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8.船の墓場を目指して

 ツーノッパ地域の北西部と西部には、雄大な海が広がっており、そこには大小様々な船が行き来している。

 当然、悪天候や海賊の手によって多くの船が沈んでおり、それらの残骸が集まる場所もある。


 船の墓場と名付けられた、その海岸には幽霊が出るという噂もたっており、地元の人間は誰も近寄らないのだそうだ。


 近くの村までやってきた小生たちだったが、このまま中に入るには目立つため、小生とグラディウス、そして王女エマの3名は村はずれの森で待機することにした。

「じゃあ、行ってくるよ」

『念のため用心してくれ』

 レンチと高原3姉妹が村に入って情報収集をしている間、小生たちは文字通り道草を食っていた。


『ところでグラディよ』

『なんだい父さん?』

『お母さんは、どんな牡と再婚したのだ?』

『精霊の覚えめでたい若牡馬だよ。地の加護を得た……まあ、愚生から言わせればお堅いお役人みたいなユニコーンかな』

『その様子だと、お前とはそりが合わなそうだな』

『うん、考え方も生き方も180度違っている。愚生は土地を捨てて新天地を探すべきだと考えているけど、その若馬はあくまで土地を守る……とか言ってお母さんと意気投合していたよ』

『王国や魔王軍の開拓団との戦いも……激しいものになりそうだな』

『新天地を見つけた方が、安全かつ確実に子孫を繁栄させられると思うんだけどね』


 その話にじっと耳を傾けていたエマは、小生を見ながら言った。

「一角獣の世界にも、いろいろな考えの持ち主がいるのですね」

『我らは精霊の影響を強く受けるからな。炎は短気者に、水は小賢しく、風は根無し草に、大地は偏屈者になる』

 その言葉を聞いたエマは、本当にそうなの? と言いたそうに小生を見ていたが、グラディはニタニタとした顔で悪ノリを始めた。

『ちなみに、お父さんは炎と大地だから……喧嘩っ早いガンコ親父。息子の愚生は水で風だから……小利口なチャラ男だよ』

 おい……と息子を睨むと、グラディは『ウェーイ』とか言いながら草をくわえたまま遊んでいたので、軽く頭を小突いておいた。



 こんな感じの雑談をしていると、レンチたちが食料の入った袋を持って戻ってきた。情報収集ついでに買い物もしてきたようだ。

「ただいま~ 意外と食べ物の値段……高かったよ」

『この辺りは人口過多だからね。墓場の評判はどうだった?』

 グラディウスが質問すると、レンチは「そうそう……」と言いながらこちらを見た。


「キャプテン。どうやら噂通り船の墓場は危険な場所みたいだよ」

『具体的にどの程度危険なのだ?』

 レンチは麦袋を小生の背に括り付けながら言った。

「船の残骸の周りには本当に船乗りの霊が出るみたい。物好きな若者たちが物見遊山で行ってたびたび目撃しているよ」

『数は……?』

「詳しいことはわかっていないけど、夜になると残骸の側に近づくだけでも危ないらしいから……相当な数でしょうね」


 その報告を聞いていたエマや、高原3姉妹は恐々とした表情をしていた。

 特に3姉妹は、ゴーストの恐ろしさを知っているのだろう。霊魂というものは実態がないうえに生前の思念を強く残しており、生者にとりついてエナジードレインを行って病気にすることもある。

 そして、彼らが真に力を発揮するのは集団となった時だろう。特に50以上の霊魂が集まった場所は、空間そのものを霊界化させ、生き物の体のコントロールを乗っ取って死に至らしめたり、霊力によってモノを浮遊させて生き物を攻撃する。


「リスクが青天井よ、これ……」

 レンチも恐々とした表情のまま言ったとき、グラディは目元を隠したままクツクツと笑っていた。

「グラディウス……さま?」

 エマがグラディの顔を覗き見ると、そこには満面の笑みがあった。

『それくらいガードが固いのなら、大きなリターンが期待できそうだね』

 小生もまた、その言葉に大変満足した。せがれはよく物事の本質を理解していると思う。


『ああ、我ら一角獣は……自然界に彷徨う霊魂を鎮める役割も担っている。大仕事になりそうだが……やりがいはありそうだな』

「や、やるの!?」

『当然!』

 小生が言うと、更にグラディウスが言った。

『決行時間は日没後……彼らの得意な土俵に乗り込む!』

 エマたちも恐々とした表情のまま笑った。我ら親子の頭のおかしさに圧倒されたのかもしれない。


 ファルシオンとグラディウスの2振りの剣が、今……船の墓場を睨みつけた。

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