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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
1-3.その他、いろいろ現れる
22/142

1.大吉アパート、オカルトプレミアム

「おはよう」

「「「おはようございます」」」


 朝、大吉のアパート。

 いつものように起きた大吉は、いつものように三者から朝の挨拶を受けた。

 エルフィン、フォルテ、そして隣人のあやめだ。


「大吉様、朝食の準備は出来ております」

「ありがとう」


 黒軍が大吉を見つけて二週間。オカルトもすでに日常。

 大吉はいつものように食卓につく。


「「「「いただきます」」」」

「まずはクロマメ!」

「この黒さ、素晴らしいですわ」

「さすがあやめ! クロマメマイスター」

「ありがとうございます」

「そういえばフォルテ、黒軍に黒料理は無いのですか?」

「ブリリアント様とバウル様が炭を黒い素晴らしいと言って食べてますけど」

「炭は料理じゃねえ。あいつら悪食過ぎるだろ」


 皆で手を合わせて食べる食事は賑やかだ。

 フォルテは今、空室であった隣の部屋に引っ越している。

 エルフィンと二人一部屋ではさすがに色々困るだろうと大吉も思っていたのだが、深夜に騒いでいた時に二人の間で何かしらの合意をしたらしい。

 エルフィンが傍にいれば大吉様は絶対安全と部屋の合鍵を大吉に求め、空き部屋だった隣の部屋へとあっさり引っ越した。

 なお、手続き上の家主は怪獣担当省庁となった防衛省。

 二部屋分の家賃を払わなくて良かったと思う大吉だ。


「今日のぬか漬けも絶品ですよ」


 相変わらず、あやめはなぜかいる。

 なんでいるんですかと言うのも面倒になった大吉も放置。

 そんなあやめはフォルテも黒軍もやっぱりスルーだ。

 どうなっているフラットウェスト社第一開発部? 

 お前の所のゲームタイトルだぞ仕事しろよ、と首を傾げる大吉だ。


「あ、大吉さんテレビつけますね」

「どうぞ」


 あやめがテレビのスイッチを入れると、今日も相変わらずの話題をやっていた。


『はい! 本日は民放初上陸。太平洋をしゅぱたんと駆ける要塞世界樹バウルにお邪魔していまーす』

「あ、とうとうバウルに上陸許可出たんですね」


 ぬか漬けをポリポリ食べながらあやめが言う。

 今、テレビはバウルでもちきりだ。

 マッハ四でしゅぱたんと駆けるバウルはその巨大さもあって全世界の注目の的。

 全世界のメディアがこぞってバウルに上陸して騒いでいた。


『今、バウルはハワイ沖をマッハ四で駆けてます。時速およそ五千キロ。船や自動車はおろか、現役のどの戦闘機よりも速く駆けるんですよー』


 それでも根の上、つまり野外でのほほんとロケ出来るオカルト。

 波風立てずに駆けるバウルの超絶能力だ。


「あのくらいなら私にも出来ますよ」

「だろうね」


 エルフィンの言葉を大吉はさらりと流す。

 カメラがパンすると枝で支えられたタンカーや運搬船がずらりと並ぶ画像だ。


『そしてバウルが枝で抱えるのが、航海の予定が遅れた船舶でーす』

「……すごいな」


 枝の絡まった船舶が宙に浮かんで段積みになっている様はSFの宇宙港の如く。排水量十万トンを超えるような巨大な船舶も島サイズのバウルにはこの程度だ。


「あのくらいなら私にも出来ますよ」

「いや、エルフィンに出来るのは分かってるから」


 エルフィンの言葉を大吉はまたさらりと流す。


『バウルが出現した時に止まってしまった物流の補償を、バウルの申し出により自ら行っている訳ですね。おかげで物流の穴は最小限に抑えられておりますー』


 今は太平洋を駆けているが大西洋もインド洋も陸地も駆ける。

 寄港地への補償とかもするのかなぁ……と、大吉が画面を眺めていると他の船舶と同じように枝に抱えられた軍艦が画面に現れた。


『そして自衛隊の護衛艦こんごうでーす。怪獣映画みたいですねーっ』

『『『たーすーけーてー』』』


 こんごうがバウルの枝に抱えられる姿は、さながら怪獣映画のやられ役。

 番組に頼まれたのだろう、甲板で手を振る自衛隊員も笑顔でノリノリだ。


『さらに滑走路も無いのに飛行機も大丈夫なんですよー』


 さらにカメラがパンすると、枝に抱えられた航空機や自衛隊のF-15戦闘機だ。


『バウルはマッハ四。どんな航空機よりも速く駆けますから枝で飛んでいる航空機をキャッチ出来るし、投げて離陸させる事も出来るんですよー』

「なんて便利な」


 枝アレスティングワイヤーに枝カタパルト。まるで空母だ。

 航空機に滑走路が必要なのは空を飛ぶには速度が必要だからだ。

 空を飛ぶ速度と陸上で安全な速度の間を何とかするのが滑走路。

 空母は様々な装備で無理矢理滑走路を短くしているのだが、バウルは枝でそれを実現しているという訳だ。


「あのくらい私にもできます!」

「張り合う所が違いますよエルフィン。バウル様より強い事を自慢してどうするのですか!」

「しまった! すごいですさすがばうるすごいかないませんすごいー」

「いや、今さらヨワヨワ主張しても遅いから」


 今ごろハイパワーオカルトを誤魔化してどうする。

 ショックなエルフィンを大吉はまたまたさらりと流してテレビを見れば、今度は鱗キラキラ野郎の登場だ。


『そしてバウル達『黒軍』の代表代行、金剛竜ブリリアントですー。空を飛ぶ竜軍はバウルと同じように、様々な航空機の欠航の補償を行っていまーす』

『うむ』

「この人、身体張ってるなぁ」


 全長二十メートル超。シロナガスクジラとタメを張るサイズの竜にマイクを向ける女性に感心する大吉だ。

 まあ、それもこれもブリリアントが言葉を理解しフレンドリーなおかげだろう。

 飼われた猛獣みたいなもの。危険でも可愛いとかすごいとかの扱いなのだ。


『我らの王はいつも仰っていた。『罪を憎んで人を憎まず。俺にまかせろ。そして信じてついてこい』と』

『はぁ……』

「よくわからんぞブリリアント。ごちそうさま」


 相変わらず突っ伏して震えているあやめを大吉はスルー。

 大吉は運送会社の制服に着替えて部屋を出た。


「私も黒軍も大吉様を全力で支えますのに、大吉様は働くのですね」

「当たり前だろ。オカルトなんていつ無くなるかわからん」

「ええっ!」


 そしてアパートの玄関を抜ければ頭上から挨拶だ。


「「「「おはようございますーっ」」」」


 竜軍のガーゴイルである。

 アパートの角にガーゴイルが陣取り、下に向けて口をあけているのだ。


「……お前ら、何してるんだ?」

「ブリリアント様の命です」「俺ら元は雨といですから」「お気になさらず」


 いやまあ、確かにお前ら元は雨といだけどさ。

 何とも不気味な外観となった大吉アパート。

 そして玄関を掃除している防衛省の谷崎と自衛隊に、大吉も苦笑いだ。


「あ、井出さんおはようございます」

「おはようございます」


 防衛省の谷崎は今、このアパート勤務だ。

 フォルテの部屋が黒軍の大使館のような扱いとなっており、政府との交渉の窓口となっているのだ。

 普通なら政府が大吉を何とかする所だが、相手はハイパワーオカルト。

 刺激しないように配慮すると大吉を中心に周囲が回る天動説世界となる。

 生活を変えたくないと言う大吉の都合に、谷崎は振り回されている訳だ。


「なんか、すみません」

「これも仕事ですから。行ってらっしゃい」


 大吉は谷崎と自衛隊の皆に頭を下げて、玄関を出る。

 そして出勤途中の不動産屋の窓ガラスに貼られた物件に、大吉は叫ぶのだ。


『自衛隊とオカルトの二十四時間完璧セキュリティ!』

「商魂たくましいな!」


 まさにオカルトプレミアム。

 大吉アパート周辺の賃貸価格が跳ね上がっていた。

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