9.アタオカ親仔無双
日が洋上から落ちようとしていたとき、ユニコーンの親仔が村の入り口に現れた。
王女であるエマは、深々とフードで顔を隠して神官を装い、高原3姉妹は天使の侍女として側に控え、先頭を行くのはもちろん、エルフであるドワーフである錬金術師レンチである。
とうぜん、村人たちは驚いた様子で一団を眺めていた。
「な、な、なんだ……あんたらは!?」
『小生は海賊ファルシオン。未だに地に縛り付けられた魂たちから船を接収しに来た!』
当たり前だが、村人たちはお互いを見合ってざわついた。喉かな漁村に謎の一角獣の集団が出現し、更に不可能と思われる心霊スポットを攻略するというのだから、黙っている方が無理な話だろう。
村人の中でも、お節介そうな若者が言った。
「ちょ……わざわざこんな時間でなくても、せめて昼間にしなよ? な? な?」
『それはできない相談だよ。取りこぼしがあっては、こちらとしても困るんだ』
村人たちは再びざわついていた。心霊スポットの恐ろしさを知っている彼らから言わせれば、いくらユニコーンが2頭いても無謀だと思ったのだろう。
だからこそ、小生は体中の霊力を具現化してから言った。
『道を開けろ』
村人たちは誰しもが驚いた顔をして道を開けた。
それだけでなく、物好きそうな村人の何人かがこっそりと付いてきている。気持ちはわからなくもないが、幽霊に攻撃もされかねない危険な行動だ。
『我らに付いてくるのなら誓約を立ててもらうぞ』
「な、なんだよ……いいじゃないか。俺たちの村なんだぞ?」
『霊魂との戦いは重度の危険が伴う。ケガはもちろん精神錯乱、下手したら死ぬことになっても構わないという誓いを……立てられるか?』
村の若者の一部は青い顔をして逃げたが、その中でも肝が据わっていそうな5人が踏みとどまった。
「俺たちだって海の男だ! そんな誓いは毎日立ててんだよ!!」
「そうだ。よく言ったぞポール!」
「俺様たちは逃げねえ!」
なかなかに心意気のある若者たちである。
『気に入った。死ぬ気で付いてこい』
歩くこと30分。
すっかり日も沈んで西側の空にさえ星が光りはじめたとき、小生たち2頭と10名は足を止めた。
無数の船の残骸が散らばっており、中には横転しているだけで起こせば使えそうな船まである。しかし、小生の目には、その周囲に人の姿をした透明なオーラ。つまりゴーストが無数に映っていた。
『表にいる霊魂だけで……おおよそ140かな?』
グラディウスが笑うと船乗りの幽霊たちは、なんだお前らはと言いたそうに小生たちを取り囲みはじめた。さすがの漁村の青年たちも怯え声を出して、小生やグラディの背中に隠れていく。
『じゃあ、お父さん……どっちがたくさん仕事をこなせるか……競争だね!』
『ふふ……言うではないか。いいだろう!』
本当に地獄というものがあるのかは判らないが、ユニコーンの力で閻魔という地獄の裁判官がいたときに、仕事がしやすいように計らってやるとしよう。
これから言い渡すことは、小生からの推薦状だ。
『オーラ力がたったの7か……ウマっころめ』
『一匹は俺様がやる。確実に命ある魂を食って、悪魔になるんだ!』
船乗りの幽霊たちはグラディウスをみて呟くと、剣を抜き弓矢を構えてきた。
その表情から、選別を行わなくても大半が悪人だと察しが付く。生前もこうやって多くの命を殺めてきたのだろう。
グラディウスと小生は、一気に角を光らせた。
『地獄、君も地獄、君は大地獄』
『ぎょば!?』
『はぐば!?』
『ぼぐお!?』
『地獄だ。貴様は大地獄。貴様は……もう一度生まれ直せ!』
小生も息子も、襲い掛かってくる霊魂を角で薙ぎ払ったり、魔法をぶつけて浄化したり、蹴り倒して浄化したりと大忙しだ。
『はい地獄、地獄、地獄に大地獄。君も地獄、君も地獄に、隣も地獄!』
『貴様は大地獄。お前はやりなおし。お前は……特別に天国。お前はやり直し!』
『地獄、君も地獄、君は大地獄!』
小生はちょっと待てと思いながら息子を見た。さっきから霊魂に対して地獄としか言っていない気がする。
『グラディ、お前の地獄レシオは……何対何になるんだ!?』
『そ~れ地獄。君は血の池地獄。君は無間地獄。君は灼熱地獄。今日は地獄のバーゲンセールだよ!』
気が付いたら、グラディから海賊と思しき霊魂たちが逃げ回っていた。というか地獄のバーゲンセールなんて、一体だれが得をするというのだろう……?
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