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第5話 マルニータの後悔。

「見えて来たわよ」


1人の女が指を指す、隣にいた2人の女は不安そうに指差す方向を見つめていた。


「マルニータ、本当に大丈夫なの?」


「そうよ、手紙1つ書かなかった貴女を今更迎え入れてくれるかしら?」


「大丈夫だって、前もって帰るのをサイキシに伝えたけど特に何も言って来なかったし」


そう言うマルニータの瞳には不安が滲んでいた。


黒いフードを被った3人の女、

彼女達こそA級パーティー、漆黒の薔薇。


「やっとマークに会えるんだ」


濁った目で呟くマルニータ。

彼女の心の中は懐かしい故郷の町と恋人だったマークへの想いで満たされていた。


「でもマークさんだっけ?今更許してくれるの?」


「今は結婚して子供も居るって話じゃない」


「そんなのは些細な事よ」


マルニータが吐き捨てる。


「些細?」


「そうかな?」


「私のマークを奪ったなら返して貰うだけよ。

子供が居るなら丁度良いわ、私の娘にして育てるだけだから」


酔いしれる様に話すマルニータ、そう考えないと不安で押し潰されそうなのだ。


「でもさ、そのマークって人の奥さん凄腕の冒険者だったって話よ」


「うん王都のギルドで情報集めたけど結局正体までは掴めなかったし」


「正体なら知ってるわ」


「そうなの?」


「マルニータ、貴女知らないって」


「10年前マークに色目を使ってた、あいつに間違い無い」


「「あいつ?」」


「マキナよ」


「「え?」」


マルニータの言葉に2人の足が止まる。

顔から汗が噴き出し、血の気も失せていた。


「じ、冗談よね...」


「冗談なんかじゃないわ」


「止めよう!あのマキナでしょ?」


「そう、()S級冒険者[灼熱のマキナ]よ」


「殺されるよ!

マキナってドラゴンすら単独で倒したって話だし」


「そうよ、気性の荒さも伝説になってるじゃない!

あのスチュワートすら半殺しにしたって話だよ」


奥歯を鳴らし2人はマルニータの両腕を掴んだ。


「大丈夫、マキナはもう冒険者を辞めて5年よ。

3人係りで行けば負ける相手じゃない。

死に物狂いで鍛えた私達なら...」


「でも....」


「...うん」


「何を心配してるの!

あんた達だってこれはチャンスなのよ、あの屑野郎に穢された人生を挽回するね」


「「マルニータ...」」


拳を震わせるマルニータ、彼女達はこの旅に賭けていたのだ。


仲間の1人ニキータは恋人を裏切った挙げ句、サンプレスの策略で魔物に襲わせ恋人だった男は左足を失い、田舎に帰った。


もう1人の仲間フルーナはサンプレスの命令でパーティーの金を盗み、罪を親友だったパーティーメンバーの女に被せ、奴隷商に売り飛ばしていた。


時期は違えども全てサンプレスとパーティーを組んだ事によって引き起こされた悪事。

しかし彼女達に罪は無いかと問われたら...


「だから私が最初に行くの、上手く行ったら貴女達も...ね」


「分かった」


「これしか無いか」


掴んでいたマルニータの腕を離す2人。

覚悟を決めA級パーティー、漆黒の薔薇はサイキシの町へ再び歩き始めた。


「「「これは」」」


サイキシの町の着いた3人は言葉を失う。


町の大通りには、


[凱旋!漆黒の薔薇、マルニータ]


そう書かれた横断幕が(ひるがえ)っていた。


「お帰りマルニータ!」


唖然とする3人に初老の男性が近づいた。


「町長さん...」


サイキシに帰る事は事前に伝えていた。

町に戻る事を拒絶こそされなかったが町の人達から無視されるのでは?

そんな不安を抱えていたマルニータにとって横断幕と町長の笑顔は意外な事だった。


「もう町長は息子に譲ったよ、それにしてもよくやった、お前は儂らの誇りじゃ」


「...誇り?」


唖然とするマルニータ。

誇りどころか恥でしかない行動を取っていた自覚があるだけに事態が理解できない。


「こんな所で話もなんじゃ、早く行こうか」


「あの行くって?」


「歓迎会じゃよ、ナザリーさんが用意してくれたんじゃよ。

さあマルニータ、仲間の方達も早く」


町長は嬉しそうに歩き始める。

しかしマルニータの足は動かなかった。


「どうしたのマルニータ?」


「早く行きましょ?」


「...ナザリーおばさんが?」


怯えながら呟くマルニータ、心なしか体まで震えていた。


「ナザリーさんって?」


仲間の1人、ニキータが聞いた。


「マークの...お母さん...」


「え?」


「まさか、そんな人が私達の歓迎会の用意を?」


マルニータとマークの因縁を知る2人も固まる。


(何か裏があるのか?)


(私達は嵌められているのではないか?)


熟練の冒険者であるニキータとフルーナは頭を巡らせ、周囲を警戒するが殺意は感じられない、


「とりあえず行きましょ」


「「マルニータ」」


今更逃げ出す事は出来ない。

覚悟を決めたマルニータは震える足取りで町長の後を追った。


「ここは?」


たどり着いたのは町の広場。

大勢の人々が集まり、豪華な食事が用意されていた。


「マルニータ...」


呆然とする3人に1組の夫婦が声を掛けた。


「お母さん...お父さん...」


それはマルニータの両親。

涙を流す2人の姿に込み上げる物が抑えられないマルニータ。


「...ごめんなさい、お父さんお母さん」


両親にすがり付きマルニータは泣き崩れた。


「どうしたの...ああマークの事ね、残念だけど仕方ないわ」


「そうだよ、ナザリーさんも言っとった、意見の相違から別れるのは冒険者によく有る事だとな」


「違うの、違うの...」


そう泣きじゃくるしかないマルニータだった。


後2話です。

今回で収まりませんでした。

(すみません)

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[一言] 貴様にはマークを想う権利すらねえ
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