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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-4.そして、欲望が現れる
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8.イキリを貫いて粋に変えろ

「久しぶりだな。元気にしてたか?」

「ああ。父さんも元気そうだね。母さんは?」

「元気だ。お前によろしくと言っていたぞ。今日はあいつから電話があって様子を見に来たんだ。メロン食うか?」

「そうなんだ……ありがとう」


 手土産のメロンを渡して話す三年ぶりの父の言葉に、大吉は頷いた。

 父とはエクソダスを破壊されて家を追い出され、運送会社に放り込まれて以来。

 父の言うあいつとは運送会社の店長の事だ。

 店長と父は幼い頃からのくされ縁。

 だから就労経験の無い大吉をぶち込む事が出来たのだ。


「大吉様の父君!」「おとん!」「第一印象は挨拶が大事!」「ブリリアント様に連絡だ!」「やめれ」「「「「えーっ!」」」」


 外のガーゴイルは大騒ぎ。


「だ、大吉様のお父様!」

「第一印象は挨拶が大事ですわ」

「おみやげをさっそく活用するです!」

「メロンを華麗に切り分けるのですね」


 ぺっかぺっかぺっかぺっか。

 そして部屋の中は激輝き。

 眩しすぎる輝きの中、大吉の父は目を細める。


「すごい事になっているとあいつから聞いてはいたが……すごく、眩しいな」

「すごい時は壁を貫通するよ」

「もっとすごい時があるのか……大変だな大吉」

「「「「ええっ!」」」」


 父の第一印象、すごく眩しい。

 さんざんな結果にエルフィン、フォルテ、エリザベス、セカンドが叫ぶ。


「フラットウェスト社の第一開発部に勤めております、隣人の五月あやめです」

「これはどうもご親切に。大吉の父です」


 そんな中、あやめだけはそつなく挨拶。

 さすがは今をときめく会社に入社できるだけの事はある。

 感心する大吉だ。

 大吉の父はあやめに頭を下げた後、大吉との会話を再開した。


「最近はテレビのニュースで驚いてばかりだよ。その中心にお前がいるってあいつから聞いた時はもっと驚いたがな」

「まあ、ちょっと驚きだよね」


 大吉は今やオカルト特異点。

 アパートは自衛隊と黒軍のガーゴイル、周囲にはロボ、洋上にはバウル、森はエリザベス、宇宙には黒の艦隊。

 これで驚かないのは無理というものだ。


「これは……あれか? お前のゲーム機を壊した呪いか?」

「そんな事は全く無いから。全く関係ないから。たぶん」


 こんな状況に父も別方向にオカルト。

 そんな父に手を振って否定する大吉だ。


「そうか?」

「むしろあの時に壊してくれて良かったよ。どうせエルフィン達は来ただろうし、その時に寝ゲー三昧じゃみんなに顔向け出来なかった」


 メロンを切り分けているエルフィンらを見て、大吉は父に言った。

 エクソダスを壊していなくても、エルフィン達は世界に現れた事だろう。

 その時大吉が寝ゲー三昧だったら、今のような関係を築けてはいなかったに違い無い。

 寝る、ゲーム、そして寝る。必要な事は全部家族まかせ。

 夢で終わらせずに努力して、そして世界を変えたエルフィン達はこんな大吉を決して評価はしないだろう。


「さあメロンをどうぞ!」「父さんの土産だけどな」

「半分はエルフィンが、もう半分は私が切り分けました」「大げさだな」

「皆公平に。クーゲルシュライバーの計測は完璧です」「てきとうでいいから」

「一番大きいのは大吉様です!」「計測したんじゃないのか?」

「大吉さん、メロンとぬか漬けを交換しましょう」「嫌だよ!」


 自ら働き食い扶持を稼ぐ。

 それは自らの立つ土台を自らの力で作り守る事。つまり自立だ。

 たとえちっぽけな事であっても自立は自信に繋がる。だからエルフィン達ともこんな風に接する事が出来るのだ。

 父はそんな大吉とエルフィン達を見て、笑った。


「そうか……メットかぶって寝てばかりの頃は父さんも母さんも心配したが、お前も成長したなぁ」

「成長……そうか、成長か」


 大吉の頭で、一つの形が出来上がる。


「……どうした大吉? 急に神妙な顔をして」

「ありがとう。父さんのおかげで何とか形になりそうだ」


 それでうまく行くかどうかは分からない。

 しかしそれが大吉に出来る精一杯だ。

 どうせ理屈ではどう足掻いてもかなわないのだ。押し通すしかない。


「大吉さん、ハートにガツンですよ」

「……そうだな」


 察したあやめに大吉は笑い、メロンにスプーンを入れる。


「輝き冷却です!」

「もうお前ら、本当に黒捨てちまえ」

「「「「ええっ!」」」」


 メロンは甘く、よく冷えていた。




「それじゃ、母さんによろしく」


 夕方。アパート前

 大吉は帰る父を見送った。


「お前も元気でな。裁判は大変だろうが、まあしっかりやれ」

「まあ、負けても取り分は九割だから、大儲けだけどね」

「アホか!」


 父が大吉を小突く。


「慕って来た者達に恥ずかしい思いをさせるんじゃない。本気で勝ちに行け!」

「父さん……」


 父は大吉を怒鳴りつけた後、エルフィン達に深く頭を下げた。


「今後とも息子を、よろしくお願いいたします」

「当然です」「もちろんですわ」「です!」「当然です」「はい」


 エルフィン、フォルテ、エリザベス、セカンド、あやめが頭を下げる。


「機会がありましたら我が家にもお越し下さい。母さん共々歓迎させて頂きます。それじゃあな大吉。痴情のもつれには気をつけろよ!」

「「「「痴情!」」」」

「ぬおっ、眩しっ!」


 夕日よりも眩しい輝きの中、父が去って行く。

 そんな大吉達を、少し離れた所で見つめる者達がいた。

 谷崎と麻田だ。


「……もう俺の出る幕じゃねえな。俺は帰るぞ谷崎」

「はい」


 麻田は笑い、車へと踵を返す。


「大吉よ、イキリを貫いて粋に変えろ」

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