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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-2.黒の十四軍、オカルトを討つ
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3.黒島支店、新入り入社

「おーい、そのリストの品物揃えといてくれ」

「は、はいっ!」


 朝、黒島支店。

 出勤した大吉は先日入った新入りに自衛隊から届いた品物リストを渡した。

 倉庫からリストにある品物をまとめて、荷物として配達する。

 いわゆるピッキングという作業だ。

 大吉はリストの二割を新入りに渡し、五割をエルフィンに渡し、残りの三割を揃える作業を始め……ぺっか。


「終わりました」「「早っ!」」


 大吉は輝きピッキングで作業を終えたエルフィンに新入りと二人で驚き、俺はマイペースでやろうとピッキング作業を開始した。

 新入りは……黒島入植者第一号、佐藤雄馬。

 自衛隊に入隊した三日後、泣きながら大吉の運送会社に転がり込んできたのだ。

 まさか三日でギブアップするとは思わなかった。

 と、自称『正義』に呆れる大吉だ。

 まあ今のうちに挫けておいて良かったと思うべきだろう。

 『エクソダス』の世界でどれだけ能力を発揮していようが所詮寝ゲーは寝ゲー。

 エルフィン達は夢で力を得たが大吉達は変わらない。

 だからもやしっ子はもやしっ子のまま。寝ているだけで幸運が転がり込んでくるウマい話はそうそう無いのである。

 雄馬はリリィという力を手にしたが、それが幸運とは限らない。

 力には力で対するのが世の中というもの。そして邪魔者と判断すればどんな汚い手でも使って排除する者がいるのが世の中だ。

 これをオカルトとはいえリリィだけで何とかするのはムリってものだ……

 エルフィンなら楽勝だろうが。


「大吉様、私を心で褒めましたね?」

「そんな事はないぞ?」


 輝き予感が発動したのだろう、エルフィンがぺっかと輝く。

 大吉はリストの通りに品物をそろえ、車輪のついたかごに入れていく。

 これをトラックに積み、出勤のついでに持ってきた荷物や手紙を駐屯地の各所に配達するのが谷崎に頭を下げて獲得した大吉の仕事。

 品物をそろえた大吉はリストにチェックを入れながら確認し、雄馬から作業済みのリストを貰ってチェックを入れる。


「これ、違うぞ」「す、すみませんっ!」

「時間はあるから慌てるな。壊されるのが一番困る」


 まあエクソダスをぶっ壊された直後は大吉もひどいものだった。

 間違えるのは当たり前。時には袋を破り、時には落として瓶を割り……そうやって間違え続けて今の大吉がある。

 凡人は何事も地道。一足飛びに出来たら天才だ。

 なお、一緒に転がり込んで来たリリィはすぐに雄馬を手伝おうとするため、ボルンガレストランに押しつけて炭ではない黒豆とイカスミパスタ以外の料理を担当してもらっている。

 リリィ・カーマインは黒の十四軍以外の黒島入植オカルト第一号だ。


「この調子でオカルトがどんどん増えていくのだろうか……」


 当たり前だがオカルトを野放しにはしないよう、谷崎から土下座懇願されている。

 オカルト流刑地、黒島。

 江戸時代の八丈島か。島流しか。

 大吉がそんな事を考えながら作業をしていると隣がぺっかぺっかとやかましい。

 運送会社の隣、黒の十四軍の遊び場だ。


「バックオーラーイ、オーラーイ……」

「おらぁ荷物を仕分けるぜ……」

「しわけ、るー……」

「雑に扱うと壊れますのでご注意下さい……」


 そして海の上ではイカを世話する要塞世界樹バウル。


「いやぁ、今日もイカは元気だ……」


 ぎろりんぬ。


「ひっ!」


 遊びながら雄馬を睨む皆である。

 雄馬を睨む皆は一連の遊びと養殖作業を終えると、輝き嫉妬でぺっかぺっかと輝きながら大吉のもとに寄ってきた。

 いつものようにブリリアントが皆を代表して大吉に聞いてくる。


「大吉様、我らも入社試験をお願いできますか?」

「いや、これ以上従業員いらんから。というか雄馬も正直いらんから」

「「「「「「そんな!」」」」」」


 大吉の言葉にエルフィンを除く皆が叫ぶ。

 というか、ぶっちゃけエルフィン一人で何でも出来る。

 大吉だっていらない位だ。

 しかしそれで皆が納得するなら苦労しない。皆は輝き駄々をこね始めた。


「大吉様! こんな奴とっとと自衛隊に返却して俺を雇ってくれ!」

「ガトラス、自衛隊の皆さんは仲間に命を預けるような業務だからなぁ……三日で運送会社にトンズラするような奴は返却拒否だろ」

「あいつら俺らを的にしてるだけだぞ?」

「バウル、あれは訓練だから。有事の際には命がけだから」

「ずるー、い」

「じゃあ、ボルンガの所で雄馬を雇うか?」

「大吉様、こんな黒もわからぬ者に料理を任せられる訳がありませんぞ!」

「俺にとっては炭も料理じゃないぞビルヒム」


 スルーな大吉に輝き駄々はヒートアップだ。


「我らはいつまでごっこ遊びをしていれば良いのですか!」

「エルフィンはともかくこんなヒヨッ子が我らより先に大吉様と働くのは納得できぬ! 大吉様、俺の養殖したイカも運びましょう!」

「そうだぜ大吉様。タダでいいから働かせてくれよぅ!」

「はた、らく」

「私もそろそろ荷物ではなく、はたらく屍になりたいと思います!」

「お前らはお前らで荷運びすればいいんだよ。黒豆とかイカとかパスタとか色々あるじゃないか」

「「「「「大吉様の黒島支店がいい!」」」」」


 つぶらな輝きで大吉を見る皆に、大吉が折れた。


「……わかった。本社に聞いてみる」

「畑仕事は業務になりますか?」

「イカ養殖は? イカ養殖は業務になりますか!?」

「本社に聞いてみるから!」


 二度ある事は三度ある。

 大吉由来のオカルトは打ち止めだがエクソダスは今も業界トップを独走するゲーム機械。次のオカルトが出て来るのは間違い無いだろう。

 現れるたびにこいつら騒ぐのかと、ため息をつく大吉だ。


「次はどんなオカルトが現れるやら……」

「どんなオカルトでも私にお任せ下さい!」


 なお、オカルト就活は本社から黒島限定であっさりオッケーが出た。 

 そして会社のホームページの業務内容にしれっと追加されるイカ養殖と畑仕事。

 大吉の勤める運送会社、宣伝に使う気マンマンであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 佐藤君、このご時世にいくつも就職先があって良かったね! まあ、いきなり自衛隊はいくらなんでも無茶振りでしたね……(白目)
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