表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-1.光の黒騎士、現る
4/142

3.俺のスマホの中で、メンテとガチャが争っている

「おかしい……」


 仕事中、トラック運転席。

 踏切で電車の通過を待ちながら、大吉は呟いた。

 何がおかしいって、スマホゲーである。

 メンテ、復帰、メンテ、復帰、メンテ、復帰……

 大吉が無料ガチャを引きまくったあの日以来、何とも無様な迷走をしているのだ。

 復帰する度に全コラボキャラが消えたり、全員プレゼントになったり、確率が変更されたりと色々アナウンスされたが結局何も変わっていない。

 だから大吉のスマホゲーには、今もガチャで引いた懐かしの面々が陣取っている。

 ただのコラボガチャのキャラクターなのにすごい存在感。

 一体何をしている運営?

 スマホゲー圧半端無い。


「本当にオカルトかよ……俺、何かしたか?」


 電話契約もろともスマホを新調するべきか?

 電源を落としている運転中でもひしひし感じるスマホゲー圧に大吉は呻き、こんなアホな事で呻いているのは自分だけだろうと自嘲する。

 しかし呻いているのは大吉やユーザーだけではない。

 ユーザーがトラブルに呻いている時、メーカーもまたトラブルに呻いているのである……




「おかしい……」


 所変わってフラットウェスト社、第二開発部会議室。

 スマホゲー開発チームの皆は、大吉と同じく呻いていた。

 原因は先日実装されたエクソダスとのゲームコラボにある。様々なテストを行ったはずなのに、トラブルが続出しているのだ。

 乱発される無料券。

 知らない間に一体のみに書き換わるガチャ確率。

 一部ユーザーにやたらと殺到するコラボキャラ。

 そしてスマホの異常動作。

 殺到するクレームに何度メンテしたことか。

 しかし何度メンテしても結局元に戻ってしまう。ユーザーデータを巻き戻してもコラボキャラは何故かデータに残り、全員プレゼントにしても何故かデータは消えて一部ユーザーにしか残らない。


「コラボ実装前のシステムに戻した結果は、どうだ?」

「……変わりません」

「データが無いのにキャラがいるのはなんでだよ!」

「わかりません!」


 こんな調子で開発した当人達が頭を抱える現状。

 開発チーム阿鼻叫喚だ。


「あの、オカルト集団め……」


 チームの一人が呻く。

 謎のオカルト集団。

 それが第二開発部から見た第一開発部だ。

 エクソダスの開発を行う第一開発部とスマホゲーの開発を行う第二開発部との間に交流は無い。

 第一開発部は社内でも非公開で謎だらけ。

 部署はどこにあるのか。

 誰が所属しているのか。

 どれだけの規模なのか。

 それらが全くの謎なのだ。

 第二開発部はエクソダス発売以降に作られた部署。

 彼らは革命的なゲームに感動し、憧れ、自分もそれらに関わりたいとフラットウェスト社の門を叩いた者達だ。

 しかし、謎。

 第二開発部から第一開発部に異動した者はおらず、人の繋がりは皆無。

 同じ会社なのに直接のツテがまるで無いのだ。

 関係者とおぼしき者は知っている。

 しかしその者と接する機会がまるで無い。

 社内メールで連絡を入れても無視される。

 本社近くのスーパーから買い物袋を提げて歩く姿は毎日のように目撃されているのに話しかけると人違い。こっそり尾行してもすぐに見失ってしまうのだ。


「あの女、忍者かよ……いや、妖怪か何かか?」


 ここまで来るともうお手上げだ。

 しかしスマホゲーの開発元としては何かしらの対応をしなければならない。

 総務部からはお上から指導を受けたとの連絡を受けている。

 ガチャは基本有料。

 お金が絡む物事は色々と面倒臭く、時間と共に恐ろしいほど面倒事が増えていく。

 開発チームが見つめる中、会議に参加していた第二開発部の部長が口を開いた。


「今回のコラボを中止する」

「ユーザー課金は?」

「返金となるだろうが、詳細は他の部署の判断も必要だ。上に投げる」

「コラボキャラが勝手に入ってくる問題は?」

「入ったキャラをゲーム内で使えなくするしかないな」

「……出来ますかね? 今だってデータが無いのに存在しているんですよ?」

「知るか。コラボキャラ共に土下座して頼め」


 データから削除しても出て来るようなオカルトなど開発部にはどうしようもない。

 事態がオカルトなら対応もオカルト。

 第二開発部長は上に報告し、神棚を調達し、神主に禊ぎをしてもらい、開発部一同で神棚に土下座する。

 そして皆、床に額をこすりつけて呟くのだ。


「あの、オカルト集団め……」


 と。

誤字報告、感想、評価、ブックマーク、レビューなど頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ