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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-4.お近くのオカルト、ご相談下さい
87/142

4.スーパーおかると、新町に開店

「井出さん、ご相談があります」


 夜、黒島大吉アパート大食堂。

 夕食中、谷崎が大吉に声をかけてきた。

 大食堂での食事はただ食べるだけではない。

 黒島運営に関する様々な相談に対して方針を決定する重要な場でもある。

 ほとんどが大吉様と遊びたいだの散歩コースだの酒だのといったどうでも良い事ではあるのだが、参加する者が軍団長ばかりの場では超重要。オカルトハイパワーが拗ねると世界がこてんぱんの危機なのだ。


「なんでしょうか?」


 まあ、谷崎がそんなアホな事を言うとは大吉は全く思っていない。

 だからここは真面目に聞こう。

 そんな事を大吉が思っていると黒軍のいつものメンツが騒ぎ出す。


「大吉様、我らと態度が違う!」

「俺達に対してもそのくらい真面目に聞いてくれよぉ!」

「くれ、くれ」

「そうですぞ大吉様。私共にも楽しい黒島計画の一つや二つはございます!」

「バウル悲しい!」「そうだねにーちゃん!」

「お前らとこれ以上遊んでたら一日二十四時間じゃ足りなくなるからダメ」

「「「「「「ひどい!」」」」」」

「大吉様、ここは輝き不思議時間で「やめて」ええっ!」


 そして他の者達、ぶっちゃけ黒軍の奴らの相談は大体アホな事。

 態度に出る大吉だ。

 ついでに時空を歪めるエルフィンの輝きを止めた大吉は、谷崎の言葉を待つ。

 大吉の予想通り、谷崎の言葉はまともな相談だった。


「新町の皆さんがスーパーマーケットを作りたいと言っております」

「スーパー? お店ですか?」

「はい。農業や漁業、畜産も順調に生産高を増しており、食料自給率は百パーセントを超えました。ですので生産業からサービス業へと仕事を変えようと考えている者が増えているのです」

「なるほど」

「ついでに様々な品を置きたいので黒豆と小麦とイカの生産比率を下げましょう」

「我が減黒は許さぬと伝えたではないか!」

「いいですよ」

「「「「「「ええーっ!」」」」」」

「ありがとうございます」


 減反ならぬ減黒。

 谷崎のついでの相談、ブリリアントが拒絶しても大吉はあっさり許可。

 黒軍に直接言って却下された事柄をついでに混ぜてくるあたり、谷崎の黒島生活も慣れたものだ。


「大吉様、我らに冷たい!」

「おぅ。全鬼軍が泣いちまうぜ」

「くろ、くろ」

「そうでございます! 黒豆とイカスミパスタは黒島ソウルフードですぞ!」

「バウル悲しい!」「そうだねにーちゃん!」

「色んな炭食材を味わってこそ炭グルメってもんだろ?」

「「「「「「納得!」」」」」」


 そして大吉もオカルト扱いに慣れたもの。

 炭グルメと何となく高級感溢れる感じにすれば皆も納得。大吉全肯定。

 大吉は谷崎と相談を続ける。


「で、品揃えはどんな感じにしますか?」

「普通のスーパーと同じような感じで良いと思います。文房具や袋やトレーなど食材以外の品物はミリアさんにお願いしましょうか」

「店舗もわてが建てるさかい、うまい酒よろしゅうな」『『『サケーッ!』』』

「報酬で買って下さい」

「お前ら、置いて欲しい品はあるか?」


 大吉、他の皆にも聞いてみる。


「「「「「「炭! 黒豆! イカ! パスタ!」」」」」」

「はいはい。黒島ソウルフードね」


 フォルテを除く黒軍とパウロは黒食材を主張。


「おいしければいいでしゅ」「はいです」「ごちそうさまですぅ」

「強いて言えばお菓子コーナーでしょうか」「「「おかし!」」」


 アイリーン、マリー、エミリとセカンドら食べるだけ組はお菓子コーナー要求。


「酒コーナーは必須やで!」『『『サケーッ!』』』


 ミリアとグレムリンの酒組は当たり前のように酒を要求。


「エルフィン、フォルテ、エリザベスは?」


 そしてエルフィン、フォルテ、エリザベスら普通に料理組は首を振る。


「新町は遠いですから、今までの東京スーパーを使います」

「輝き転送ゲートがありますから東京スーパーの方が近いですわ」

「じいさん山の畑仕事の帰りに揚げたてコロッケが美味しいのです!」

「……デスヨネー」


 新町より輝き転送ゲートの先にある東京スーパーの方が近い。

 さすが北海道より広い黒島である。


「Aは……今日もいないか」

「はいはい大吉さん! 惣菜コーナー! 惣菜コーナーを作りましょう!」

「あやめさんも東京スーパーの方が近いのでは?」

「この席に座った今の私は諜報軍の長! 皆はお手軽料理を望んでいます!」

「輝き一発で作れそうですけど」

「輝いたら目立つではありませんか!」

「いや、いつも輝いてるじゃん」

「井出さん、弁当コーナーも作りましょうか」


 そしてAの席を陣取るあやめ、惣菜を主張する。

 ついでに弁当コーナーを追加する谷崎だ。

 そんなこんなでスーパーの建設が始まった。


「ちけーい」「へんこうー」「えーいっ!」


 ロボ陸海空軍、イカ以外の漁場と養殖場を作る。


「にーちゃん、マグロ持って来たよー」

「ちゃんと公海上から持って来ただろうな? あと、根こそぎはダメだぞ?」

「バッチリ公海上。間違いありません。次はウナギの稚魚を確保します」

「本土の漁協から養殖用の稚魚を確保しました」


 バウル、パウロ、そしてセカンドに谷崎。

 養殖する海産物を確保する。


「ああ、俺の黒豆畑が」「俺の小麦畑があぁぁぁ」「振り返るなバカ野郎! 俺達は新たな黒の探求者なんだ!」「まだ見ぬ黒か」「黒の道は厳しいぜ!」


 黒軍農業者、よく分からない事を言いながら育てる農作物を変更する。


「わては店舗建てるでー」『『『サケーッ!』』』


 生産軍、スーパーを機材ごとズバンと建てる。


「いらっしゃいませ!」「「「いらっしゃいませ!」」」


 惑軍、店員希望オカルトに接客と加工と調理を指導する。


「相変わらずすげえなぁ」

「はい」

「大吉様! 散歩!」

「おおー、すごいですね大吉さん!」


 大吉その他、いつものように犬エリザベスと散歩。

 そして谷崎の提案から一週間後、スーパーおかると新町店が開店した。


「品揃えは東京のスーパーに劣りますが、価格はこちらの勝ちですね」

「食材の鮮度も素晴らしいですわ」

「ショーケースのライトに秘密があるんや。輝き新鮮やで」

「何その謎ライト?」

「お惣菜も美味ですね大吉さん!」


 感心するエルフィン、フォルテ。

 自慢するミリア、そして首を傾げる大吉。

 あやめは惣菜試食コーナーでご満悦だ。


「肉も安いです!」

「酒もこれから銘柄バンバン増やすでぇ」『『『サケーッ!』』』

「お菓子もありましゅ!」「おやつは三百円です」「バナナは入らないですぅ」

「大人気。クーゲルシュライバーから菓子生産艦を降ろした甲斐があった」


 エリザベスは肉。ミリアは酒。

 アイリーン、マリー、エミリとセカンドは菓子をかごに入れる。


「食品コーナーに炭が無いのだが?」

「この店、惣菜の黒豆とイカスミパスタくらいしか黒がねーじゃねーか」

「くろ、すく、ない」

「そうですぞ。炭が無いのはいただけませんなぁ?」

「「「炭は食品ではありませんので」」」


 そして首を傾げるブリリアント、ガトラス、ボルンガ、ビルヒムに口を揃えるオカルト店員。


「何故だ!?」

「食品では無いからです」「というか、スーパーに炭は無いよな」「消臭剤として置いてある位かな?」「買うならホームセンターとかだよな」

「「「「ひどい!」」」」

「まあまあ黒軍に皆もがっかりせんと。頼まれたマシンはバッチリ完備やでぇ」


 ミリアに案内されたレジの先には袋詰めテーブルに白と黒の電子レンジがずらりと並ぶ。

 機材は全てミリアら生産軍製。ケーブルもコンセントも無い謎レンジだ。


「なになに? ボタンを押して二秒?」

「せや。食材判定に一秒、あっために一秒や。冷やす事も出来るでぇ」

「……電子レンジじゃないの?」

「輝き調理機や」『『『ペッカー!』』』


 電子レンジではなかった。謎の万能調理マシンだった。


「あと、黒塗りの奴は黒軍ご期待のマシンやでぇ」


 ミリアが購入した弁当を黒塗りに入れ、スイッチを入れる。

 チーン!

 瞬く間に炭火焼き弁当、じゃなかった炭弁当の完成だ。


「弁当が炭化した!」

「「「「「「ミリア、ナイス!」」」」」」

「おおきにー」

「何がナイスだ炭じゃねーか!」


 黒い電子レンジ、まさかの瞬間炭化装置。

 結局全部謎マシン。改めてオカルトすげえと思う大吉だ。


「炭だ」「炭だよ」「相変わらず悪食だな」「あいつらの食生活、信じられねぇ」

「「「「「「何おぅ!」」」」」」

「いえ、この炭なかなか美味しいですよ」「リ、リリィ……」


 さすがのオカルト達もドン引き。

 リリィだけが黒軍に賛同してバリバリ食べていた。


「入れない! バウル悲しい!」「要塞世界樹差別だ!」

「枝葉で諦めろ」


 山より大きなバウルやパウロは当然ながら入店拒否。

 店の外から枝葉を延ばして買い物だ。

 とにかくもスーパーおかると新町店、無事開店。 

 これで新町の生活も豊かになるだろうと、大吉は店を後にした。

 なお、弁当コーナーの主な利用者は谷崎だ。

 役場は今も人手不足。本土から毎日のように送られてくる山のような書類を処理する為に深夜残業も当たり前。

 相変わらずのオカルト人身御供だ。


「私にもオカルト来ませんかねぇ。バシッと書類を手伝ってくれるオカルトが」


 深夜、黒島役場。

 残業弁当を食べながら、エクソダスの購入を検討する谷崎であった。

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