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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-3.オカルト、ぞくぞく
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7.のんびり生活うらやむ者

「なんか最近、空がよく輝いてるよなぁ。あれはどこのオカルトだ?」


 昼、麻田宅。

 ぺっかーと輝く空を見上げて麻田がつぶやいた。

 謎現象は即オカルト。

 さすがオカルト先進国日本。中枢もオカルトずっぽりだ。

 そんな麻田に安住が答えた。


「ロシアです。クーゲルシュライバーサイズの艦隊が太陽系に訪れ、宇宙から太陽光を反射して永久凍土を農地に変えるプロジェクトを始めたんですよ」

「おいおい、国際条約ガン無視だな」

「我が国も指摘したのですが逆に黒島の事で批判を受けてしまいまして……海流や地殻は変えても良いのか? いずれ気候や海産物も変わるぞ? と言われました」

「そりゃそうだ。ちぃとやり過ぎたか」

「地殻はテラフォーミングのプロが行ったので大丈夫だと答えておきました」

「お前も言うようになったなぁ、安住」


 島が出来れば海の流れは変わる。

 当然気候や海産物の分布も変わる。自然は少しずつ変わっていくものなのだ。


「条約に退去時に元に戻す条項を追加せんといかんなぁ。輝き復元だっけ? エルフィンなら黒島を元の海に戻すくらいぺっかーでできるだろ」


 まったくオカルトだ。


「賃貸アパートみたいですね」

「アパートの年月による劣化は大家責任のはずだがな」


 借りた者は元通りにして返せ。

 まあ当たり前の事ではある。


「まぁ、オカルトを手にしたどこかの国がはっちゃけるとは思ってたけどな」

「条約があっても従わないでしょうねぇ」

「それが普通だろう。うちの大吉が名前通りおめでたいんだよ」


 永久凍土だったり砂漠だったり高地だったり。

 国土が広い国も色々と悩みはある。オカルトで解決出来ればどの国だって手を出すだろう。黒島があろうが無かろうが手を出す事に変わりはない。


「地球の傾きとか変えられたら厄介ですね」

「日本が常夏の国になっちまうな。谷崎の話じゃ先日ブリリアント一家のやらかしをクーゲルシュライバーが修正してたそうだし、同じ宇宙艦隊なら可能だろうな」


 ぺっかー……安住と麻田は輝く空を見上げて茶をすする。

 黒島の連中がいなければ即座に傾きを変えていたかもしれない。

 オカルトの敵はオカルト。相手の実力を知るまで派手な事はしないだろう。

 実力を知ったらどう動くか分からないが。


「黒島の皆さんより強いオカルトだと厄介ですね」

「まぁ、何とかなるだろ」

「またまた、そんなのんきな事を」


 しかし麻田は引退してるからのんきなものだ。

 見上げる空のぺっかと輝く光のひとつひとつがロシアのオカルト宇宙艦隊。

 地球はどこも丸見えだ……そう、黒の十四軍の黒島も。


「皆が苦しければ我慢できても楽しんでる奴らがいると我慢できねぇ。世の中ってのはそんなもんだ。オカルトも変わらんだろ」


 麻田が言った通り。

 新たに現れた宇宙艦隊は宇宙から黒島を眺めて歯ぎしりしていたのである。




「解読できたか?」

「はい」


 地球、静止衛星軌道上。

 太陽系に現れた『暁の艦隊』の宇宙労働者達は巨大スクリーンを睨んでいた。

 彼らが監視しているのは日本国、東京都黒島。

 地球に訪れた彼らがまず注意したのはやはりオカルト。持てる能力の全てを使って黒島監視に余念が無い。


「『おいでまーせー、おいでまーせー、くろーしまー』だそうです」

「くっ……あいつら、今日も楽しそうに踊りやがって!」

「俺ら今日も宇宙残業だってのに!」


 宇宙労働者達が悔しがる。

 畑仕事、イカ養殖、怪獣ごっこ、食事、昼寝、散歩、謎の踊り。

 宇宙空間から太陽光反射を緻密にコントロールしたり、皆で地を耕して得られた実りを誰かに捧げたりはしていない。

 あの島にあるのは自由、安全、そしてはっちゃけだ。


「宇宙、イヤだよなぁ」「空気漏れたら死ぬし」「太陽は時々キッついし」「すげえ速度で天体突っ込んでくるし」


 まあ、黒の艦隊と同クラスの宇宙艦隊だから宇宙船の中にいる限りは心配無い。

 しかし宇宙船の外に出れば超危ない。

 そして宇宙船がどれだけ大きくても閉じられた世界は息が詰まるもの。星の上で過ごす方が安らぐのだ。


「我らは地球上陸すら滅多に許可されないのに、上陸しても温めた地を延々と耕しているのに、なぜこの黒島の奴らは一日中遊びまくっているのだ! 黒の艦隊は我らと同規模の宇宙艦隊なのにこの差は何なのだ! ああうらやましい!」


 宇宙から歯ぎしり。

 俺らは忙しいのになんでこいつら遊んでるの?

 しかもこいつら超強い。文句付けたら返り討ちだよこんちくしょう!

 と、麻田が言った通りの事で悔しがっていた。


「巨大な樹木が温泉を楽しんでます!」

「「「温泉!」」」

「地球人と共にサーフィンしてます!」

「「「海!」」」

「怪獣どもが家族団らんです!」

「「「家族水入らず!」」」


 宇宙から睨む彼らの歯ぎしり半端無い。

 が、しかし……


「奴らとても美味そうに、とても美味そうに……炭を食ってます!」

「「「それは別にうらやましくない」」」


 彼らは黒にこだわりがない。

 宇宙労働者の皆がハモった。

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