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7.お使い鳥再び

 まもなく小生は、息子のグラディウスと別行動をとっていると、お使い取り鳥ジョニーが姿を見せた。

『ピー! ピュイ?(よーダンナ。感動の息子さんとの再開……楽しんでくれたかな?)』

『ああ、堪能したよ。お前に噛みつきたくなるほどにな』


 お互いに憎まれ口を叩き合うと、ジョニーはすぐに本題を切り出した。

『ピピピー(単刀直入に言うが、エマお嬢ちゃん……悪いことは言わないから、祖国には戻らない方がいいぜ?)』

 その言葉を翻訳すると、エマニュエルは何かを察した様子で頷いた。

「私が反逆者として、手配されているのですね?」


 ジョニーは頷いたが、少し視線を上げながら答えた。

『ピーピィ(そりゃまだ早急な答えだ。いくらニセ勇者さんの逃げ足が速くても、宮殿に到着するには10日はかかるぜ?)』

「では、どういう理由でしょうか?」

『ピピピー(嬢ちゃんのオヤジさんに……念願の皇太子が産まれたんだとさ。渡り鳥たちもすっかり大騒ぎだ!)』

 その話を聞いたエマは、微笑みながら祈るように手を組んで国王を祝福していたが、父親を経験している小生からみれば不穏なことが始まるように思えた。



 国王はすでに60を超える年齢だったと思う。そもそも子宝が少ないうえに、生まれてくる者は選んだかのように女子ばかりだった。

 公式の場だけでも10回は男子が生まれないことを嘆き続けた人物だが、そんな者が晩年に待望の男の子に恵まれたのだから、波乱がないと考える方に無理がある。

『ピピィ(しかも、男の子を産んだのが……元町娘の側室なんだ)』


 思わずエマと目が合っていた。

 妹ミツボーの母親も側室だが、地方出身とはいえ曲がりなりにも貴族である。ミツボーの母親もミツボー自身も、自分よりも地位の低い側室の男子を皇太子として認めるはずがない。

 連中に勇者という武力の象徴がいることも話を厄介にしている。あの男にせめて知恵があればよかったのだが、ほぼ間違いなくミツボーの言いなりになるだろうし、交戦でもすれば周辺地域を破壊するような大規模戦闘になることは確実。ますますエマの立場を危ういものにするだろう。


 そして連中だけでなく、国王自身の行動にも注意が必要だと感じた。

 国王は確実に、自分の息子を守ることに躍起になる。王にとって王子の誕生こそ悲願であり、それが叶ったのだから次の王にしたいと考える方が自然だろう。

 そうなると、実質的に後継者として育てられてきたエマやミツボーの存在が邪魔になり、ミツボーとイキリッチスキーがもたらす『エマと魔王の内通』という情報は、願ってもないエマを排除する口実となるだろう。


 エマは険しい顔をしたまま言った。

「今はっきりとしているのは、私は祖国に戻っても情勢を混乱させるだけですね。このままキャプテンと同行した方がお互いのためでしょう」

『小生も賛成だ。ここは国外だが……それでもグズグズしていると暗殺者が来る危険性もある。なるべく早く船を調達しなければなるまい』


 使い魔鳥のジョニーも頷いた。

『ピピーピィ(おいらもできる限り協力するぜ。また何かわかったら連絡するからな!)』

「ご協力……感謝いたします」

 ジョニーが飛び立とうとすると、グラディウス一団がゆっくりと舞い降りてきた。

『ピィ(あ、あれは……グラディ!)』


 息子たちは、小生たちの前に着地すると、すぐに話しかけてきた。

『お父さん。偵察していたら……興味深いものを見つけたよ』

『冒険家でも見つけてくれると助かるのだがな』

『冒険家ではなくダンジョンの方だよ。それも……無数の船の残骸が集まっている場所』


 その言葉を聞いた小生は、すぐにピンときた。

『もしや、船の墓場か……?』

 グラディウスは頷いた。

 どうやらコイツは、最もハイリスクな代物を見つけてきたようだ。

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