表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

10


 久しぶりにラウロと会う。

「お、子供を世話してるって噂は本当だったんだな」

「うん」

 ラウロが体を屈めてアヴィを見る。

「よっ、俺はラウロだ」

 するとアヴィはフィンの後ろに隠れてしまった。 

「ははっ、警戒されちまった!」

「他人が苦手みたいなんだ」

 安心させる為にアヴィの頭を撫でる。

「冒険者の仕事には、いつ頃復帰できそうなんだ?」

「うーん、来月中には……できるかな」

「そうか! それじゃ、その時は俺とパーティ組まないか?」

「えっ? 良いの?」

 アーヴィンドとの研修期間が終わったフィンは、一人だった。ダンジョンに潜る時は、普通数人のパーティを組むものである。

「あぁ! 良かったら来いよ!」

「喜んで!!」

 ラウロとなら、きっと上手くやれるだろう。命の危険のあるダンジョンでは、信頼しあえる者同士でパーティを組んだ方が生存率が上がると、講習で教えられた。

 その時、アヴィが腰にぎゅっと抱きついてフィオのお腹に爪をたてた。

(いてて)

「じゃあ、また体が空いたら連絡してくれ!」

 ラウロが去って行く。フィオはアヴィを見下ろす。

「どうしたんだアヴィ? お腹空いたの?」

 アヴィはふいっと、顔を反らしてしまう。

(つまんなかったのかな……)

 フィオはポシェットから小さな箱を取り出して、中の飴をつまんだ。 

「ほら、これあげるから機嫌をなおして」

 飴を差し出すとアヴィは飴を口に含んだ。フィオの腰から離れて腕に抱きつく。

「俺、決めた、冒険者になる」

「えっ」

「冒険者になって、フィオと一緒にダンジョンに潜るんだ。良いよな?」

「それは、うん、嬉しいよ」

(君、本当はSランク冒険者なんだけんどね)

 大人になったアーヴィンドは格下過ぎるフィオとパーティなど組んでくれないだろう。それは彼にとって、なんのプラスにもならない。

「なら、決まりだ!」

 アーヴィンドがフィオの手を引いて走り出す。

「ど、どこに行くんだ!」

「空き地! 筋トレするんだ! 強くなる為に!!」

 目をキラキラさせたアヴィは、夢を抱いた瞳をしていた。それは、この一月で初めて見る物だった。


 筋トレをたっぷりして、疲れ果てた二人はベッドに横になった。

「もう、腕が痺れて、動かない……」

「俺も…無理……」

 互いに疲労で震える腕を見て笑った。

「冒険者になったら、フィオとずっと一緒にいられるんだよな?」

「そうだね」

「へへっ、嬉しいな」

 アヴィの小さな手がフィオの手に触れる。フィオはその手を握り返した。

「おやすみアヴィ」

「おやすみフィオ……」

 瞼が落ちるままに、フィオは眠りについた。隣では既に規則正しい寝息が聞こえていた。なんだかその音を聞いていると、幸せな気持ちになった。


つづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ