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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-4.お近くのオカルト、ご相談下さい
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11.スーパーおかると労働組合、分裂する

「黒の十四軍!」

「き、貴様らは何を企んでいるのだ!」

「災害を弱め、人々に輝き囁くその真意は何だ!」


 実力差は圧倒的。

 そんな相手に包囲されているスーパーおかると労働組合は、もはや叫ぶくらいしか出来る事は無い。


「……」


 黒の十四軍の皆は、彼らの叫びに動かない。

 そして彼らの叫びが尽きた頃、エルフィンが首をかしげて彼らに聞いた。


「何も起こらず終わる。喜ぶべき事ではありませんか」

「は?」

「そこに何の問題が? 誰がそれを行おうが結果が良ければそれで満足ではないのですか? 自らが手を下さねばならない理由でも? 事が起こらなければ困る理由が何かおありなのですか?」


 起こらない事はわからない。だから評価される事は無い。

 それに不満を感じるのは……その者の欲望が満たされないからだ。

 エルフィンが彼らの心に踏み込んだ。


「あなたがたは賞賛が欲しかったのですか?」


 災害の弱体化も、危機を囁くのも別に悪い事ではない。

 しかしスーパーおかると労働組合の者達は、そこに疑念を持つに至った。

 世界への貢献を目的としているにも関わらず、だ。

 自らの目的と合致している者を疑う心……それは、嫉妬だ。


「う、あ、ああ……」

「そうばっさり言ってやるなエルフィンよ」


 図星を突かれてうろたえる彼らに黒軍の長、金剛竜ブリリアントが笑う。

 ブリリアントは長い首を彼らの頭上に伸ばし、上から彼らを睨みつけた。

 大きさは力。スーパーおかると労働組合の皆は怪物最強の存在に震え上がる。

 ブリリアントが口を開いた。


「こやつらは大吉様とは違い、自ら汗して地道に働くことに満足できぬ者達なのだ。自らに従う強き力があれば、それが自らの力でなくとも使わずにはいられない。身の丈に合わないと薄々わかっているからこそ他者の賞賛で埋めたいのだ」


 ギロリ。ブリリアントの瞳が輝く。


「自らを支える柱が自らの中に無いのだよ……なぁ?」


 ブリリアントの言葉に彼らは息を呑み、そして叫んだ。


「なぜだ! ここまでの事をしながらなぜ公表しない!」

「皆に貢献を賞賛されたくはないのか?」


 そんな彼らに皆は言う。


「賞賛など、呆れるほど頂きました」

「我らを何者だと思っているのだ」


 黒の十四軍の軍団長は皆、所属する勢力や種族の中では最強。

 己の同胞を守る切り札だ。


「そうだぜ。そんなもの今さらいらねぇ」

「過ぎた賞賛は厄介なものですからね」

「めん、どう」

「そうだな。あれはキリが無い」

「期待に応えると、もっと大きな期待がかかる。いやはや面倒この上ない」

「借金と同じです!」

「利息付くでしゅ」「雪だるまです」「首が回らなくなるですぅ」

「そしてやがては潰される。だから黒の艦隊はトンズラした」

「失敗するとこてんぱんやもんな。おちおち酒も飲めへん」『『『サケーッ!』』』

「私も『じゃあお前がスパイやれよ』と何度思ったことか……」


 最強であるが故に、他者から過大な期待を受ける。

 そして期待に応えればさらに大きな期待がかかる。

 これが潰れるまで続くと知れば、嫌にもなろうってものだ。


「井出大吉も同じではないのか!」

「「「「「「「「「「「「「「違う」」」」」」」」」」」」」」」


 しかし、大吉は黒の十四軍に期待しない。

 周囲に迷惑にならない限り、好きに過ごせば良いと思っているだけだ。


「大吉様には私達の力など、どうでも良いのです」

「そこの人間達とは違い、我らを力とは見ておらぬからな」

「だよな。困った顔でやめてくれって言うのがホント可愛い」

「大吉様にとっては私達は今もお客様。便利な道具ではありませんわ」

「そう、そう」

「だからこそ、好ましいのだ」

「全くです。しがらみも無く好きに生きるというのは、楽しいものですなぁ」

「遊び放題です!」

「ご飯でしゅ」「おやつです」「お昼寝ですぅ」

「星に降りてのんびり土いじり。まさに贅沢三昧」

「一日中酒飲んでも困らないなんて、天国やでぇ」『『『サケーッ!』』』

「誰の為でもなく自らの為に働き、余暇を楽しむ。素晴らしい事です」


 弱者と強者では見える景色が違う。

 弱者は力を切望するが、それを持つ強者にとって力は面倒を呼ぶ厄介なものであったりするものだ。


「私達の行いの全ては、大吉様と共に生きたいように生きるため」

「そして余暇を大吉様と遊ぶため」

「他の奴らなんざ、知ったこっちゃない」

「その通りです。世界で誰が賞賛されようが、知った事ではありません」

「あそ、ぶー」

「俺達が譲れぬのは同胞と、大吉様のみ」

「そのために万難を排す。これぞ黒島ライフでございます」

「だから災害もこてんぱんです!」

「今日も遊んだでしゅ」「明日も遊ぶです」「ずっと遊ぶですぅ」

「私達にとってこれは休暇」

「明日も酒飲んで昼寝するでぇ」『『『サケーッ!』』』

「まあ、多少は働きますが」

「「「……」」」


 これが格の違い。

 スーパーおかると労働組合の皆はただ、唖然とするしかない。

 エルフィンが彼らに言った。


「ですから私達の行いを、貴方達の成果にして頂いても構いませんよ?」

「……いえ、やめておきます」


 それ以上の事を期待されても出来はしない。

 自分達は今のままでいいや。明かりと雨風よけでいいじゃん。

 それで役に立ってるんだからいいじゃんか。

 と、スーパーおかると労働組合の者は納得するしかない。

 ヘナヘナとその場に崩れ落ちる彼らを前に、エルフィンが皆に号令する。


「黒島オカルト労働組合、スローガン!」

「「「「「「「「「「「「「「食う、寝る、遊ぶ」」」」」」」」」」」」」」


 しかし、納得できない者もいる。

 数日後、スーパーおかると労働組合は納得派と非納得派に分裂した。

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