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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-2.黒の十四軍、オカルトを討つ
70/142

10.オカルト、なめてました(2)

 全世界の寝ゲーマーは驚嘆していた。


『こりゃすげえな』『どういう通信経路なんだこれ?』『オカルトからフラットウェスト?』『オカルトから異世界じゃね?』『まあとにかくフラットウェスト社、グッジョブ』


 当たり前だが皆、寝てる。

 この生放送はエクソダスで行われているものだからだ。

 寝ゲーやってたらメッセージが来たので見てみればオカルト生放送。

 皆、異世界の仲間と共に寝ゲーから寝視聴者へと鞍替えだ。

 そして寝ゲー仲間へとメッセージを流しまくる。

 映し出されているのは目標の大吉一行、依頼主の投資家の部屋、実行者のアルファとその一味。

 フラットウェスト社全面バックアップで公開される公開こてんぱんショー。

 プレイヤーの皆は寝ながらにして特等席だ。


「これが、ご主人様の世界なのですか」

「……まあな。俺もあっちではただのサラリーマン。下っ端さ」


 とあるプレイヤーが寝ゲー世界でパートナーに呟く。

 ちなみにこのプレイヤーのパートナーも大吉と同じく女性だ。


「まあ、井出大吉も下っ端だったんだけどな……こいつらが現れるまでは」

「光の黒騎士エルフィン・グランティーナに黒軍を従えているお方がご主人様の世界では下っ端なのですか? すごいですね……」

「俺らの世界ではまだまだゲームだからなぁ」


 エクソダスのゲームはただのゲームではない。

 まだ世界はそう思い始めたばかりだ。

 大吉の持つ特殊な力という仮説は雄馬や竜二によって否定された。

 オカルトに可能性を見た者や組織は怪獣裁判の後にこぞってエクソダスを購入し、寝ゲーをプレイしている。


「俺も注意しないとな……」


 だからこのオカルト生放送を見ている者は多いだろう。

 彼らはオカルトが世界に示した、晒し者なのだ。

 オカルト生放送はまだ始まったばかり。

 プレイヤーは皆、パートナーや仲間と共に画面を見つめていた。




「ベータ、行け」『了解』


 一方、複合商業施設のアルファ。

 彼は大吉を取り巻く野次馬の中でスマホを構え、仲間に命令を送っていた。


「大吉様、こんなんいくらでも作ったるでぇ」『『『サケーッ』』』

「苦労して取るのがいいんだよ」

「大吉様、あれが取れま「輝き接待すんな」ええっ!」


 目標の大吉が今、遊んでいるのはクレーンゲーム。

 デートでいきなりクレーンゲームはどうなんだと思うアルファだが仕掛けやすい店内に来てくれたのでよしとする。

 複合施設の通路は広く、周囲をオカルト達ががっちり固めているので仕掛けるのは不可能。

 しかし店内の通路は狭い上に脇道も多く、周囲全てを常に囲む事は不可能だ。


「大吉様、残念でしたね」

「まあ取れなくて良かったかもしれないな。一つ取ったら全員の分取らなきゃいけないし」

「その時は輝き複製で「やめれ」ええっ!」


 何も取れなかった大吉が頭をかきながら皆と移動を始める。

 通路は狭いので前後は固めていても左右はガラ空きだ。

 まずは小手調べにちょっとした衝突。

 ベータには今回の依頼をオカルトの能力を知るためのものとしか教えておらず、武器になりそうな何かは一切持たせてはいない。

 これがまともにぶつかるなら、次は……アルファがそんな事を考えている間に大吉が店内の十字路にさしかかる。

 ベータが仕掛けた。


「あ、すみません」

「いえ、こちらこそすみません」


 ドスン。

 仕掛けたベータ、大吉とまともにぶつかる。

 衝突は狭い通路では日常的に起こる普通のもので、オカルト達も気にしない。

 大吉とベータは互いに頭を下げあって、人数の多い大吉が道を譲って円満解決。

 何も起こらずに終わった。


「大吉しゃま、あれ何ですか?」「お玉、投げてるです」「ばこーんですぅ」

「あれはボーリングだな」

「ちょうどいいですね。大吉さん、ボーリングしましょう」

「やるでしゅ!」「やるです」「やるですぅ!」

「……お前ら、輝きズルとかしない?」

「そんな事したら面白く無いではありませんか」「遊びですからヘタなのも一興ですわ」「獣人族にも似たような遊びはありますから、負けないです」「玉の操作はクーゲルシュライバーでお手の物」「グレムリンに頼むとかやらへんから」『『『サケーッ!』』』

「輝き忖度もするなよ?」


 大吉一行はそんな会話をしながら歩いていく。

 その後ろを追跡しながらアルファは呟いた。


「普通にぶつかるんだな……ベータ、お前の仕事は終わりだ。帰れ」『了解』

『よしアルファ、次はボーリング場で仕掛けろ』


 投資家が命じる。 

 そして大吉一行がボーリング場に入った頃……


「『『ぐぬあっ!』』」


 ずばん! 痛い! ゴロゴロゴロゴロ……

 投資家とその秘書、ベータが何かに弾かれたようにふっとんだ。


『吹っ飛んだ!』『床転がってる!』『しかも時間差!』『ギャグか!』『何が起こったんだ?』『これが竜二さんの言ってた輝き返却って奴じゃね?』『ぶぶ漬け送ったら竜が戻ってきたアレか!』『輝き時間差返却か!』『でもアルファは吹っ飛ばなかったな』『井出大吉から見える場所だから配慮したんじゃね?』『結成式典でも謝罪してたし、これ見たら絶対デート中止だろうな』『輝き配慮か!』


 寝視聴者、大ハッスル。

 そして一人だけ吹き飛ばなかったアルファ、投資家に聞く。


「……ボーリング、仕掛けますか?」

『やめろ! 絶対にやめろ!』『そんなのやったら死んでしまう!』


 アルファの問いに投資家の男と秘書が叫ぶ。

 打撃が倍以上になって返却される事を理解したからだ。

 まったく関係ない場所にまで発生する輝き返却は理屈不明のオカルト。

 そしてアルファは自分にだけ返却が起こっていない事に首を傾げ、大吉の近くにいるからだと結論付けた。

 こいつから離れたら返却されてしまう……!

 アルファは常に大吉の近くにいようと決意した。

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