1.樹獣狩り
「おはよう、今日も元気にやってこう!」
相変わらずのテンションで藍太郎は一色に挨拶をした。
「おはよう、相変わらず元気だな」
他愛のない話をしていると、湊が来た。
「おはよう、一色、藍太郎!」
こちらも元気そうだ。
「おぉ、おはよう!」
「藍太郎、昨日凄く頑張ってたな」
「まあな、湊も一色の試合以外は勝ってたじゃん」
2人の会話は弾み、一色ただそれを聞いていた。
そんな時間が過ぎていき、授業の時間になった。
「これからお前たちの担任になる、櫻川美奈だ。よろしく頼む」
櫻川は淡々とこの後の動きを説明した。
しかし後ろの方にいる生徒たちが、話を聞かずくっちゃべっていた。
すると櫻川はチョークに触れ、それが空中に浮く。
そして喋っている生徒に向かって、目にも止まらん速さでぶっ飛ばした!
「パァァァン!」
チョークはとんでもない着弾音とともに、爆散した。生徒は撃ち抜かれたように倒れた。
「おい、そこのお前·····。私の話を聞かないとはいい度胸だ。戦場で真っ先に死ぬぞ」
鋭い眼光でその生徒を睨む。
「お、お前教師の分際で!俺は霧島家の·····」
反抗しようとすると、櫻川はまたチョークを飛ばす。
「ヒッ!」
しかしそのチョークは当たらず、顔の前で止まる。
「いいか、人の話も聞かず自分よがりな世界で生きるやつは馬鹿だ。この後の樹獣狩りで死ぬぞ、お前?」
そう言うと、生徒は文句を言いながら着席した。
「この後は3人か4人かで班を組んで、樹獣狩りをしてもらう。4番隊の隊員の方も来てくれるし、上級生の付き添いもある。安心して戦え。さぁ、移動だ」
そうして皆、戦闘服に着替え、第4基地に向かい始めた。
「そういえばさ·····前から聞きたかったんだけど、一色の横にいる犬は何?」
湊がなんで誰もツッコまないんだ?みたいな顔で質問した。
「あぁ、こいつはヤヨイだよ。式神?みたいなもんだよ」
その答えを聞いて余計困惑していた。
「一色の樹力って召喚系じゃなくない?攻守型の樹力じゃないの?」
「確かに違うな。攻守型の樹力だ」
一色はこの式神が蓮華の護衛の樹力であることを言った。
「あぁ、確かクロって言う人だったような·····」
すると湊が何か気づいたような顔をした。
「もしかして黒神蓮華の弟って·····一色?」
「そうだ。入学したのも姉ちゃんを守るためだ」
一色の返答は決意の固まったような、決して生半可なものではなかった。
「姉ちゃん呼び·····」
「おい、そこに反応するな。せっかく一色が格好良く決めてたのに·····」
「·····」
第4基地に到着し、説明を聞くため整列した。
「会えるかな、最強に」
藍太郎が突然そんなことを言い出した。
それもそう。4番隊には防衛隊最強の隊長がいる·····。
久遠道義。一瞬で敵を屠り、攻撃すらさせてもらえない。
冷徹無慈悲で、鬼の様な性格。1人で敵幹部のいるアジトを壊滅させたという伝説も·····。
ついた異名は神速の侍。
場には緊張のような、高揚のようなものが流れる。
「今回、樹獣狩りに同行してもらう隊員の方々だ。よく話を聞け」
櫻川の声とともに、刀を腰にかけたいかにも雰囲気のある人が出てきた。
「どうも。4番隊、隊長、久遠道義です」
その言葉を聞いた瞬間、場の空気は最高潮に上がる。
「これが、防衛隊最強の男。久遠道義!」
全員が目を向ける。これは明らかに高揚!全員が最強、久遠道義と言う漢に全神経を向ける。
「今回は皆さんの樹獣狩りにどうきょ·····
噛んじゃった·····」
全員、時が止まった。しばらくの間があり、さっきまでの高揚は笑いを耐える場と化した。
皆、肩をプルプル震わせて声を殺している。
「もう!隊員、何やってんですか·····。見てください!全員肩プルップルじゃないですか!」
「だ、だって、皆んな凄い顔で見てくるんだもん·····。おじさんビビっちゃって·····」
そこで全員の限界がきた。
吹き出すもの、声を上げて笑うもの、小声で笑うもの。さっきまでの高揚が裏返り、笑いへと変換されていった。
第4番隊、隊長、久遠道義。46歳と隊長最年長であり、最強の男。自由奔放な性格で、酒好き。
樹力は観測で、相手の行動を予測できるようになるぞ!
「えっと、まあよろしくね」
何とか説明を終えた、道義はそそくさと退散した。
「次は上級生の紹介だ」
すると戦闘服を着た2人が出てきた。
「おはよう、1年生の皆んな。俺は生徒会長の3年生の速水結城だ!樹力は繰糸術。よろしく!」
活気に溢れた声が響く。
「おはようございます。私は2年生の水無瀬凛です。よろしくお願いします」
こちらは微笑みかける様な落ち着いた声で挨拶を終えた。
「速水と水無瀬が来てくれた。もし、危険な状態になったら救援要請をしろ。防衛隊の皆さんも2人も向かってくれる。説明は以上。全員チームを作って出発しろ!」
長い説明が終わった。全員、出発の用意をする。
意気込む者、余裕を見せる者、不安になる者。心持ちは違えど、全ての生徒に等しく闘志が宿っていた。
最初の戦い·····。樹獣狩りが始まった。
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