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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-4.そして、欲望が現れる
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2.機械妖精グレムリン

 日曜日。

 フラットウェスト社、第二開発部。サーバ室。


「あの、オカルトどもめ……」


 サーバ保守担当の田代は一人、画面を前に呻いていた。

 スマホゲーの謎現象は今も調査中。

 あのような事態を今後発生させるなと部長が徹底した原因究明を命じたためだ。

 経営会議で決定された補償金額は数十億。

 部長は会議で針のむしろだ。他部署からは予定外の出費を責められ、原因の明確化と再発防止の徹底を約束させられた。

 不始末には原因究明と再発防止。当然の事だ。

 開発担当はアプリのプログラムとデータをしらみつぶしに検証し、どのようにすればあのような事が起こるかを考えた。

 そして結論、起こらない。

 まあ当然だろう。アップデート前のプログラムとデータに戻しても起こるなど、普通あり得ないからだ。

 そして検証はアプリからサーバへと移る。

 プログラムとデータに異常が無いなら運用するサーバがおかしい。一度入れたデータとプログラムがどこかにこっそり隠れて悪さをしていると考えられた。

 しかし、そんな事は田代は何百回と確認している。

 異常が発生していた頃に二度もハードディスクを交換してシステムの再構築を行ってもいる。それでも発生するからオカルトなのだ。

 その事を田代は何度も部長に説明したが、何としても原因を見つけろの一点張り。

 ここまでの損害を出して『わかりませんでした』では済まされない。

 部長も自分の評価がかかっているから必死だ。

 そんな訳で田代は連日残業。今日は休日出勤だ。


「おかげで休みがねぇよ……あぁ、へべれけに飲みてぇ」

 

 酒を楽しむ暇もない。

 トラブルを起こすまでの第二開発部の業績も決して悪い訳ではない。

 しかし、大ヒットを連発している第一開発部とはさすがに比較にならない。

 エクソダスという圧倒的なハードウェアを一手に担い、週に何十タイトルもゲームをリリースしながらトラブルは皆無。

 この業界ではありえないオカルト開発部なのだ。


「花火大会も大盛況だったな。イベントでもトラブル無しかよオカルトめ」


 田代は先日の大花火大会を思い出す。

 結局、あれも第一開発部のプロデュース。

 自らが作ったゲームキャラだからか、オカルト同士通じる所があるのか。

 とにかく黒軍と黒の艦隊と話をまとめ、とんずらしたロボの穴を埋めた。

 広報部も第二開発部も赤っ恥だ。


「同じ会社なんだから俺らも優遇してくれよ。まったく……」


 今、世界に現れているオカルトは全てフラットウェスト社のキャラクターだ。

 皆、輝く。そして力は圧倒的。

 黒軍は今や世界中の物流を牛耳っている。 

 最近現れた黒の艦隊は宇宙デブリを一掃して天文家と宇宙業界関係者から絶賛され、これからは宇宙開発に寄与する事を世界中から期待されている。

 森では聖女エリザベス・ウルフハウンドが獣を従えた結果、獣が道案内をしたり遭難者を運んで来たりする。森も山もずいぶん安全になった。

 とんずらしたロボはマンションのリフォームをしたらしい。

 そして最後の一人、エルフィン・グランティーナはどこかで地味に働いているらしいが、先日のイベントで他のキャラ達に一目置かれている所が目撃されている。

 暴れていないだけであれもオカルト。尋常では無いのだ。

 田代はそんな事を考えながらサーバを確認し、椅子の上でのけぞった。


「やっぱ何もねぇ!」


 無い。

 何百回も確認したがサーバのどこにも異常は無い。

 大体電源を落として記憶媒体を新品に交換して環境を再構築しているのだ。前のデータなぞ入っている訳がない。

 あとやっていないのはサーバの交換くらいか。やるのか? すげぇ高いぞ?

 疲れた田代がサーバーを見上げれば、しめ縄に神棚。

 御神酒、飲んでやろうか。

 田代は手を伸ばし……バチッ!


「痛っ!」


 田代の手が輝きにしびれる。

 静電気かと神棚を見た田代は、輝く何かがサーバに入っていくのを見た。


「何だぁ!?」

『ヤベエ!』『バレタゾ!』『ニゲロ!』


 田代の叫びに気付いたのだろう、画面に文字が走る。


『『『ぴゅーっ!』』』画面に謎の文字列と輝きが駆け回り、サーバの電源コードが輝く。

 電源コードをつたって何かが移動しているのだ。


「火事……いや、オカルトか!」


 さんざん調べて結局貴様か! オカルトか!

 田代は慌ててスマホを取り出し一部始終を動画で撮影。すぐに部長以下全ての第二開発部のスマホにメールで送り、さらに動画投稿サイトにアップロードした。

 相手はオカルト。

 いつデータが改ざんされるかわからない。その前に一人でも多くの者の記憶に刻み込もうとしたのだ。

 その動画を見た第二開発部は原因をオカルトと結論付けた。

 黒軍、黒の艦隊、黒の銀狼聖女、ロボ、そして光の黒騎士。

 トラブル発生時にはとても認められない結論だったが今はそれだけのオカルトが世界を席巻している。


「法的対応を検討いたします」


 フラットウェスト社の法務部は法的対応へと動き出した。




『バレター』『ゴメンヨー』『ゴメンヨー』

「酒にうつつを抜かすからこうなるんだよ。反省しな」

『『『アイー』』』


 フラットウェスト社付近の路地。

 輝きを迎え入れたのは二十歳前後の女性だ。

 全ての輝きを回収した女性はスマホを取り出し電話をかける。


「もしもし、ゴメン。撤収時にバレた」

『気付かないと思っていたのですが、少々侮りましたね』

「いや、こいつらが酒飲んでヘベレケでさ」

『あぁ……』

「まあ私らの目的は達成したからいいでしょ。集うべき者達は全て揃った。後の奴らは知ったこっちゃない。私は予定通りミスター・ブラックの所に転がり込む事にするよ」

『それでは、またいずれ』


 電話を切り、女性が歩き出す。


「さぁて、どんな顔をして迎えてくれるかな? ミスターブラックは」

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