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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-1.大吉、南国黒島スローライフ
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6.自衛隊、オカルトに物申す

「いやー、ここに駐屯してよかったぜ」

「全くだ」


 黒島自衛隊駐屯地、食堂。

 上陸から一ヶ月ほど経った頃、駐屯する皆はしみじみと呟いた。

 黒島に来た当初の緊張感はすでに無く、皆とてもリラックスしている。


「派手に音を立てても苦情来ないし」

「演習場は大砲の射程よりも広いし」

「標的には困らないし」


 騒音、そして射程。

 火薬で弾をぶん投げる現代戦闘では常について回る問題だ。

 大砲の音がやかましければ苦情。演習場の外に砲弾が飛んでしまえばニュース。

 周囲に住宅や農地がひしめく日本の演習場は細心の注意と配慮が欠かせない。

 しかし、この黒島ではその心配は無い。

 怪獣達は音を立てても気にしない。

 そして演習場は十分に広い上に周囲は輝き障壁でがっちりだ。

 ものは試しと許可を取って撃ってみたら見事、輝いてガードされた。

 銃弾はもちろん大砲の砲弾でもあっさりキャッチ&リリース。これ本土の演習場にも欲しいなと思う皆である。まあ、国際条約違反で無理なのだが。

 そして標的。

 ここでは暇な怪獣が標的のバイトをしてくれる。

 のっしのっしと歩く巨人や、空を飛ぶ竜に自衛隊は遠慮なく砲弾やミサイルを叩き込む。

 そして命中弾を返却されて、「ああ、俺らの攻撃やっぱり効かないんだな」と肩を落とすのだ。

 ノリは縁日の夜店だ。ボール当てるとガオーと叫ぶ鬼だ。コルク銃を見事当てても微動だにしない高額商品だ。 

 こいつらと敵対するような事にはなりませんようにと願う皆である。


「あと、空薬きょうの回収な」

「「「わかる!」」」


 回収した空薬きょうは、銃弾を使用したという証明に使われる。

 広い演習場で使ったそれが次の日の朝に届けられている様は本当に素晴らしい。

 はじめはこいつら輝いて作ってるんじゃないだろうなと疑い、キズや目印をつけたものだが全てしっかり返却。まるでゴルフ練習場のゴルフボールのようだ。

 さすが人工島。そしてオカルト島。

 不思議な事で至れり尽くせり。おかげで訓練もはかどる皆である。

 ついでに山頂の温泉湖から湯をひいた二十四時間源泉かけ流しの露天風呂や第四軍惑軍のサキュバスドリームサービス、第十三軍生産軍の何でも修理サービス、離島なのに店の出前すら可能な謎宅急便。どこからか来た回線でネット環境も充実。

 まさにオカルト。黒島は都会と田舎の良いとこ取りなオカルト島なのだ。

 が、しかし……


「しかし……あれだけは許せんな」「ああ」「あれは改善させねばなるまい」


 皆が改善を決意するのは『黒い』ご飯だ。

 事は一週間前、訓練後の親睦会の時の事。

 自衛隊の料理担当が料理を作ったところぺっかと輝き黒くされた。

 着色ではない。炭化だ。

 輝きビームで焼き焦がしたのだ。

 それをバリバリ食べるブリリアントやガトラスらにムッとした自衛隊の皆だ。

 黒豆やイカスミを使った料理はいい。元々黒いから。

 しかし黒くもない料理を燃やして黒くするのは許せない。

 あれではもはや料理ではなく炭だ。炭食ってるのと変わらない。

 丹精込めて作った料理を炭にして食べるなど料理した者に対する無礼。からあげにレモン汁を勝手にかける以上の失礼だ。


「もしかしてあいつら……黒いものしか食べられないのか?」

「いや、井出さんを護衛しているエルフィンさん達は普通のご飯を食べていた」

「黒豆は必ず入っていたけどな。あとぬか漬も」

「つまり……食わず嫌いか」

「次の親睦会は戦いだな」


 皆が頷く。

 そして次の親睦会。

 料理を前に輝きビームを発しようとした軍団の皆を料理担当の者が止めた。


「今日は黒くせず、そのまま食していただきたい」

「ほぅ……」


 ブリリアントが目を細め、発言者にぐぉんと首を伸ばす。

 近付くブリリアントの巨大な顔に、声を上げた自衛隊員はガクブルだ。


「汝らも料理にソースをつけて食すだろう。それと我らの黒は違うのか?」

「す、炭は私たちにとって味付けではありません。料理ですらありません」

「ふむ。汝らは我らに、汝らの食べ方に従えと言うのだな?」

「……はい」


 ブリリアントはしばし考え、黒くない料理を口に放り込んだ。

 もっしゃ、もっしゃ……ブリリアントが料理を食べる音が響く。

 自衛隊の皆は震えながら、その姿をじっと見つめる。

 やがてブリリアントが笑った。


「美味いな」


 ガトラス、ボルンガ、ビルヒムも料理を食べ笑う。


「なるほど。うめぇ」

「おい、しー」

「美味ですなぁ。なるほど美味ですなぁ」


 ブリリアントが頭を垂れる。

 その口から出る言葉は謝罪だ。


「理解した。我らが黒を愛し誇るように、汝らも食を愛し誇っているのだな。知らずに黒くしたのは我らの無礼であった」

「なかなかに美味い料理だったぜ」

「なっ、とく」

「料理にはそのように食べる理由があるのですな。うっかりでございました」


 ブリリアントに続き頭を垂れる軍団長と参加者達。

 が、しかし……


「では、黒くするか!」「おう」「くろ、くろ」「やはり黒ですな!」

「「「おぉい!」」」


 べかーっ。輝きビーム炸裂。

 すぐに黒くするブリリアント達に叫ぶ自衛隊の皆だ。


「理解したんじゃなかったのか?」

「理解したとも。それはそれで美味しく頂く」

「ならばなぜ?」


 問いかける皆にブリリアントらは胸を張り、答えた。


「黒いものは別腹だからだ」

「このジョリジョリした感じがまたいいんだよ」

「べつ、ばら」

「その通りです。黒最高!」

「「「……」」」


 黒くないものも食べるが、黒いものも食べる。

 デザートか! デザートなのか!

 心でツッコミを入れる皆であった。

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