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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-3.オカルト、ぞくぞく
78/142

6.黒島のんびり散歩

「「「さんぽ」」」

「……はいよ」


 要塞世界樹パウロが来島した日の夜、黒島大吉アパート前。

 首輪とリードをくわえて訪れたブリリアント一家に、大吉は苦笑いで答えた。


「大吉様、散歩行くですすぐ行くです!」


 ぶぉんぶぉん。狼姿のエリザベスが尻尾を振る。

 エリザベスは散歩時いつも狼。

 そして犬の散歩は基本毎日。だからエリザベスとの散歩は大吉の日課だ。

 他の軍は曜日で散歩に参加する。

 月火水木金土を竜軍、鬼軍、惑軍、獣軍、樹軍、屍軍の順。ロボ陸海空軍と宇宙軍と生産軍と諜報軍は自由参加だ。


「じゃ、行くか」「はい」


 大吉の散歩は日課。大吉が参加するのでエルフィンも散歩は日課。


「散歩ですか。私も行きましょう」

「あー、散歩酒もええなぁ」『『『サケーッ!』』』

「さんぽでしゅ」「行くです」「歩くですぅ」


 そしてセカンド、ミリア一味、幼女達もだいたい毎日参加。

 グラン、アクア、ウィンザーら幼女ロボは日曜参加だ。


「大吉様散歩ですね? 首輪とリードの準備は出来ております!」

「フォルテ、その性癖まだ続いてるの?」

「大吉様がすごい性癖を教えてくれると聞いて来ました!」

「て、店長にこんな性癖があるなんて……」

「ねぇよ! 普通に散歩しろお前ら!」


 そしてフォルテも毎日参加、今日は竜二とノエルも参加。

 さすがはサキュバス、愛に全力。

 愛が深まると聞けばどんな事でもやってみる。

 その姿勢は立派だが妙な性癖を押しつけられる大吉はいい迷惑だ。


「赤い! ルビーレッドさんすごく赤くて綺麗ですね大吉さん!」


 そしてあやめもなぜか参加。


「大吉様が散歩行くって?」「これは是非参加せねば!」「ブリリアント様がいるから今日はきっと月曜、竜軍の日!」「俺らガーゴイルも参加オッケー!」


 そして大吉アパートのガーゴイルをはじめとした竜軍の暇な者も参加。

 散歩は何とも大所帯。

 しかしこれも飼い主責任。拗ねて訳の分からない事を始められても困る。

 黒の十四軍の飼い主げふんげふん長としての責務だ。


「「「大吉様、リードをどうぞ」」」

「持てねえよ。もっと減らせ」


 ブリリアント、ルビーレッド、ピンキー、エリザベス、フォルテ、ガーゴイルその他竜軍参加のみなさん。

 全部で数百のリードを渡されて断る大吉だ。


「しょーがないなぁ」「今日はブリリアント様に譲ってやろうぜ」「拗ねたら困るもんな」「パパの威厳をガツンと示させてあげないと」


 首輪とリードでパパの威厳……?

 首を傾げる大吉だ。

 しかしまあ、本人達が納得しているならそれでいいかと大吉はブリリアント一家とエリザベスのリードを持って歩き出す。

 フォルテのは全力で断った。


「では、残りのリードは私が「「「イヤです」」」ええっ!」

「命がけの散歩とか絶対イヤだよな」「どんなデタラメがリード経由で来るか分かったもんじゃない」「大吉様を絶妙な力加減で引っ張るのが楽しいのに」「わかってないなぁ」


 そしてブリリアント一家に譲った皆、自分のリードを自分で持つ。

 決してエルフィンには持たせない。ダメ無限力の前には力加減なぞ無意味だからだ。

 大吉はリードをしっかりと握り、散歩に出発した。


「ブリリアント、家の方は片付いたのか?」

「はい。家は家族で住めるように設計しておりましたので、パウロから荷物を移せば我が家でございます」

「そうか。ガトラス達も今頃は家族水入らずかな?」

「そうでございましょう。皆、家族を恋しがっておりましたからなぁ」


 ふと山を見れば山頂の温泉湖ではバウル一家とパウロが入浴中。


「にーちゃん。いい湯だねー」

「いい湯だなー」

「中に誰もいないと、隅々までお湯ジャバジャバで気持ちいいよねー」

「そうだなぁ、中までジャバジャバだなー」

「バウルとーちゃん、ゆったりだねー」

「そうだな。ゆったりだなー」


 要塞世界樹一家、温泉でくつろぐ。

 きっと他の黒軍の者達も同じようにくつろいでいる事だろう。


「あなた、この絶妙な力加減を楽しむのですね?」

「その通りだルビーレッド。大吉様を引っ張るが引きずらない絶妙な力加減。これぞ散歩の醍醐味だ」

「あーっ! あっちに何かあるーっ!」

「ぬぅおおお! ピンキー、強く引っ張るな!」

「一番先にリードを切った人が本当に大吉さんの事を考えている人です!」

「大岡裁きかよ!」

「じゃあ大吉さんが一番最初にリードを放した人が、大吉さんがどうでもいいと思っている人! これぞ大吉裁き!」

「俺が裁くのかよ!」


 一方向に進んでいる時は楽だがバラバラに動くと超大変。

 リードを掴む大吉、時に大岡裁き、時に大吉裁き。

 これぞ大吉の日課、黒島のんびり散歩だ。


「……ん?」


 しかし、オカルトはのんびりしてても現れる。

 セカンドが立ち止まり、空の一点を睨んだ。


「セカンド、どうした?」

「大吉様、木星付近に艦隊旗艦級の輝き転送を検知しました」

「艦隊旗艦級って、クーゲルシュライバーと同じくらい?」

「はい」


 今度は、誰のオカルトだ?

 空を見上げる大吉だ。


「ぬぅおお大吉様との大切な散歩を邪魔するとは許せん!」

「そうですわあなた。やってしまいましょう!」

「やるぞーっ!」

「待て、せめて来るまで待ってやれ」


 問答無用でこてんぱんにするのやめなさい。

 空にくわっと口を開く竜一家を、大吉はリードを引っ張り止めた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 竜軍をリード引っ張るだけで止められるとか 実は大吉もぺっかー予備軍なのでは?
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