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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-3.その他、いろいろ現れる
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3.エルフィン、打ち返せ

「私、今日は実家に帰ろうと思います」

「へ?」


 日曜日の朝、大吉宅。 

 朝食の席で黒豆を食べながら言うエルフィンの言葉に、大吉は呆けた声を上げた。


「実家って、帰れるの?」

「おじいさんの家ですよ」

「あ、そうか」


 大吉、実家設定忘れる。

 エルフィンは大吉の勘違いを帰れと解釈したのか、ちょっと不機嫌な顔になった。


「帰るのは試した事がありませんので、今はちょっと……せっかく来たのですし」

「そりゃそうだな。危ないし」


 帰還に失敗すればどうなるか分からない。

 まあエルフィンなら力ずくでどうにかしてしまうだろうが、未知なら慎重になった方がいいだろう。

 と、大吉が納得するとこれまた勘違いだったらしい。エルフィンが上目遣いで聞いてきた。


「そういう事ではありません……大吉様は、その……私がお邪魔ですか?」


 そっちの意味で取られたか。

 大吉は箸を置き、自分の正直な気持ちを告げた。


「とてもありがたいぞ。ご飯も賑やかで楽しいし、何より美味しい」

「ありがとうございます!」


 ぺっか。

 エルフィンが輝く。

 実際、賑やかな食卓は両親に『エクソダス』を壊され会社に放り込まれて以来だ。

 大吉の実家はそれほど遠くは無いが親からは借金と盆と正月以外戻って来るなと半勘当状態。食っちゃ寝ゲーは両親にとってそれだけ衝撃的で破滅的だったのだ。

 一人は楽だが寂しいもの。

 劇的に改善された食事には感謝以外の言葉が無い大吉だ。


「大吉様、そこはネーロ様の頃のように肩を抱きながら『君がいてくれないと、困る』くらい囁いてあげてください」

「……さ、さすが大吉さん……くううっ」


 まあ、時々こっ恥ずかしいのが玉にキズだが。

 そんな事晒さないでフォルテ。

 そしてあやめさん、突っ伏して食卓叩かないで下さい。

 赤面しながら大吉は朝食を食べ終わる。


「で、じいさんに何の用なんだ?」

「それが電話で連絡がありまして、魔力障壁が破られて田畑が荒らされたそうです。大吉様に突撃したぶるるんでもへっちゃらなのに妙ですねぇ」

「……そりゃ」


 相手がオカルトだからだろ。

 大吉はため息をつきスマホを見た。

 スマホゲーには登場していないキャラがまだまだてんこ盛りだ。

 『エルフィンメイカー』、『ストラテジ』、次は何だ?


「そういう訳で荒らした何者かをこてんぱんにシメようと思いまして」

「……俺も行こう」


 大吉が立ち上がる。

 エルフィン対オカルトでは正直言って世界が危ない。

 不幸なファーストコンタクトだけは避けねば怪獣大決戦まっしぐら。

 日本では怪獣は自衛隊なので防衛省の谷崎や自衛隊員のストレス半端無い。

 ただでさえ謎アパートに転勤で庭掃除なのだ。

 これ以上迷惑をかけると出勤の度に気まずい思いをする事になる。

 引っ越し不可となった今、近所付き合いは超重要なのだ。


「ぶるるんで行くのですか?」

「いや、ぶるるんは会社のものだからな。タクシーでも使おう」


 エルフィンもぶるるん、ブリリアントもバウルもフォルテも皆ぶるるん。

 最近は運送会社の同僚もぶるるん。

 もはやぶるるんをトラックと訂正するのに疲れた大吉だ。

 大吉は着替えて皆と部屋を出れば、玄関に掃除する谷崎と自衛隊。


「おはようございます。今日は会社お休みですよね。どちらへ?」

「おはようこざいます。エルフィンの用事でちょっと山の方へ出かけます」

「それではぶるるんを出しますのでご一緒しましょう」


 そして自衛隊までぶるるん。

 恐るべしぶるるん、ぶるるん。


「いえ、そこまでして頂く必要は……」

「大吉さんの行動には必ず誰かを同行させろと命じられているのでそういう訳にはいきません」


 谷崎、オカルト相手に休み無し。

 しかし自衛隊よりも早く行動を始めた者達がいた。

 アパート勤務のガーゴイルだ。


「あ、大吉様がお仕事以外のお出かけだ」「ブリリアント様が役立つチャンス!」「ブリリアント様に連絡だ!」「やっほー」


 そして……ばびゅん!


「大吉様! ぶるるんよりも我! このブリリアントを足にお使い下さい!」

「速いなおい!」


 バウルにいるはずのブリリアントが現れる。

 さすが黒軍最強。おそろしく速い。

 呆れる大吉の後ろでは確認を取る谷崎だ。


「井出宅よりこんごうへ。ブリリアントはいつ頃出た?」

『今からちょうど三十秒前だ』

「では移動時間は十五秒くらいか……もう着いてるぞ」

『俺ら今小笠原沖だぞ! JAXAでも追いつけないじゃん!』


 およそ千キロを十五秒。圧倒的だ。

 唖然とブリリアントを見上げる皆は、さらに上空に謎の影を見る。


「オラァ! しっかり土台になれよブリリアント!」

「ちゃく、ちー」

「ほぉれ!」


 ひゅるるる……どすーん。


「ぬぅおお! 重い! 重いぞガトラス! そしてボルンガ!」

「抜け駆けするからだ」

「まっ、たく」

「カサカサな私は軽いから誤差ですな。ホホホ」


 ブリリアントを土台にガトラスとボルンガとビルヒムが着地する。

 あー、なんか人気ロボットアニメでこんなのあったな。ロボを飛ばす土台。

 そんな事を思いながら見上げる大吉と皆である。


「おおいこんごう! 今度はガトラスとボルンガが飛んできたぞ!」

『ええっ! なんか高くジャンプしたと思ったらそこまで飛んでたの?』


 他の軍団長もJAXA以上。

 頭を抱える谷崎と自衛隊に、こんごうが追い打ちをかける。


『あー、こんごうより井出宅へ……バウルがジャンプした』

「止めてくれよ!」

『出来る訳ないだろ!』


 巨大な影が大吉達にかかる。


「大吉様ーっ!」


 空を埋め尽くすのは巨大な根。

 要塞世界樹バウルだ。


「……エルフィン」

「はい」

「打ち返せ」

「はい」


 べちこーん!


「なぜですかーっ!」

「でかすぎるからだーっ!」


 お前ら、加減を知りやがれ。

 飛び去っていくバウルに、大吉は叫んだ。

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