お披露目式です
「おはよう」
一色はクロの下僕・ヤヨイにあいさつをした。
「ワン!」
一色は台所に立った。
そのまま慣れた手つきで、目玉焼きを作り、パンを焼いた。コーヒーを入れて食卓に並べる。
そのタイミングで、クロと蓮華が起きてきた。
「おはよう·····」
「おはよう。朝ごはんできてるから」
まだ寝ぼけた2人が、とりあえず椅子に座り、黙々と食べ始めた。
そして学校·····いや、入学式への準備をした。
「一色、出るわよ!」
「おう、行こうか」
全員、準備が終わって外に出る。
古い町だが活気のある不思議なこの場所には、蓮華とクロが通う壱城高校がある。この高校には多くの樹力者が通っている。寮もあり、日本各地から未来ある若者が揃う。
それが壱城高校だ。
高校についた一色は蓮華たちとは別れ、指定された教室に向かった。
教室に入ると賑やかな光景が広がっていた。
未来への希望に満ち溢れ、これからの期待に胸を躍らせていた。
とりあえず一色は自分の席に座った。
席から外の校庭を見ていた。
すると、一色の名を呼ぶ、声が聞こえた。
「一色·····だよな?久しぶり!元気してたか?」
「藍太郎じゃん、久しぶり」
そこには昔よく遊んでいた友人がいた。
「久しぶりだな。全然連絡もとれないから、本当に心配したんだぞ?」
そう言って今にも泣きそうな顔をしていた。
「ごめん、色々あって全然連絡出来なかった。でもこの通り元気に生きてるよ」
藍太郎を安心させるよう微笑んだ。
「お前らそろそろ体育館に移動だ。並べ」
全員、先生の案内で体育館へと移動した。
体育館には在校生ともに、保護者がいた。
その中には、六家の者もいる。
要するにお偉いさんばかりである。
「俺、こういう式典嫌いなんだよなぁ」
藍太郎が愚痴を言う。
「仕方ないだろ、そういう決まりなんだし」
「本音は?」
「長い、面倒くさい、暇」
「嫌いじゃん」
プログラムはどんどん進んでいき、生徒代表挨拶になった。
「生徒代表、京極湊」
湊は舞台へ行き、見事なスピーチを始めた。
「やっぱり京極家か。六家の中でも、かなり樹力強化に力入れてたらしいからな」
2人は感心しながら、スピーチを聞いた。
入学式も終わり、後は帰るだけ·····ではない!
この学校では入学式が終われば、お披露目式ならぬ、お披露目試合を行うのである。
入試成績が50位以内の者が、好きに相手を選び試合を行う。
在校生や保護者の観覧のもと行われ、もしかすると部活のお誘いや防衛隊関係者の目に留まるかも·····。
そんな美味しい行事なのだ。
「藍太郎、選ばれてるのか」
「おう!俺の勇姿みとけよぉ!」
自信満々で藍太郎が試合会場に向かった。
試合会場では6個ほど試合場があり、そこで相手と組んで戦うようだ。
「そういえばお前観覧席にいないけど戦うのか?」
すでに一勝を収めた藍太郎が余裕の表情で聞いてきた。
「あ〜、俺特別枠での入学だから戦っても戦わなけてもいいんだよ。誘われたら殺ろうかなって」
「こわぁ·····。ていうかお前特別枠だったのか!?それって凄くね?」
「まあな」
特別枠とは、いろ〜んな事情や功績などで、進級、卒業に必要な実技点、筆記点などを免除されて入学することである!
ちなみにクロも特別枠で、実技も筆記も免除だぞ!
「まあ、俺みたいなやつ誘うやつなんて·····」
「ねえ、そこの君!一緒に試合してくれない?誰も組んでくれなくて·····」
「·····いいよ。やろう」
一色は早速フラグを回収し、無事試合が決定した。
「いいのかよ、あいつ首席の湊だぞ」
藍太郎が耳元でヒソヒソと言ってきた。
そう、相手は実技、筆記ともにぶっちぎりで入学した化け物だ。
「仕方ねぇだろ!あんな寂しそうな顔でお願いされたら断れねぇよ!」
「いや〜、本当にありがとう!誰も組んでくれなかったんだよ」
湊が一色の手を握手をした。
一通りの感謝を伝えられ、試合場が空いた。
「それじゃあこの腕輪をつけろ。これで死んでも死なないからな」
そう言って、審判の先生が不敵に笑う。
この腕輪をつければ、ゲームの様に死んでも死なない!が、接続された腕輪同士でしか反応しない。いわば、シミュレーションゲームの様なものだ。
互いに腕輪をつけ、位置についた。
張り詰め空気が流れる。
「始め!」
審判の声が響く。
声と同時にさっきとは打って変わって、湊は無表情·····。かなり集中しているようだった。
湊はどこからか出てきた杖を使って、氷を生成し一色に向かって飛ばした。
「氷!?氷ってあの覚醒者と同じ樹力じゃねぇか·····」
見ていた藍太郎は驚きが隠せなかった。
しかし、それで終わらなかった。
氷を避け、間合いを詰めた一色に炎が覆いかぶさったのだ。
藍太郎は驚きのあまり、開いた口がふさがらなかった。氷に炎、しかもただの炎ではなく風の様なもので炎を煽って燃え広がらせていたからだ。
湊は現時点で氷、炎、風が使えることが分かった。
「湊の勝ちだろ」と誰もが思った。
しかし一色は全く動じず、それどころかピンピンしている。
「凄いね、これで無傷なんて」
「頑丈なもんでね」
そう言って一色の手足が黒い殻の様なものに包まれ、鎧のようになった。
互いに目を見つめ、静止した。
先に仕掛けたのは湊。今度は水を出し、それを凄まじい水圧で発射した。それはコンクリートの床を貫通するほどの威力·····。
一色はそれを避け、間合いを詰める。
それを阻止しようと、湊が氷塊を生成する。
だが一色は氷塊を殴り壊し、突き進む。
「やばっ」
湊は炎で剣を作り、それを振り下ろした。
しかし一色はものともせず腕で弾き飛ばし、後退した湊の心臓に腕を突き刺した。
湊の体は消えて、いつの間にか場外のリスポーン地点にいた。
「勝っ·····た?勝った!おぉ!すげぇ一色!」
藍太郎が一色に飛びつき、称賛した。
「とんでもなく強かった。何とか勝てた」
そういう一色余裕そうにも見えた。
「一色くん、凄い強いね!水砲も炎剣も当たったんだけどな·····。完敗だよ」
湊は悔しそうに、でも清々しい顔をして言った。
「湊も強かったよ。また、戦おう」
2人は握手をして、湊は他の相手を探しに行った。
「にしても本当に凄いな。皆んな声出して驚いてたぞ」
藍太郎はまだ興奮気味に話していた。
「まあ樹力の相性とかが良かったんだろ。それよりお前まだ1試合しかしてないけど大丈夫か?」
藍太郎は、一色の試合で完全に自分のことを忘れていた。
急いで藍太郎は試合を組んで戦いまくった。
一色は全ての試合を見届け、賑やかなお披露目式が終わった。
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