した。
鹿の姿をしている。恐らく、鹿の死体が樹獣になったのだろう。6メートルはあろう体は、木でできている。
「それ」の目は、ハッキリとこちらを見ている。
そう、「大戦級」は一色と湊を視界にとらえていた。
明けましておめでとうございます!ヒトです。
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