3.樹獣狩り
「ナイス、藍太郎!」
無事に中戦級を倒し、一同は安堵した。
「凄かったね!強烈だね、藍太郎の衝撃波は!」
皐月は藍太郎の腕をブンブンと振って、褒めちぎっていた。
しかし、湊は藍太郎よりも一色のほうが気になっている様子だった。
「一色は凄いね。完璧な攻防一体だった。良かった樹力を教えてくれないか?」
そう、湊はずっと気になっていた。自分が敗れたあの日から。大体の人は、見ればどんな樹力か分かるし、調べればより確実だ。
しかし、一色の樹力だけは見ても、調べても分からなかった。
鎧と盾、それに剣まで作り出した。しかも、防御は中戦級の攻撃を意図も容易く防げるものだ。
防御系かとも思ったが、速さが明らかに身体強化系の動きをしていた。
調べてもみた。でも一つも情報は出てこない。それどころか、当主から調べることを禁じられる始末だ。
ここまで来ると意地でも湊は一色について知ろうとしていた。
かくなる上は·····本人に直接聞くべし!
それで、樹力から聞いてみたのである。
「俺の樹力か?そういえば言ってなかったな。硬化だよ」
「え?硬化?」
思わず心の声が出てしまっていた。訳が分からなかったのだ。
硬化なら体を硬化させるとか、一色なら黒い殻の様なもので体を守るとか·····。
しかし、そんな想像では収まらないほどのことを一色はやっている。
「君は一体·····」
湊はそれ以上は何も聞かなかった。あまりにも異質すぎた。それに一色が嘘の情報を教えているかもしれない。とにかくもう少し一色の樹力を見て考えることにした。
その後も樹獣との戦闘を行い、かなりの数の樹獣を倒した。少し疲労も溜まってきたので休むことにした。
辺りを警戒しながら少しずつ時間が過ぎていった。
しかしそれは突然だった。皐月の声が響いた。
「全員、左の少し開けた場所!あそこに3人、樹獣の群れに襲われてる!」
全員がその場所に目を向けた。
そこにはホームルームで、先生にチョークを飛ばされていた生徒3人組がいた。
一色は真っ先に戦闘準備に入った。
「あいつら·····。皐月、樹獣の等級は?」
皐月は目を凝らし、樹獣を注視した。
すると、皐月は信じられないという顔をして、もう一度樹獣を見た。
「どうしたんだ?」
皐月は何度も見直して、やっとこちらを向いた。そして返ってきた答えに信じられないものだった。
「あの群れ·····全部中戦級だ·····」
本来、中戦級は群れることは無い。
何故なら小戦級をまとめる、いわゆる強者だからだ。
しかし今、目の前に映るものは違う。強者なるものが群れをなしている。
これはただ1つの絶望を表す。この世を破壊し、蹂躙し、圧倒的な力を見せつける怪物。
大戦級の発生だ。
それをいち早く気付いた一色の雰囲気がガラリと変わる。それは、道義を見た時の緊張感やとは違う。
ピリピリと感じるこの空気·····。言うなれば、これは殺気だった。
「·····分かった。それじゃあ今から俺の指示通りに行動しろ」
湊たちは黙って一色の話を聞いた。
「まず、救援要請をしてくれ。多分、道義さんとか防衛隊の人が来てくれるだろう。それで、俺があの群れに突っ込むから隙をついて3人を救出、そして全力で逃げろ」
一色の言ったことは、湊たちにとって自己犠牲の様なものに聞こえた。
その作戦に藍太郎が反抗する。
「そんな事したらお前死ぬかもしれないんだぞ!俺たちもたたか·····」
その反抗を遮る様に一色は言う。
「駄目だ。黙って従え」
そして、また反抗しようとする藍太郎を無視して、槍を作り、中戦級に向かって投げた。
槍が貫通して、先ずは一匹を処理した。
続けて鎧を纏い、群れまで飛んでいった。
「クソっ!あいつ自分勝手なことしやがって·····」
一色の後を追いかけるように、湊たちも移動を開始した。
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