表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一章 腐敗という名の再建

こちらの作品をお手に取ってくださりありがとうございます!仄負吹はいふぶきです!

はじめに伝えておきたいことで、私が「小説を描く」という時に使う「描く」は表現となってます。他にも漢字を変えて表現をしようしてます。あらかじめご了承をお願い申し上げます!

この作品が初めての小説となります。「砂塵の血石」というタイトルできましたが皆さんはこのタイトルから何を受け取りましたでしょうか?

今回の舞台は砂漠を舞台にした異世界です!主人公の描写にはあまり力を入れていません(設定魔なので描き込み過ぎてしまうと思ったので入れてません)が世界観をイメージしやすいようにできるだけ描き込みました!

それでは砂海へ行ってらっしゃい!

 もうどれだけの兵士がくたばったかわからない。くたばった者達の姿を見て俺は星だけが支配する暗闇の中、砂海の上で溜息を喉から捨てる。

周囲にある風景と言えば、くたばったやつの錆びた鎧や武具、それと自分にも水をくれと言わんばかりに渇いた岩がゴロゴロと転がってるだけで味方の兵士の兜と右肩には立ち腐れた緑のバンダナが揺れるとこくらいだ。

ある者は、剣を地面に刺したままくたばったり、魔法の杖を手に取ったまま地面に伏し、くたばった者もいる。剣はそこら辺に刺さってはいるが盾を持つ者もいるのでぐちゃぐちゃだ。

 当然だが、この砂海で立っているのは私だけで、あとの者は戦死した。こんなのは奇跡でしかないだろう。

戦に出向く前は「あ、終わった。」と思っていたがまさか生き残れるとは。家族にまた逢えるのだろうか……いいや、そんなに現実は甘くはない、甘く考えてはいけないのだ。

しばらく無言になり、耳を澄ませる。

 「まだいたか…。」

俺は腰に据えていた一本の紅刀を抜き、構えると目の前に広がる敵の大群に独り向かい、突撃する。敵はもちろん何千万という数なので最初から勝算なんて微塵も無いことはわかりきっていた、ただ…俺は戦わなければならなかった。妻との約束のためにも…。

 「…諦められないよな。」

楽しそうに、甲高い声をあげて話す妻の声を再生しながら赤いバンダナをつけた兜の首を斜めに斬り裂き、そんな独り言を呟く。

自分の剣の腕は魔力を消費するスキルを使っても数百人相手できるかどうかだ、敵は古代兵器の者含めて三千万程…できるだけ拡散させて、分断させれば数百人ずつ相手できるが…。問題は分断するためにどうやって遮るかだ。

オアシスを利用するか、いや…すぐに抜けられてしまうだろう。そうだ、単純すぎるからこそ忘れていたが、砂漠には高低差があるじゃないか、高低差を利用するとしよう。

 敵が一斉に俺の方へ向かって進軍してくると、俺は深呼吸と共に一気に砂海の上をスケーターのようにスムーズに上昇していき一気に砂海の斜面を急降下する。そして敵が数百人くらい湧いてきたらその重力を使いながら斬り捨て、今度は真反対にある斜面へとかけて出す。時々出現する、まるまる肥ったサボテンが一々邪魔になる。自身に邪魔になるということは敵にも障害と化すということ。

この時、頭の中で余裕をかまし、天狗を創造した。

繰り返しでいけると悟ったのだ。そう…全てを薙ぎ倒せると思っていた。しかしそんなことは叶わなかった、神は許さなかったのだ。突如として足が掴まれた感覚があった、けれど俺が今つけている防具には足場の影響を受けない効果が付与されているのでどうして止まったのか疑問だった。その下を、絶望を、俺は言うまでもないが向きたくなかった。

しかしながら、人間はどうしてだかわからないが気になって仕方なくなる生き物。

「な……」

向いてしまった…一番高い斜面を超えて降り、下を向いた時にいたのは流砂である。サボテンと渇いた岩は知らんぷりをしてるようで見ててとても腹立たしい存在だったが、この怒りの感情ももうすぐ感じなくなるのだと回想すると懐かしくも思える。

流砂には顔がないのにその時見た流砂は満面の笑みを浮かび上がらせている気がした。

周りには斜面を越えてきた敵の兵士がどんどんと群がってくる。剣で心臓を貫かれた俺は無惨にもすぐには殺されることはなく、今まで殺されてきた仲間の報復を受けることとなる。十字架に貼り付けられたあとは釘を打ち込まれた。その後腕や脚をバラバラにされ、肉を引き裂かれる。焼かれたりもしたのか…そのあとは意識が飛んでしまって思い出そうとしても思い出せない、もう思い出したくもないが…。


 俺の意識はそこで途絶えると思っていた。


だが、数十秒のうちに意識は復活していて、見知らぬ暗闇に包まれた場に最初の頃はいたが一本の不気味な赤白い光を辿っていく…実態がないのかわからないが、手足の感覚、呼吸の感覚すらもない。

「…ここは…」

しばらく身彷徨っていると何かの障害物にぶつかり、上に行こうと下に行こうと動けず、左右にも少ししか動けない。どうやら閉じ込められたようだ。これは困ったと思うと何処からか声が聞こえる。

「もしもし?あんた聞こえてるの…?」

そこには変な女が、黒い光を放つ鉱石でできた玉座に坐っていた。玉座に続くのはよく見かけるレッドカーペットではなく、青と灰色のカーペットの上と言っても過言ではない、その上に坐っているのだから。

 簡単に容姿を言えばこうだ。なんのカチューシャかわからないが、羊?か山羊の角を模したカチューシャをつけている黒髪ロングの……女マフィアとでもいうべきか…。

「聞こえてるかって言ってんの。あんた死んでる?」

「あ…はい、聞こえてます。」

女マフィアは溜息を吐くと、頭がおかしくなったのか口から嘘を撒いたようだった。

「私は命の魔王、エヴァースピリタス・ドミィナっていうんだけど貴様の魂が優秀だと部下から報告を受けてさ、私の()になって欲しいんだけど…引き受けてくれるよね?」

混乱状態に俺は陥った、もう魔王は死んでいるはずなのだ。生きているはずがない。しかも転生なんてことあり得るのか?どちらも伝説でしか聞いたことが無い。

「そんなお伽話を信じる程俺も甘くはない…。」

「え?嘘じゃないってば!…この紋章、見たことな〜い?」

と言いながら何を見せるかと思えば急に立ち上がると、美脚の殆どを覆うヒールブーツをコツコツと鳴らしながら近づいてくると最初は太ってるように見えた、妊娠で膨らんだお腹の辺りを指さしてみせた。

お伽話に出てきた紋章が刻まれている…。蛇がクロスして、真ん中にワイバーンの頭、両端には悪魔の翼、間違いではなかった。

「ほら?言ったでしょ?!」

 とはいえど…何故奴と…ドミィナと普通に腹を割って対話できているのだろうか、その上聴覚と視覚があるのは不思議だ。

「なんで喋れてるのかって顔してるね〜。いいよ、この際だからわからないこと全て教えてあげるわ。」

彼女は回答した。疑問に思ったこと全てに答えてくれるとは思わなかったが。

 どうやらこの魔法陣の上からはドミィナの意見に賛同しない限りは出られないらしい。出てしまうと話も視覚も聴覚さえも出来なくなり消えてなくなるのだという。その時点で賛同する他無い程に詰んでいるのだが、さらに絶望を与える言葉が実態のない身体を刺激する。それは…。

「君には無論、働いてもらうわけなんだけど…ペナルティ無しで言うことを聞く保証もない。てことで!与えた肉体に腐の呪いを刻んであげま〜す!腐の呪いは、言うことを聞かない悪い子に対して呪いの効果を強く、速める効果がついてるので安心してね!」

 腐の呪い…それは、人間の死体をほったらかした時などに起こる現象が生きてる間でも同じことが起き続けるという残酷なものである。焼けたような痛みと、喉に常に渇きを感じてしまうという症状が起き、時には肌の肉が無くなり、骨が剥き出しになることもあるのだとか。これから俺はその痛みと共に生きていかなければならないと考えると…辛い、辛すぎる。

これでもかというくらいの追撃をしてなお、まだ苦痛を押し付ける、ドミィナは。

「私の子供になるってことは娘ってことだから、宜しく!」

もう…考えることを放棄していいだろうか、女性になるなんてどう過ごせばいいのかわからない上に恥ずかしすぎるのだが…。私はさらに小難しい顔をする。

「諦めたら君の元妻に顔向けできないよ?」

嘲笑いの笑みを煽りと共に流しながら言うドミィナに対し、驚愕の一心で何故奴は俺に妻がいたことを知っているのかが気になって仕方がなかった。

「な、なんで…俺の…」

「なんでって…そりゃもちろん娘のことは保護者として知っておかないとね?」

 説明にもなってない…遠水近火でしかない。

そのうちわかるのだろうか…思案しても無意味なことを頭で砂漠の砂のように流しながらこれからどうすればいいのかを自身にとドミィナに聞いていく。

「わかった…それをやれば俺は妻を守れるかもしれないんだな?」

ドミィナは目を閉じてゆっくりと二度、無言で頷く。

 下された命令の内容はこうだ、俺は千年以内に魔王城を築き上げて全ての国を鎮圧すること…なのだが…これは。

「……できるわけねぇだろぉぉぉぉ?!!!?!魔王城を作る?!国を鎮圧?!無理を言うにも程があるだろう が?!いや…賛同するけども…賛同するけども?!無謀過ぎる…。」

「よく言えました!では…こっちへいらっしゃい!」

俺が次に何か言おうとした時には何も聞こえず、何も見えず…うとうとと睡魔のような闇が目の前を覆っているだけであった。


 本当にやり遂げることができるのか…、そんな心配を胸に秘めて深い眠りに堕ちる。


「おはよ、目が覚めまちたか?」

聞き覚えのある声が早速、私の事を苛立たせにきたが…奴との約束を忘れたわけじゃない。その為、簡単に手出しなどはしないようにしなければ…。

だが…不便過ぎることが一つだけある。それは、喉が未発達だからなのか全くと言っていいほど喋れない。洞窟なのか音は良く響くようなので声を早く、久々に出したい。ここに来てから然程時間が経ったわけではない、がしかしあんなのといると時間が過ぎるのが遅く、それは遅く感じてしまって十数年牢獄に収容されている罪人と同じ気分でしかなくなる。

 当然至極か、ドミィナが上から目線を下ろしている頃から察してはいたが、今の俺は産まれて間もない赤ん坊なのだ。泣くことくらいしか仕事という仕事もこなせない。仕事なのかも分かったものじゃないが。

目を合わせるとニコニコと木枯らしのような笑みを見せるのも少しだけ腹立たしい。流石にそれを表情に出してしまえば呪いが進行してしまうだろう。

できる限り抑えておかなくてはならない。そう思っていたのに数日過ごして悲痛が心身を襲う。この女は頭が狂っているのか、怒りの炎の原料となる炭をせっせと運ぶのだ。

ある時には地下底湖の水をわざとかけたり、またある時にはお腹空いて餓死しそうな時に限ってご飯をくれなかったりと…確実に呪いを誘発させたくてたまらないのが目に見えている。

 赤ん坊だからと言えど、魔法が行使出来ないというわけではない。血流と同じ感じで流れている魔力の流れを同じように掴み、心の中で詠唱できれば如何なる属性の魔法も通常通り使える…と前世で教えてもらったことがある。この女に使って、一発お見舞いしてやりたい。得意な属性は人によってそれぞれ違うらしいが、俺自身の得意な属性がわからない以上は何もしないほうがいいだろう。が…あの女は何の属性が得意なのだろう。突如としてそんな疑問が脳裏を横切る。

 「雷属性と闇属性、渾沌属性も場合によっては使ってしまうわね〜。」

は?…何故聞きたいことがわかったのか、理解しがたかった。したくなかったというべきだろうか…。

つぶらな瞳で不思議だということを伝えてみる。

今度は伝わらなかったようだが…。

考えたこと全てが伝わるようになっているわけではないのは事実…しかし、脳で教えて欲しいことを考えるとバレてしまうのか。

「そういうことよ。さっすが〜察しが良いじゃん?」

わからなかった、難問すぎて。

「これを使って、お話しして欲しかったのに、全然話しかけてこないんだも〜ん。阿保になっちゃったかと勘違いしちゃったじゃん!私の子供がそんなわけないと信じてはいたけどね。」

褒めているのか、貶しているのかさっぱりだ。とは言えど今この女の言ってること全てが皮肉に聞こえてしまう病気にかかっている為、脳には悲観と憎悪が支配している。

奴は企みをしている様子で…。

 「次の段階だね!渾沌魔法、パルド発動。この者に何百倍もの肥を与えよ。ヌムーン。」

聞いたことのない呪術か何かを俺に向けていきなり詠唱しだすと、いきなり俺を人間の歳で数えるなら七才くらいの年齢に成長させてみせた。

どんな物騒な呪文かと思えば、成長魔法だったなんて…未だに信じられない。雪原地帯でもないのにまだ身体の震えの感覚がある。

「何で震えてるの?怖がらなくて良いのよ?」

「いきなり、詠唱されて怖がらない子供がいる?!」

さすがに我慢の限界がきていて叫んでしまったが…何かがおかしい。声が変わっていたり、性別が変わっているのは頷けるが…もっと、根本的な何かがおかしくなっているのだ。私一人で気付けないとはとても情けない。私…?そう、私は私だ。……私?違うよな?

 おいおい…これは…。

「私…根本的なものから女子になってるじゃん…。」

「可愛らしい口調になってきたわね!お母さんって言ってみて?」

絶対に嫌だ…そう思い、私は毒を吐く。

「ばばぁ…」

ブチギレたらしい…やばそうなものを詠唱している…。

「渾沌魔法、ドミィナより命じる…破壊は破滅へ全ては環魂し全てを消しろ、ドゥムアレ・インティグレーショ…」

「ごめんなさい…お母さん…。」

何とか間に合った…、ここら辺一体が絶対に吹き飛ぶ魔力の量を込めていたぞ。そこそこ硬そうな石で…おそらく暗光にしか反射しないブートヒルッド鉱石だろうか、その鉱石で囲まれた洞窟ではあるのだろうが…あれには耐えられないだろう。

何もなかったかのようにいつもの笑顔に戻ったドミィナは頭をしきりに撫でてきた。

「偉い偉い!」

 「あ…そう言えば腐敗は?!」痛覚がこの身体になってから鈍くて感じなかったが…進行していた…。左脚と左腕…焼けているような痕が残っている…。

「言ったよね?逆らったら、どうなるか。まぁ…今回は初回だし、この程度で赦すわ。次は容赦なく骨までいくから気をつけようね。」

鋭い真剣な表情をしたドミィナは初めて見た…。本気で働いて欲しいのだろう、この破滅へと向かいつつある世界をよくするために。少なくとも私は助力を求めている者を放って置けない主義なのでとことん尽くそうと思えた。

 世界は、魔王がいなくなったがために…いや、目の前にいるので消失と言った方が正解か、国々が次は誰が統率をとるかの権力を巡って泥試合を塗りたくることとなり、私もその泥試合に行かされた兵士の一人ではある。

その中で悲惨なとこを幾度も見てきたがまた紛争が多すぎて食糧生産が激しく、焼畑農業をせざるを得なくなり、人類は砂漠を大きくし過ぎてるというのも大きな問題だ。

砂漠は何も良いことを恵まない。恵んだとしてもそれは知恵の方の恵みで、常に警戒を怠ってはならないという戒めを心に刻んでくれたり、また戒めによって得る達成感も違かったり、身体的に物質的な面では全く肥えてないのだ。

川の一部では水位が下がりに下がり、水たまりのようになってしまった場所だって多い。

これらが起きるということは盗賊だって大きくなる。枯れ果てた砂漠で野営地を建てていた盗賊のアジトを潰したことが経験として一応ある、そのためわかるが奴らを決して舐めてはならない。ちゃんと統率力の取れた連携攻撃や一人一人の戦闘知識の高さと言ったら洒落にならないからだ。その時は本当に盗賊なのか疑ってしまった。

 「ラメエルちゃん、考えてるとこ悪いけど、時間がないから剣術練習、始めるわよ」

今更だが、私の名前はラメエルらしい…どういう意味なのかは知らない。そのように言われ、洞窟の奥深くへと進むと一気に鉱石が少ない、開けた場所に出る。

そこにはいくつかの樽が置いてあり、剣や槍、弓などが乱雑に押し込まれてあった。闘技場のようだが…しかしながらその中に木刀というものはなく、木剣は片手で持つ剣、片手剣の他に両手で握る両手剣以外存在してない。つまり愛用していた刀という武器は存在してない。私は刀以外の剣術を幸運にも身に付けてるので今更練習など必要ないが…この女はどれだけ私を馬鹿にすればわかるのだろう。言い出しそうになる口元を抑え、両手剣を模した木剣を二つ手に取る。以前使っていた刀も重量があったが、こっちもこっちでより重量感があるみたいだ。でも幼いような身体つきをしていても筋力が魔王の娘だけあるのだろうこの身体では全く重く感じない。

 「母様の剣術…どんなものか、確かめさせてもらいま…」

初めの合図をする人物が、開始の鐘が鳴らないにしても速さが風魔法で強化したのかと思浮かべるくらいの素速さ。その速さを使っていきなり背後に廻り込まれた。木剣で立ち向かってる者に対して本物の剣を使うのは卑怯過ぎると思い馳せているが、こんなことを考えている暇なんて今は無い。とにかく木剣に負担がかからないようにできるだけかわす他は生きる道はない。幸い地面はあの時のような砂ではなく、硬い岩なのでしっかり踏ん張りが効くにしても相手の素速い速度には両手剣で追いつくはずもなかった。

 魔法でどれくらい変わるのかと言うと風魔法で自身を強化した場合、凡人だとしても飛ぶよりも速くなるので、この際、この女が自身を強化すれば光よりは遅くとも音と同じ領域の速さになるだろう。

「ふーん、この重撃避けれるのね。さっすが〜私の娘と言ったところかしら。でもそこで距離をとっても逆効果よ?何故なら…私は…全武器使い(オールラウンダー)だからね!」

そう言う彼女は持っていた鋭い片手剣をどこにしまったのか、ゆっくりとまたどこからともなく弓を取り出す。

やばい、今弓を使われたらスキルで防ぐ他なくなる。前方を向いたままジャンプして避けたせいで後ろもガラ空きだが、距離ができてしまい弓のような遠距離武器の攻撃の的。できるだけ回避スキルは使いたく無い、絶対的に危険な攻撃以外に使うのは基本的にもってのほかだ。

そうだ、こうすれば…。

「ん?当たった感触ではない…」

 弓の回避方法はタイミングよく矢を斬り捨てるか、盾で防ぐかのどちらかになるのだが…突発的に考えついた。

両手剣を十字架のように斜めで構えて受け流せばよかったのだ。

「今の回避するのね〜。やるじゃん?」

次の攻撃に備えて、木剣のわりに耐久性があった両手剣を再びどっしり構える。

とは言え、この練習はきっと私が一撃与えるまで終わらないだろう。だからこそ自分で攻める必要も生まれてくる…。しかしだ、こんな絶対強者の前で攻めた時に出てしまった隙を観察させたらすぐにノックアウトだ。

負けはもちろん嫌に決まってる。この女のような舐めてる奴には特に…。

歯を食い縛る程にムカつく態度をとらせるようなやつにあってはならない、勝利という輝かしいものは。

「回避の一手だけで勝てると思う?」

図星…だが。

「余裕をこきすぎてるママも隙はある!」

たったの一瞬、光よりも速く短い一瞬ではあったが、その隙を私は逃しはしなかった。

剣を振り下ろしたママの褐色の肌色が光る左腕目掛けて勢いよくこちらも突き刺す。

「(届け!)」

当然、心の中で叫んでいた。

がそれが落ち度だったらしい。

 「ユールーズ」 

その女性とは裏腹な重低音な声で発せられる言葉と共に私の視界はぼやけていった…。

ボディブロウを喰らい鳩尾されてしまったのだと漸く確信する。

「終わる…のか、私はこんなところで…。」

涙が溢れてくる感触がじんわりと紙に吸収される墨液のように肌から地面へと流れていく…。

それも血の涙…魔物の血は青だと聞いていたが、この涙はどうやら赤色であった。手に落ちてきていたので一目瞭然。

この感覚は一言で言えば、怒りと悲しみの融合型、つまり憎しみ…である。

 敗北は昔から嫌いだった。

あの何も成し遂げられなかったような責任感や負けたことで目の前のものが奪われたことだってある…屈辱感、相手より実力がないことを思い知らされる劣等感。これら含めて絶望とまとめていいだろう。

その絶望は今私の瞼から滴っている。

「あ……、な…て…ね……」

耳鳴りがしていて周りがよく聞こえないが、あの女は今こう言っているのだろう「あなたって、本当に弱いわね!」と。

このまま負けたことにしていいのか?……「クソ喰ラエダ!!」

全身に何故か力が入る。それだけではない、鳩尾を食らった場所から一気に痛みが走り出すと同時に自分の腕部や脚部が…悍ましい姿に万化した。皮膚が剥がれ落ち、肉塊と骨が剥き出しに…手も形が変形してしまい、五本あった手が三本にくっつくなど酷い有様だ。

これは…竜になってしまうのかもしれない。

慌てて私は我に帰るが…遅い、「次はお前だ」とでも言うように頭と背の変形が始まる。

とうとう私は…竜に…腐敗竜になった。

「お母さん、嬉しいわ!こんな立派な竜になってくれて!!」

こんな状況なのにも関わらず全く動じない彼女目掛けて私は炎ブレスを吐こうとしたが…。

「で…よ〜?そ…じゃ…っこない…」

失敗した…。

もう一度、首の底から力を入れる…すると、出たには出たが…。何の効果もなさそうな赫色の粒子が混じったブレスだ。

こんな辺鄙な赤色のブレスだとしても、十分である…周りに咲いていた青く光る華を砂塵の血石と言えるものへと変えることができるのだから。

私は今、喋ることはできない、然し竜であっても言葉は理解できる。

アイツが今が愚痴を言ってるのくらい、口元を見れば…。

(「ウザイ…憎イ…憎イ…お前ナンテイナケレバ」)

 これを言うたび愉快であった、爽快であった。私の中の呪いが甘い蜜によって癒されていくような、そんな感覚…。こんな感覚が毎度毎度のこと、彼女を傷つけながら残響していく。

止められなかった。

辞められなかった。

ザクッと何かを引き裂く音と共に昇る目の前の奴が無様に消えていくサマは酒や煙草といったものとは違う中毒性があり、私の中で足りなかったナニカが満たされていくのがわかる。

「(ソウダ、コイツモアイツラノヨウニウラギル…)」

あいつらとは一体…誰のことか思い出せない。

 私は何故ママを殺そうとしている?復讐か?それとも報復を受けるべき奴だからか?どれにも当てはまらない。

それだけが疑問であった。私はただこの闘技場っぽいとこでママと戦うことで剣の腕を上げる目的を果たそうとしていただけだ。ここまで…死なせてしまうほどのことを私にしてきたか、彼女は。

『勝負事に本気になるあなたが大好き!でも…殺しは絶対にしないで…あなたがそれをやってる時、あなたではなくなってるから…。』

涙は透明だった。

誰か、自分でもない…アイツでもない女性の言葉が脳裏を過ぎった瞬間、トドメを刺そうとしていることに漸く気づく。

「私は…必要ない殺しはしない!」

私のドラゴンと化した大きな手がママの丁度真上にきてるとこで手は止まっていたので彼女は死ななかったが、かなりの重傷を負っていた。

剣か何かで裂かれたような傷である…。

「だ、大丈夫?」

「ぐっ…だ、大丈夫よ。それよりあなたが戻ってきてくれて本当に良かったわ。」

私にできることはないか聞いてみる。私が負わせたものだ、これくらいは私が治癒しなければ。

「そうね…じゃ、この呪いを執ってくれるかしら?」

口が空いたままになった。

「何をそんな呆けた面してるの?早くしなさ…ゴホッ。」

前にあったムカつく戯言を無視し、ママが出した咳に注目する。赫く染まった砂のようなものだった。血では無いが血が固まったらあんな風になるのだろうが、あれほどのものが肺に詰まっているとも考え難い。

だとするとー呪いーになるのか。

一発でどうやったら当てられるんだ…。

そう思いながらも呪文を解くため、聖水を用意する…。

「馬鹿者!聖水なんぞでお前の呪いが外れるか!お前が外すんだ!」

 「この傷も…もしかして私が?」

「そう…暴走したラメエル…お前がつけたんだ。けど…ラメエルのせいではない。」

その一言だけ言うとやはり体調が優れないのか、ママは昏睡してしまった。

 「どうしよう」この一言が脳を支配していく。

私自身、武術以外は極めてなかったので聖水を配合なんて難しいことできるはずなかったのだ。

とりあえずママの酷く裂けている部分に手を当て、「解除」と念じてみる。

当てがあってやったわけではない、不意にそう思ったことをやっただけだ。

ただ、それだけ。

それだけなのに。

すると念じたところがみるみるうちに治っていった。

「え?」

他の…酷い部位…肺でやってみよう。肺なら中にあるのだ。治るわけが…。

「解除」

目がぱちくりした。赫色の息が無色透明になったのだ、これで驚かない人がいない人がいないわけない。

 次の驚き方はもう決まっていた、だからこそなんだか恥ずかしい。白々しい感覚と病名不明の病が治った安心感が何故か暖かく、心地よかった…。砂塵の血石が大海の軌跡に飲み込まれていく、この感覚が。


 二日が立つ頃か、剣術の訓練をあれっきりだと思っていた私は今日も理不尽高難易度の訓練を積むことになっている。暴走はあの日以来ないものの、呪いはやはり辛い。

「はい、勝ち!」

ママは優雅な様子で手を腰に当てて立ち往生をし、私は負けて優雅に佇む彼女の方を向いて寝転んでいる。この状況も何度見たか…。

「でも…そろそろ頃合いね。」

そう言って近づいてくると…手を向け前のように詠唱し始める。

「渾沌魔法、パルド発動…この者に四十倍もの肥を与えよ。ヌムーン!」

 「また、身長が増えた上に恥ずかしいのが増えたのは…女だし仕方ないとするか…。」

ここから私がさらに苦戦を虐げられることになるなんて思いもしなかった…。

どうでしたか?わかりにくい内容ではなかったでしょうか…?修正するべきとこがあれば教えて頂きたく存じます!誤字脱字…独特過ぎて伝わりにくい表現など…色々指摘されそうで怖いです…。今回は第1章の小説として描きましたのでこんな感じで終了と考える次第ですが、人気だったりしたら続きも描こうと思っておりますのでご期待の程よろしくお願いします。

次の作品はホラー小説を予定しております、よろしければご覧ください!ではまた!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ