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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-3.オカルト、ぞくぞく
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10.茶番会戦

 暁の艦隊の言葉ビームの中で、パラボラアンテナがひしゃげていく。


「パラボラアンテナが!」

「やっぱオカルトにムチャ言っちゃいけないんだよ! 常識違うから!」

「日本みたいに迷惑かけずに遊んでいて下さいが一番良かったんだーっ!」

「たたり神だー!」


 通信施設で働くロシアの人々が叫ぶ。

 が、しかし……輝きが収まると、パラボラアンテナのどこにも損傷は無い。

 輝く前そのまんまだ


「あれ?」「壊れたよな?」「さっきビーム攻撃で壊れたよな?」


 ロシアの皆が首を傾げる。

 その原因は、宇宙にあった。




「輝き復元しておきました!」

『あ……ありがとうごさいます』


 宇宙。

 艦橋でぺっかと輝くエルフィンに、ピロシキが頭を下げた。

 こてんぱん時間、わずか0.5秒。

 元に戻ったパラボラアンテナはサビや塗料ハゲまで完璧元通り。

 きっとロシアの皆はどうせなら新品に復元してくれよと思っている事だろう。不要な復元てんこもりだった。


「言葉は時に相手を傷つけるという事を忘れてはいけません。今回は幸いにして誰もこてんぱんにはなりませんでしたが私達はこの世界ではデタラメという事を肝に銘じなさい」

『すんません。ご迷惑をおかけしました』


 デタラメの中のデタラメがデタラメに説教。

 比喩ではなく物理破壊をもたらす言葉の強さに呆れる大吉だ。

 やっちまった後で恐縮するピロシキの言葉ビームは現在ヘロヘロ。

 しかしコレでも地上から見れば戦っているように見えるだろう。

 大吉は聞いてみた。


「なんか太陽光をロシアあたりに反射していたみたいだけど、何してるんだ?」

『こちらの世界に提督を訪ねたところ仕事を頼まれまして』

「仕事? オカルト制限条約って知ってるか?」

『伺いましたがこれは抵触しないと言われました』

「えーっ……一体どういう仕事なんだよ?」


 宇宙空間で作業してるだけでアウトだろ。

 と、大吉が首を傾げるとピロシキが言葉ビームをぺっかと飛ばす。


『鏡持ちです。そこにいるだけでいいから、と』

「なるほど。路上で看板持って広告する人と同じ扱いなのか」


 一定の太陽光を定位置に反射させる仕事。

 それをただの鏡持ちとして扱うなら確かに報酬も高くならないだろう。

 お前ら宇宙住まいだろ? ちょっと鏡でここ照らしてくれよ。みたいなノリだ。

 労働場所が宇宙というだけで論外なのだが。


『そして地上では鍬を振るって地面を耕しております』

「そっちはただの労働者扱いだな」


 そしてもう一つはただの人力。意外とオカルト未使用。

 言い逃れの部分をそれなりに作っているのはさすが大国と言ったところか。

 しかし言い逃れの為に報酬は条約に抵触しない低賃金。バランスはすこぶる悪い。

 労働の報酬を決めるのは仕事を作る側。

 それを働く側が選ぶかどうかで報酬が適正なものになっていくものだが、オカルトと大吉達人間とは常識が違う。

 それだけのパワーがどこから来るのか知らないが楽に出来てしまう。だからいつまでも適正にならないのだ。


「で、休みは?」『ありません』「ないの?」

『強いて言えば今が休みでしょうか……太陽光を反射しているだけなので。あぁ、休みは地上で日なたぼっこしたり家庭菜園とか作りたい』

「「「わかる!」」」


 ぼやくピロシキに黒の艦隊の皆が頷く。


「宇宙暮らしだと気が滅入るよな」「そうそう。全周囲警戒しないといけないし」「その点地上は上だけ気にしてりゃいいから楽だよな」「よほど大きくなきゃ星が盾になってくれるし」「小さいのは大気が勝手に砕いてくれるし」

『そうですよね。休みくらい星の上でのんびりしたいですよね』

「わかるぞ、その気持ちよくわかる」


 ぺっかぺぺかぺー。言葉ビームが両者に飛び交う。

 黒と暁の宇宙艦隊。星を盾扱い。

 そして星を盾にして気楽に休みたい。

 暁の艦隊のささやかな願いに怪獣組も頷いた。


「俺らにだって休みはあるのにな」

「そうだねにーちゃん」

「我らも時には畑仕事の手を休めたいものよ」

「そしてのんびりしたい。その気持ちよくわかるぜ」

「わか、るー」

「畑仕事、火力、そしてぶるるん。毎日忙しいですなぁ」

「いや、お前らは毎日遊んでるようなものだろ?」

「「「「「「ひどい!」」」」」」


 かく言う大吉も毎日の仕事は一時間かそこら。似たようなもんだ。

 営業しようにも相手が自衛隊だけという特殊環境では仕事の増やしようがない。店長待遇の給料が申し訳ない大吉だ。

 そんな大吉にリードを持たれたセカンドがピロシキに提案する。


「でしたら黒島に移住されてはいかがですか?」

『いいの?』

「大吉様、よろしいですよね?」

「いいんじゃないか? うちにも見限った奴らがいるしな」


 彼女達は今、黒島で元気に働いている。

 夢と現実のギャップでオカルトにブチ切れられると世界が困る。

 のほほんと遊んでもらう程度が良いのだ。


『そ、それでは我らの提督も……いいかな? 我らが来てからというもの、様々なしがらみでご苦労なされていてな』

「それでは黒の艦隊との戦いで敗れた事にいたしましょう。みなさん、黒島に行きたいかーっ!」

『『『おおーっ!』』』

「週に二日は休みが欲しいかーっ!」

『『『欲しいーっ!』』』


 言葉ビームが乱れ飛ぶ。

 宇宙では音を伝える物質があまり無いので音は無い。

 しかし拡散したエネルギーが物質にぶち当たれば音は出る。黒の艦隊の言葉ビームで喜んだ暁の艦隊の宇宙船が喜び爆発したエネルギーが地球に届き、ロシア上空に爆発音が響いた。


 ちゃばーん!


「ちゃばーん?」「茶番?」


 何とも奇妙な爆発音に、ロシアの皆が首を傾げる。


「あんな爆発音するのか?」「わからん!」

「撃破された宇宙船がピチピチしてるけど?」「わからん!」


 しかし現在の地球の技術でこれを茶番と見抜く事は不可能。実力者の振る舞いはある程度の実力が無ければ理解できないものなのだ。

 ましてやオカルトの振る舞いなど理解できるはずもない。

 ちゃばーん、ちゃばーん!

 艦隊は攻撃と爆発を繰り返し、やがて暁の艦隊が降伏した。

 黒の艦隊、圧倒的茶番勝利。

 そして黒島居住、週休二日、八時間労働、そして提督の黒島転勤を獲得する。

 敗れた暁の艦隊と提督は負けたからしょーがないんですよと、ニコニコ笑いながら黒島へと移住した。


「やっぱ星の上はいいわー」「安心感が全く違うわー」「素晴らしい」


 彼らは朝になったら宇宙に上がって太陽光でロシアを照らし、夜になったら黒島に帰って寝る。

 暁の艦隊、負けて大満足。


「やっぱオカルトにはオカルトかぁ」

「俺らじゃ、あいつらが暴走しても対応出来ないからな」

「永久凍土を照らす仕事は続けてくれるみたいだから、これはこれでいいか」


 そしてロシア側も手に負えない部分を黒島になすりつけて大満足。


「何? 貴様ら黒がわからんのか!」

「いや普通炭は食わんだろ!」

「信じられねぇ!」「それはこっちのセリフだ!」

「やめれ」


 そして大吉は色々なすりつけられて苦労する。

 いつもの黒島であった。

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― 新着の感想 ―
[一言] パロディウスのメガホンビームかな?
[一言] シベリアの異常な高温はこいつらのせいか
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