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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-4.お近くのオカルト、ご相談下さい
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6.黒島オカルト労働組合、分裂する

「積極オカルト派か」

「その通りです」


 夕方、黒島大吉アパート大食堂。

 呟く大吉にAが頷いた。 

 少し早めの夕食に揃うのは黒の十四軍の軍団長と大吉と谷崎。

 そして雄馬リリィ組と竜二ノエル組と暁の艦隊ピロシキ。ついでにあやめだ。


「あやめさん、席を奪ってしまってすみません」

「いえいえ。お仕事おつかれさまです」

「いや、もともとAの席だから」「ええっ?」「ええっ、じゃありません」


 いつもAの席を使うあやめ、ゲスト席に移動。

 報告の前に『いただきます』をした皆は、Aの言葉に耳を傾ける。

 もっしゃもっしゃと炭を食べる音が響く中、Aは報告をはじめた。


「現在、九十九名のオカルトと人間の参加を掴んでおります。内訳は人間四十九名、人族二十名、獣人族十二名、サキュバス八名、インキュバス六名、竜とグリフォンとミノタウロスと屍がそれぞれ一名。中心となるのはスーパーおかると新町店の従業員で、仕事で気心が知れた者達が休憩時間に意気投合。新たな労働組合の結成を準備しております」

「あー、休憩時間の会話で盛り上がっちゃったか」


 大吉にも経験がある。

 休憩時間に同じような考えの者が集まると、デカイ事してやろうみたいな気持ちになるものだ。

 大抵は店長や上司にガツンと言ってやる程度なのだが、時には会社を飛び出すような者もいる。

 賛同や激励や煽りは不満や欲望を行動に変えるトリガーなのだ。


「目的は?」

「オカルト力を積極的に使い、世界に貢献するとの事です」

「うわぁ……」


 同じような事を言っていた雄馬が呻く。

 Aはそんな雄馬に軽く頭を下げた後、報告を続けた。


「ですが私の見立てでは、黒の十四軍のどの軍団長にも及びませんね」

「いや、こいつらデタラメ過ぎて参考にならん。ピロシキと比較してくれ」

「暁の艦隊となら全員で当たれば良い勝負ではないかと」

「なるほどなぁ」


 大吉がサービス開始から終了まで起きる間も惜しんで一つのタイトルを寝ゲーしまくったせいなのか、それとも皆が努力したせいなのかは知らないが黒の十四軍は現在最強。

 黒の艦隊と暁の艦隊は見た目こそ似たようなものだが艦長やセカンド達、艦に宿るグレムリンの能力に大きな差があるらしい。あのまま殴り合いになっていたら黒の艦隊の一方的こてんぱん勝ちだっただろう。

 さすがオカルト。見た目ではわからない。


「大吉様。今、私を見てデタラメだと思いましたね?」

「それはいつも思ってる事だから違うな」「ええっ!」


 隣のデタラメ一号の言葉に大吉は首を振り、安堵の息を吐く。

 止めようと思えばいつでも止められる。そこだけは安心だ。


「雄馬や竜二達も誘われたのか?」

「いえ」「誘われてはいません」

「私は組合役員してますし」「私は黒の十四軍の下っ端と思われていますから」


 雄馬と竜二が首を振り、リリィとノエルが大吉に説明する。

 リリィは組合役員、ノエルは惑軍フォルテ預かり。

 黒の十四軍の下っ端と思われても仕方が無い。


「ピロシキは?」

「昨日誘われましたが、提督は今の組合方針に満足しておりますので断りました」

「そうか」

「それに我々暁の艦隊は今もロシアに太陽光を反射しておりますから、よその事に首を突っ込みたくありません。オカルト過度利用は国際条約違反なんですよね?」

「まあ、今となってはガバガバだけどな」


 実力派オカルトの行動は実力派オカルトにしか止められない。 

 たたり神と同じ。人間は願うしかないのだ。

 今度はセカンドが口を開く。


「黒と暁の両艦隊は小惑星の軌道調整やデブリの回収を日常的に行っている。続けてもいい?」

「人間がどうしようも無い事は未然に処理するしかないだろう。後で恨まれるし」


 出来る事を奪えば余計な事をするなと邪険にされる。

 出来ない事を傍観すれば出来るのになぜやらないと恨まれる。

 現金なものだ。


「すると、そろそろ動きそうな地殻の歪みも矯正した方が良いですか?」

「……」「それは是非! 是非お願いします!」


 エルフィンの言葉に絶句する大吉、叫ぶ谷崎。


「では輝き分割払いで。家屋が耐えられる程度の千回払いにいたします」

「……どんだけデカいの?」


 千回払い。家屋が耐えられる程度のエネルギーの千倍。

 一括払いと千回払いでマグニチュードが2ほど変わる。日本はいつ大地震が起こってもおかしくないと言われているが、とんでもない爆弾に震え上がる大吉だ。


「谷崎さん、後で支払いスケジュールを相談しましょう」

「お願いします。ありがとうございます!」


 谷崎、すぐにスマホで上司にメール。

 規模と日時がわかれば対策出来る。だから観測や予知技術に必死なのだ。


「報告は以上です……ん?」


 全てを報告し終えたAの胸がペコペコ輝く。


「Aだ……なに? 明日? わかった」

「どうした?」

「大吉様、彼らは明日組合結成を公表するそうです」

「いきなりだな」

「少し前の休憩で決まったそうです。情報が遅れてしまい申し訳ありません」


 Aが頭を下げる。

 エルフィンが大吉に聞いた。


「大吉様、止める事も出来ますが……いかがいたしますか?」

「止めても、もっと大きな集団を作って繰り返すだろうなぁ……」


 今回は雄馬とは違い集団。説得で皆を納得させるのは難しい。

 そして力で止めても諦める事は無いだろう。次はもっと多くのオカルトを集めてくるに違い無い。


「谷崎さん、条件を付ける事にしましょう」


 大吉は谷崎と相談し、条件を決めた。

 ひとつ、災害に限定する事。

 ふたつ、未然に防ぐ事。

 そして次の日、大吉は現れた者達にその条件を飲ませ、しっかり守ってくれよと祈りながら見送った。


「エルフィン、どう思う?」

「彼らの覚悟次第でしょう」


 かくして、黒島オカルト労働組合は分裂したのである。

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