8.日曜も散歩の日
「今日は宇宙軍の日、黒の艦隊散歩の日です!」
「……はいよ」
日曜朝、黒島大吉アパート。
朝食でぺっかと輝くセカンドに、大吉は目玉焼きを食べながら返事をした。
日曜は黒軍以外の散歩の日。
いつも一緒に散歩しているセカンドだが散歩のルートは犬まかせ。
日曜はセカンドや幼女達、ミリアやグレムリンが散歩の主役。大吉を好きに連れ回せる貴重な日だからセカンドの意気込みも半端無いのだ。
「日曜はお休みデー。黒の艦隊の皆も宇宙船も喜ぶ。さあ大吉様今すぐ散歩に宇宙レッツゴー」
「え? 宇宙行くの?」
散歩に宇宙。これがオカルト。
「宇宙船もたまには散歩。これ重要」
「宇宙船って、散歩必要なの?」
「時々動かさないと調子が悪くなる」
「ああ、ぶるるんもしばらく乗らないと調子悪いもんな」
動くものは時々動かしておかないと調子が悪くなるものだ。
「そして太陽付近で我慢大会。これも重要」
「宇宙船って甲羅干しが必要なの?」
「時々負荷試験しないと重大問題に発展しかねない」
「ああ、ぶるるんの出発前点検みたいなもんか」
大吉も毎日点検は行っている。
なお、黒島転勤となった今はグレムリンが毎日キレイキレイしてくれるのでぶるるんはすこぶる好調。毎日気分良く点検している大吉だ。
「ん? お前らってグレムリン整備じゃないのか?」
「調子、悪く、なる!」
「お、おう……酒とか必要なんだな?」『『『サケーッ!』』』
大吉はどうしようかと考え、他の日曜散歩組に聞いてみる。
「アイリーン、マリー、エミリは宇宙でいいか?」
「いいでしゅ」「おそら、ばびゅんです」「宇宙でロボを体操ですぅ」
「ミリアは?」
「わては楽しく酒が飲めればええでぇ」『『『サケーッ!』』』
「Aは……いないか」
「私はいいですよ大吉さん! レッツディープスペース!」
「ディープスペースって太陽系もそうなの?」
諜報軍の席に当たり前のように座るあやめの言葉に、首を傾げる大吉だ。
まあ、Aら諜報軍は神出鬼没。
来たければこっそり参加してくるだろう。
「私もいいですよ?」
「そうですわね。たまには宇宙も良いでしょう」
「今日はクーゲルシュライバーを散歩です!」
エルフィン、フォルテ、エリザベスも賛成。
大吉は決定した。
「じゃ、宇宙散歩にするか」
「そうこなくては。黒の艦隊、散歩出撃!」
ぺっか。セカンドが輝き命令を下す。
行くぞ! 急いで艦長! 遅いぞてめぇら! ぬぅおおおお!
宇宙町から艦長達の叫びと駆ける足音が響き、どこに置いていたのか宇宙船がバンバン飛んでいく。
「……なにあれ?」
「緊急出撃訓練」
「いや、散歩だからね?」
散歩なのに訓練。
前のめりなセカンド達だ。
「というか輝き転送しないの?」
「常に複数の移動手段を確保する。超重要」
「あー、予備ぶるるんは必要だよね」
故障はいきなり起こるもの。
業務でぶるるんを使う大吉には切実な問題だ。
大吉達がのんびり朝食を食べる間に宇宙町に怒号が響き、ばびゅんと宇宙船が飛んで行く。
「ごちそうさま」
「……訓練はなかなか良い結果です」
しかし大吉が朝食が終わる頃には、すっかり静かな宇宙町。
さすが宇宙軍。素早い対応。
セカンドは満足顔で皆と朝食の後片付けをして、大吉に言った。
「では、私達は輝き転送で出発です」
「えーっ……セカンド、お前は訓練しなくていいのかよ?」
「訓練は艦長が対象。私はクーゲルシュライバーが本体だから対象外」
「あー。端末扱いなのね」
宇宙船が本体なのだから分身がいなくても大丈夫。
艦長の地上暮らしも大変だなぁと思う大吉だ。
そんなこんなで大吉達が散歩の準備をはじめる中、怪獣組が動き出す。
「ブリリアントよ、俺らも行くか」
「そうだなバウル。今回は輝き圧縮とか命の危機は無いからな」
「おぅ、行こうぜ宇宙」
「いく、いく」
「行きましょう! たまには人の散歩に付いていくのも良いものです!」
「……たまには?」
大吉の行くところやたらと行きたがる怪獣組の言葉に、首を傾げる大吉だ。
「というかお前ら、宇宙大丈夫なの?」
「「「「「当然」」」」」
問いかける大吉に自身満々答える皆。
ブリリアントが大吉に言う。
「たかが空気が無いだけではありませんか。我慢すれば良い事です」
「我慢なの?」
「自衛隊の皆に見せてもらった怪獣映画、宇宙怪獣が呼吸をする為に地球に現れる所は良く出来ておりました。さすが大吉様の世界でございます」
「あいつら息継ぎしに地球に来てたの?」
宇宙怪獣、我慢しながら宇宙を飛ぶ。
そして息継ぎに地球に寄る。
初めて知った事実に呆れる大吉だ。
「それでは、輝き転送」
ぺっか。
セカンドの言葉に皆が輝き、大吉達はクーゲルシュライバーの艦橋に移動した。
怪獣組と幼女ロボはクーゲルシュライバー表面に移動する。
転送する時に着替えたのだろう、艦橋のセカンドは首輪にリード。
フォルテのお散歩スタイルだ。
「……セカンド、フォルテの真似しなくていいから」
「これはクーゲルシュライバーのリード。私はクーゲルシュライバーの分身なので私が首輪とリードしててもおかしくない」
「そうなの?」「そう」「そうなのか」
大吉、セカンドのリードを握る。
ちなみに他の宇宙船もセカンド達が艦長にリードを握らせようと頑張っている。
サキュバスの愛への飽くなき追求はセカンド達にも伝染していた。
「くっ……私にも本体があれば大吉様にリードを持って頂けますのに! 新たな愛の追求ができますのに!」
フォルテ、謎の悔しがり。
そしてフォルテと同様、クーゲルシュライバーの近くで悔しがる者達がいた。
暁の艦隊だ。
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