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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-4.お近くのオカルト、ご相談下さい
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9.スーパーおかると労働組合、貢献する

『爆弾低気圧が今夜から明日未明にかけ本州を横断するようです。大雨による河川の増水、氾濫にご注意下さい。また斜面は土砂崩れの危険がありますので早めの避難を心がけましょう』


 爆弾低気圧。

 急速に発達して台風並みの雨風をもたらす温帯低気圧をそう言うらしい。

 いやぁ、検索って便利だなぁと大吉は思いながらスマホをポケットにしまった。

 現在、黒島は晴天。

 夜は満点の星空が見られる事だろう。はるか彼方の本土で爆弾低気圧が猛威を振るっていても黒島は蚊帳の外。輝き転送ゲートで繋がっていても別世界だ。


「あー、でも向こうのアパートは雨対策しないとな」


 しかし大吉アパートは東京。

 これから大雨が予想されるのなら雨風対策はしておかなければ後が面倒臭い。

 が、雨戸くらい閉めておくかと家に戻ろうとした大吉にブリリアントが言う。


「心配ありませぬ大吉様。警備のガーゴイル達は風雨など寄せ付けません」


 大吉アパートの四隅を守るガーゴイルが雨風対策をしてくれるらしい。


「あいつら、雨といじゃなかったのか」「ひどい!」

「彼らは竜軍ではエリート、部隊を率いる器です」「そうは見えん」「ひどい!」「すまんすまん」


 大吉の言葉にブリリアントが叫び、エルフィンが補足し、大吉がぶっちゃけ、またブリリアントが叫ぶ。

 すぐにブリリアントに報告したりやっほーと叫ぶあたり、下っ端だと思っていたら部隊を率いるエリートらしい。認識を改める大吉だ。


「周りのマンションでガードでしゅ」「守るです」「隕石でもへっちゃらですぅ」

「いや、住人も守ってやれよ?」「「「はぁい」」」


 そして大吉アパートの周囲は幼女達が再構築したオカルトハイテクマンション。

 雨風どころか隕石も完全ガード。オーバースペックだ。

 それなら大丈夫だろうと黒島役場で安堵した大吉に声をかける者がいる。

 いつでもどこでも現れる謎の人、五月あやめだ。


「そうです! 心配ありません大吉さん!」

「……仕事どうしたんですかあやめさん?」

「爆弾低気圧の都合で全社員帰宅です」


 さすが天下のフラットウェスト社。素早く手厚い社員保護だ。


「で、どうして心配無いんですか?」

「大吉さんは黒島住まいになったから知らないと思いますが、今はアパート周辺は災害時の避難所となっているのですよ」

「へ?」


 あやめが自治体ホームページをスマホに出す。

 そこにはこのように記されていた。


『黒の十四軍の東京出張場周辺はあらゆる災害に対応。屋外でも雨風が防げます』

「屋外でも雨風シャットアウト! いたれりつくせり!」

「そんなデタラメな場所、よく避難所に指定したなぁ……」


 さらに電気ガス上下水道は周囲の状況に関係無く使用可能。屋外でも空調完備。ネット接続可能。マンションの壁はテレビや電子レンジや給湯器や冷蔵庫といった機器として利用可能。その他、念じると色々出来ますと書いてある。

 さすがオカルト避難所、わけわからん。

 とにかく大吉が心配する事は何も無いらしい。

 残った心配事は一つだけ。

 スーパーおかると労働組合の動向だ。

 余計なお世話やありがた迷惑という言葉があるように、貢献というのは難しい。


「あいつら、大丈夫かなぁ」


 しかし、呟く大吉にエルフィンとブリリアントは笑う。


「色々役には立てると思いますよ?」

「その通りだな。ま、彼らが思った貢献とは違う事になるだろうが」

「そうなの?」


 笑う二人に大吉は首を傾げる。

 そして、夜が来た。




 その日、昼から皆が災害対策を行っていた。

 災害対策はどこに雨風が集中するかわからないので難しい。

 人も物も時間も有限。

 それを被害が出そうな場所に振り分けねばならない。悩み所だ。

 しかしこの日、皆は誰かに指示されたかのようにキビキビ動いていた。


「ここ、土のうが必要だな」「なんかピキーンと来た」

「俺達、ここ最近妙に冴えてるな」

「イタコパワーだ」「イタコパワーだな」「デタラメの次はイタコか」「俺らもオカルトに慣れてきたなぁ」「これが新タイプって奴か」


 皆は口々にそのような事を言いながら準備を行い、夜を待つ。

 そして日が暮れ、夜と共に爆弾低気圧がやってきた。

 激しい風と雨が襲ってくる。

 しかし大雨で水が堤防を越える事は無く、住民は自然に動いて水路を塞ぐゴミを取り、土のうを積み、弱い場所をピンポイントで強化する。

 輝き弱体化と輝き虫の知らせの結果だ。

 皆が災害が発生しませんようにと願いながら川や斜面を睨む中、スーパーおかると労働組合のオカルトが現れた。


「スーパーおかると労働組合の者です。何かお困りの事はありますか?」

「うーん、今のところ間に合ってるなぁ」

「えーっ……ここもですか?」


 しかし、オカルトが力を振るう機会は無い。

 もう何カ所も回っていたのだろう、途方に暮れるオカルト達。

 誰かが言った。


「じゃ、ちょっと輝いてくれよ」

「へ?」


 その提案に皆が賛同する。


「それはいい」「夜、暗いのは怖いからなぁ」「作業もはかどるし」「黒の十四軍は無意味に輝いてたから、疲れる事じゃないんだろ?」「あとは雨よけとか風よけとかしてくれると嬉しいなぁ」

「わ、わかりました」


 ぺっか、ぺっか、ぺっか。

 照明、雨よけ、風よけ。

 さながら移動シェルターだ。


「おお! 明るいとよく見えるなぁ」

「困った事があったら遠慮無く頼むから、無理するなよー」

「は、はい」


 しかし、困った事は起こらない。

 爆弾低気圧は夜通し暴風と豪雨をもたらしたが、大きな被害を出す事も無く去っていった。

 朝のニュースはその事でもちきりだ。


『今回の豪雨では、幸いな事に河川の氾濫や土砂崩れなどはありませんでした』

『先日貢献を表明したスーパーおかると労働組合は、照明や風雨よけを担当』

『安全な作業が出来たそうです』


 スーパーおかると労働組合、貢献する。

 皆が思っていた貢献とはまるで違うが世間は評価。

 しかしその貢献に納得出来ない者達がいた。


 スーパーおかると労働組合である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地味な保守って大事なんですけど地味なんですよね。 そう、地味なんですよ…
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