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 ダンジョン前で、アーヴィンドはくわりと大あくびをした。

(あぁ、やる気なさそう……まぁ、そりゃ、S+++の大先輩にとっちゃ、こんな任務つまらないですよね……)

 二十階に下りて、二人はダンジョン内を歩き回る。フィオは三匹程魔物を倒して、下の階への階段を見つけて下りた。途中人型のアンデッドも出て来たが、それは倒さずに回避して逃げた。アーヴィンドに嫌味を言われたが、それは聞き流した。どうしてもあれを倒す事は、良心が踏み越えられなかった。

 二十一、二十二、二十三と順調に下りていく。

(俺、けっこうやるじゃん)

 今のとこ、危なげなく敵に勝てている。たまに苦戦しても、アーヴィンドの助言によって助かった。アーヴィンドは基本やる気なさげに後ろから着いて来ていたが、フィオが困ったら一応助けてくれた。

「おい」

 服の首根っこをひかれる。

「そこのタイルは踏むな。赤い印が付いてるだろ」

 見れば、消えかけの赤の印があった。

「それを踏んだら、壁から槍が出て来るんだ」

「うわっ」

 古典的なトラップではあるが、殺傷力は高い。フィオは赤い印を上から新しく書き足した。これで次来る者が見落とす事はないだろう。

「先に進むぞ。こんなつまらないところ歩いてたら、またあくびが出ちまう」

 まぁ、こんな感じで嫌味を言いつつ助けてくれるのだろう。アーヴィンドも、『新米育成』と言う義務を嫌々ながらもこなす気ではいるらしい。

 二十四階を回った後、二十五階へと下りた。

「あ」

 そこは、広い部屋だった。

「ここが、何かわかるか?」

「ぼ、ボス部屋です……」

 ダンジョン内には、たまにこういう開けた部屋がある。そして、そういう部屋には必ず『ボス』と呼ばれる強い魔物が居た。

 二人の目の前に、大きなトカゲの魔物が歩いて来る。全長十メートルはある魔物に、フィオは思わず後ろに下がる。

「怖気づくなよ、気圧されたら一瞬で食い殺されるぞ」

 アーヴィンドに背中を押されて、トカゲの前に押し出される。

「っ!」

 剣を抜いて、トカゲと対峙する。

「そいつ火を噴くから、口の近くにいない方が良いぞ」

 言われて慌てて横に飛びのいた。

「うわっ!」

 トカゲの吐いた炎が横をかすめる。

(こわっ!!!!)

 こちらに口を向ける前に、フィオはトカゲに切りつけた。しかし、鱗が固くて剣が通らない。

「ぐっ!」

 炎をよけながら、側面から何度も攻撃する。けれど攻撃はちっともトカゲに効いていなかった。突然、トカゲが尻尾を振ってフィオの体を吹き飛ばした。頭にばかり集中していたフィオは不意の攻撃に対処できず、そのまま壁に叩きつけられた。

「っ……」

 頭がクラクラして、立ち上がれない。トカゲが、倒れたフィオの方を見て口を開く。

(やばい……)

 このまま、まともにトカゲの吐く炎を食らったら、丸焦げになってしまうだろう。命の危機を感じて、冷や汗をかいた。

「はぁ、まぁ、こんなもんか」

 アーヴィンドがフィオの前に立つ。トカゲが炎を吐く。その間、驚く事にアーヴィンドの体が黒い鱗に覆われていくのをフィオは見た。

(あ……!)

 アーヴィンドがトカゲの炎を真正面から受けてしまった。しかし、彼の体は全身が黒い鱗で覆われていて、炎は効いていないようだった。炎が途切れた瞬間、アーヴィンドは走り出して飛び上がり、右の拳でトカゲの頭を叩き割った。衝撃は、下のタイルまで響き、石の床が砕けしまった。

「あぁあ、割っちまった……修繕班に報せねぇとな……」

 立ち上がったアーヴィンド呻く。全身を包んでいた黒い鱗が、解除されていく。トカゲを足で蹴って動かなくなった事を確認した後、フィオの方に歩いて来る。

「大丈夫か? 生きてるか? 死んだか?」

「……い、生きてます……」

頭はまだクラクラしている。けれど、意識はしっかりとあった。そして、胸は信じられない程高鳴っていた。まるで、運命の恋人を見つけたような気持ちだった。



つづく




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