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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-3.その他、いろいろ現れる
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2.二度ある事は三度ある。世の中とはそんなもの

「おう安住テレビ見たぞ。あいつら上手くやってるようじゃねーか」

「はい」


 麻田宅。

 縁側で茶を飲みながら、麻田の言葉に安住が頷いた。

 黒軍による滞った物流の補償。

 このあたりは安住と麻田の意向だ。

 お前らが出てきた分の経済的損失を支払えと、遅延しまくった物流と人の往来に関する補償を求めたのだ。

 今の産業は材料調達が安定している前提で運用されているものが多い。

 中には生産ラインを一度止めると再稼働に莫大な経費がかかる工場もあり、こういった工場は二十四時間休む事なく稼働している。

 しかしそんな工場でも材料が届かなければ止めざるを得ない。

 大吉は運送会社勤務。

 材料を届ける立場だから苦情はいつも聞いている。

 大吉の説得を受けた黒軍は大吉様にご迷惑がかかってはと要求を飲み、今回の期間限定の物流支援が始まった。

 はじめは怖いと言っていた船会社だが、荷を運べないままでは稼げない。

 大丈夫だからと言う政府の言葉を信じて港を出てみれば、要塞世界樹バウルと枝に抱えられた護衛艦こんごう。

 港を出た船の乗組員は自衛隊ですらこのザマなのかと頭を抱え、自衛隊員と異形の怪物が談笑する様を見て怪獣映画撮影の休憩時間か? と首を傾げる。

 しかし諦めて枝に抱えられてみれば快適そのもの。

 バウルはしゅぱたんと太平洋を駆け、半日もかからずに太平洋を渡ってしまった。

 相手の港は検疫だの何だのと大騒ぎだったが、それに数日かけてもお釣りがくる。

 船が二十ノットで進むならば時速三十七キロ。時速およそ五千キロのバウルの百分の一にもならない。

 物を運ぶだけの移動時間は排除出来ない無駄時間だから荷主も大喜び。

 慣れてしまえば超速達で燃料費はタダ。港では荷積みもやってくれる。

 こんなお得案件に乗らない訳がない。

 船会社はこぞってバウルに乗り、港に溜まった品を運び始めた。

 今では港に溜まった荷物もすっかり無くなり、船は荷待ち状態。

 値引き合戦が始まっている有様であった。


「黒軍王ネーロ、いえ井出大吉さんが理解ある方で助かりました」

「まあ、出て来ちまったもんは仕方ねぇからな。あっちの方は?」

「各国からは良い返事をいただいておりますよ」

「まあ、当たり前だわなぁ」


 バウル達黒軍に安住と麻田が補償を提案したのは、別の狙いがある。

 世界に黒軍の圧倒的な能力を晒すためだ。

 バウルが島サイズでマッハ四。

 そして竜軍はそれ以上。

 さらにバウルの中には未知の能力を持つ他の軍団もいる。

 最先端の軍事兵器すら凌駕する謎の存在が世界を飛び回るのだ。いくらフレンドリーでも警戒するのは当然。

 日本に殺到する『あれは何だ?』という叫びにも似た問いに安住と麻田が提案したのが『オカルト戦力制限条約』だ。


「その井出って奴の所に、すでに一人いたんだろ?」

「はい。バウルと黒軍よりも強い少女が一人。光の黒騎士エルフィン・グランティーナという少女が確認されました」

「島サイズが一撃の女性とか、まったく漫画だなぁ」

「写真を見る限り普通の少女なのですから、まったく漫画ですね」

「ま、二度ある事は三度あるって言うからな。今後こんな奴等が出てきた時に増長する奴らが出ないとも限らねぇ。お帰り願えねぇなら今のうちに制限付けとかねぇと大変だ」


 唯一オカルト戦力を持つ国が、自らそれを制限する条約を持ち出したのだ。

 今はまだ交渉中だが提案した各国はすべて乗り気。

 こんなオカルトでパワーバランスが崩れてはたまったものではない。年内に交渉がまとまり条約が締結される事だろう。

 しかしこんな条約を結んだところで存在する事は変わらない。

 強力な抑止力としては機能するのだ。専守防衛を旨とする日本国からすれば好きなだけしゅぱたんと駆けてくれであった。


「で、諜報活動は?」

「活発化していますね」


 しゅぱたんと表に出るものもあれば、裏に隠れるものもある。

 日本国内は世界中の諜報機関が絶賛諜報活動中。

 各国は条約に前向きな態度の裏で、黒軍の正体を躍起になって探っているのだ。


「ですが最近、恐ろしく正確な密告が増えたそうです」


 安住が封筒から資料を出し、麻田に見せる。

 そこには『誰かが機密を持って何時何分にここを訪れる』とか『二分前、このパソコンにウィルスが仕掛けられた』とか『今日、食堂でカレー特盛りを注文する男の特盛りにはマイクロチップが入っている』とか、そこまで掴んでいるならお前が何とかしてくれよという密告が数ページにわたって記されている。

 麻田は茶を飲み、安住に言った。


「我が国にこんなデキる諜報機関、あったか?」

「ありませんよ。というか世界中のどこを探しても無いんじゃないですかね」

「つまり、俺らの知らない所にもう『いるのか』」

「そうなります。まったくオカルトですね」


 世界中の諜報機関を出し抜くだけの何者かが存在する。 

 おそらくそれは『人』ではなくオカルト存在。

 そしてそんなオカルトはこれからも現れ続けるだろう。

 安住と麻田はそう考えていた。


 そして二人が考えている通り……


 ある者は森で、またある者は地の底で、空の彼方で、社会に紛れて……

 ひっそりと静かに、求める者を探していたのだ。

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