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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
3-3.世界が二人を分かつまで
139/142

14.偉大なる黒の十四軍の長たる黒、井出大吉が命じる!

「くっ……!」


 輝き転送した大吉は、空間が激しく荒れ狂う嵐の中にいた。

 大吉、初めての輝き転送。

 黒の十四軍の皆は一瞬で転送していたが大吉は輝き転送ビギナー。

 それもエクソダス世界よりもはるかに強固なこの世界での輝き転送。初めて行く場所で道に迷うが如く、大吉は空間をさまよう。

 大吉の拳の輝きに空間が歪み、空間が全身に絡みつく。

 まるで嵐の海で溺れているようだ……輝く拳の先が全く見えない空間の嵐の中、大吉はひたすら願った。


 皆の元へ、俺を思ってくれたあいつらの元へ……!


 エクソダス世界における力の行使は、その者の願いの力。

 これがやりたい、あれがやりたいと願う力が世界を動かす。

 その願いが強いほど世界は動き、明確なほど願いは叶う。


「貫けええぇえええええっ!」


 ぺっかーっ。

 大吉の拳が最後の輝きを見せ、大吉に絡みついた空間を切り裂きねじ伏せる。

 静かになった空間の先、大吉は皆の姿を見出した。


「エルフィン!」

「大吉……様!」


 大吉が現れたのはエルフィン達の頭上数十メートル。

 エルフィンは輝き転送してきた大吉に驚き、頬を染め、悲しげに首を振る。

 そして大吉に手をかざし、静かに輝き呟いた。


「輝き、転送……」

「そりゃないだろ!」


 エルフィンの輝きに大吉が叫ぶ。

 大吉のようなビギナー輝き転送ではないベテラン輝き転送。

 迫り来る輝きをはじき返せる輝きは、もう大吉には残っていない。

 輝きをかき集めてここまで来たのに戻されてしまうのか!

 誰の心も、俺の心すらも伝える事も出来ずに!

 絶望する大吉。

 が、しかし……エルフィンの輝きはスルリと大吉をスルーした。


「あやめ!」

「輝きスルーいぇい!」


 エルフィンの叫びにあやめが笑う。

 輝きスルー。

 第十四軍諜報軍団長アイリス・メイこと五月あやめの必殺スルーにエルフィンはあやめを睨み、そして……子供のような輝き言い争いが始まった。


「輝きスルースルー輝き転送!」

「スルースルースルーいぇい!」

「輝きスルースルースルースルー輝き転送!」

「スルースルースルースルースルーいぇい!」

「輝きあやめの輝きを完全無効化して輝き転送!」

「ダメでするぅーっ!」

「輝きダメでするぅー無効化して輝き転送!」

「それもダメでするぅーっ!」

「後出しジャンケン! 輝き後出しジャンケン!」


 ぺかぺかぺかぺかするするするするするするするするするするするする……

 子供の頃にこんな言い争い、よくやったなぁ……無意味に言葉をこねくり回す不毛なスルー対決に大吉は呆れたがこれこそ黒の十四軍。デタラメだ。


「それもこれもあれもダメでするぅー……あいたっ! 舌噛みました!」

「私の輝き滑舌の勝利です!」


 ぺっかー。

 しかし、やはりエルフィンのデタラメはあやめでもかなわない。

 エルフィンは輝き強者。伊達にデタラメ一号と恐れられてはいないのだ。

 悶えるあやめに勝利宣言したエルフィンは、再び大吉に向けて輝き告げる。


「大吉様、お元気で……!」

「偉大なる……」


 大吉にはエルフィンの輝きに対抗する力は無い。

 しかしあやめとエルフィン、バカらしくも凄まじい輝き応酬の中に大吉は勝利の鍵を見た。

 願いが強いほど世界は動き、明確なほど願いは叶うもの。


「偉大なる黒の十四軍の長たる黒、井出大吉が命じる!」

「「「「「「「「「「「「「「黒!」」」」」」」」」」」」」」


 黒! 偉大な黒! 我らが長たる黒!

 大吉の言葉に皆が叫び、期待に満ちた瞳で大吉を見上げる。

 願いとは夢、夢とは希望。

 それは誰の心の中にもある当たり前のもの。

 だから強い願いに人々は惹かれ、明確な願いを胸に進む者に力を貸す。

 そうやって願いは世界を動かすのだ。

 お前ら、俺の願いを聴けーっ!

 大吉は願いの全てを言葉に乗せ、叫んだ。




「全軍、俺の邪魔をするエルフィンの足を引っ張れぇい!」




「「「「「「「「「「「「「おいでませー!」」」」」」」」」」」」」

「ええーっ!」


 大吉の号令にエルフィン、悲鳴。

 その他、歓喜狂乱黒島歓迎音頭だ。


「ええっ! 私、賊軍ですか? 第一軍近衛軍なのに賊軍!?」

「偉大なる黒の十四軍の長たる黒に逆らったのだからな。賊軍に決まってる」

「大吉様のお墨付きだ! この賊軍め!」

「大吉様が自らを黒とおっしゃったのです。惑軍、全力で足を引っ張りなさい!」

「大吉様公認でエルフィンをドツける機会がやって来ようとは……!」

「黒、クロ、最高」

「本当はやりたくありませんが大吉様の命でございます。ここは涙を呑んで思いっきり足を引っ張ってやろうではありませんか皆の者やっちまえーっ!」

「デタラメ一号を、こてんぱんです!」

「大吉しゃまの命令でしゅ」「三軍合体です」「やっちまえですぅ」

「クーゲルシュライバー、全兵装解放」『(#゜Д゜)ゴルァ!! 』

「わての秘蔵の酒、しこたま飲ませたるでぇ!」『『『ヘベレケーッ!』』』

「いぇい!」


 全軍、大吉の号令でエルフィンに殺到する。


 おいでまーせー、おいでまーせー、くろーしまー……


 皆、黒島歓迎音頭。

 エルフィン四面楚歌、いや四面黒島歓迎音頭。

 全軍の攻撃を輝きで防ぎながら、エルフィンが叫ぶ。


「アイリーン、マリー、エミリ! 最終決戦でも合体しなかったのになぜ今さら合体なのですか!」

「ノリでしゅ」「ガキーンです」「ズゴーンですぅ」

「そしてなぜ私一人だけ賊軍なのですか!」

「「「「「「「「「「「「「大吉様が言ったから」」」」」」」」」」」」」

「我々は良い夢を見たのだと、皆も納得したではありませんか!」

「「「「「「「「「「「「「はぁ?」」」」」」」」」」」」」

「すっとぼけ! 輝きすっとぼけ!」

「「「「「「「「「「「「「夢より大吉様!」」」」」」」」」」」」」

「くうっ! 私だってそっちがいいのに!」


 おいでまーせー、おいでまーせー、くろーしまー……


「歌わないで下さいっ!」

「「「「「「「「「「「「「あいたっ!」」」」」」」」」」」」」


 べちこーん! 

 エルフィンの輝きが皆を吹き飛ばす。

 さすがパーフェクトエルフィン。十三軍相手でも圧倒的だ。

 こてんぱんとなって周囲に転がった皆を見回しエルフィンは勝利を宣言する。


「いかに全軍が束になろうと『まだ勝負はついていません』……あいたっ!」


 べちこーん!

 しかし全軍を圧倒したエルフィン、何者かに殴られて地を転がる。

 ユラリ……エルフィンの影から立ち上がるのは、黒いエルフィン。


「フフフ……今こそ私の黒が輝く時ですね!」

「「「「「「「「「「「「「「オルタ!」」」」」」」」」」」」」」

「ええーっ!」


 エルフィン、まさかの自分に裏切られる。

 こてんぱんから立ち直った皆が叫んだ。


「これで勝負は振り出しに戻った!」

「バカ対決、第二ラウンドか!」

「オルタならエルフィンと互角! いけますわ!」

「勝機が、見えた!」

「いけ、いけ」

「敵にすると恐ろしいバカげふんげふんですが味方ならば頼もしいですな!」

「デタラメ一号オルタ、やっちまえです!」

「オルタナティブでしゅ」「Oじゃないです」「Aですぅ」

「バカリベンジですね」

「バカ万歳やでぇ!」『『『ヤッタレーッ!』』』

「いぇい!」

「……皆さん、私のトラウマをえぐらないでください」

「「「「「「「「「「「「「すみません」」」」」」」」」」」」」


 がっし!

 皆の声援を力にオルタがエルフィンと取っ組み合う。

 先程のバカ勝負じゃなかった名勝負を繰り広げたエルフィンとオルタの輝きは互角。二人? の間で輝きが激突する。

 一進一退の輝き攻防だ。


「まさかオルタが裏切るとは。しかしまだ互角! 互角なのです!」

「そうですね。しかし忘れてはいませんかエルフィン」

「何をですか? その他は誤差の範囲内ですよ?」

「「「「「「「「「「「「「その他!」」」」」」」」」」」」」

「その他の事ではありません」

「「「「「「「「「「「「「ひどい!」」」」」」」」」」」」」

「では、何をですか!?」

「この場には貴方の唯一絶対の弱点がいらっしゃるという事を。それをぶつければたとえ貴方といえどもひとたまりもないという事を!」


 ぺっか。

 オルタの言葉に皆の輝き直感が発動する。


「そうか! 大吉様か!」

「大吉様ミサイルだ!」

「大吉様をエルフィンにぶつけるのですね!」

「なるほど! その手があったか!」

「勝利、確実」

「ここまでいらした大吉様のお覚悟、その身にしかと刻むのです!」

「デタラメ一号も大吉様には弱いです!」

「投げるでしゅ!」「ぶん投げです!」「加速ですぅ!」

「我らの大吉様が、ついに光を超えるのですね!」『(;´Д`)ハァハァ』

「大吉様で宇宙がヤバいでぇ!」『『『スゴイーッ!』』』

「よぉし全軍! 輝き大吉様ミサイルフォーメーションですいぇい!」


 しゅばっ!

 皆が大吉の周囲に陣取り妙なポーズを取る。

 フォルテ、エリザベス、セカンド、あやめが大吉に寄り添い、その周囲をブリリアント、ガトラス、ボルンガ、ビルヒムが固め、前面にはアイリーン、マリー、エミリの幼女組とグレムリン率いるミリアが展開して砲身となる。

 そして大吉の背後には合体ロボ、さらに背後にはバウル、さらにさらに背後にはクーゲルシュライバー率いる黒の艦隊。

 こんな空間どこにあったんだよと首を傾げる大吉だが黒の十四軍は何でもかんでも輝き無双。空間をゴリ押すくらい朝飯前だ。

 兄と弟がミサイルになる必殺技の特撮、あったなぁ……次の話では元気な姿を見せていたし、大丈夫だよな? だよな??

 と、戦々恐々の大吉だが尻込みしている場合ではない。

 大吉は腹をくくり、皆に己の全てを委ねる。


「よぅしお前ら! 俺を粉々にするつもりでぶち当てろ!」

「「「「「「「「「「「「「クロマメーッ!」」」」」」」」」」」」」


 べべべべべべべべべべべべべっかーっ!!!!!!!!!!!!!

 皆の激しい輝きが大吉を包む。

 十三軍の輝きを結集した輝き大吉様ミサイルの輝きだ。

 エルフィン、受け止めてくださいお願いします

 というか避けられたら俺が死にます。ついでに宇宙がヤバイかもしれません。

 輝きに包まれながら大吉が願い、オルタと対峙するエルフィンを見据える。

 エルフィンが叫んだ。


「大吉様はこの世界のお方。私達の世界のお方ではないのです!」

「それの何が問題だ!」


 大吉も負けじと叫ぶ。


「世界の皆と一緒にいられないのですよ! 大問題ではありませんか!」

「これまでだってアパートで一人暮らしだった! 輝き異世界転送で盆と正月に戻れれば大した問題じゃねえ!」

「いずれは戻れなくなるかもしれません!」

「その時はその時だ! 独り立ちだと門出を祝ってもらうさ!」


 人生は出会いと別れの連続。

 出会いと別れを自ら選び、自分の周囲を豊かなものに変えていく。

 それが人生。

 切った方が良い縁もあれば、切ってはいけない縁もある。

 この縁は、絶対に切ってはいけない縁だ。

 そう決めたからこそ、大吉はここにいるのだ。


「さっきから俺の事だけを言ってるが、お前は大丈夫なのかエルフィン!」

「大丈夫です!」「ムリです」


 オルタ、正直。


「お前をこのまま帰したら泣いて世界を滅ぼしかねん!」

「そんな事ありません!」「ムリムリ。絶対滅ぼします」


 オルタ、超正直。


「私の大吉様への思いがわからないのですかオルタ!」

「貴方こそ大吉様の私達への思いがわからないのですかエルフィン! ほーら、正直になるのですエルフィン・グランティーナ。大吉様と一緒にいたーい、大吉様と一緒にハッピーライフを過ごしたーい」

「そんな事は当たり前です!」


 さすが同一人物。エルフィンの心の声がダダ漏れだ。


「口では何を言っても、オルタは正直よのぉ」

「その言い方はやめい」


 大吉、ブリリアントにツッコミ。


「くううっ……オルタが、勝手に……!」

「その言い方もやめい」


 大吉、エルフィンにもツッコミ。


「輝き痴話喧嘩でしゅ」「犬も食わないです」「エリザベスでもダメですぅ」

「私は狼です!」

「痴話喧嘩やめい」


 大吉、幼女ズ&エリザベスにもツッコミ。


「発射準備完了です! いぇい!」


 皆の願いを、何よりも俺の願いを受け止めろエルフィン!

 あやめの言葉に大吉は叫ぶ。


「ぶちかませーっ!」

「「「「「「「「「「「「「輝き、大吉様ミサイル!」」」」」」」」」」」」」


 べべべべべべべべべべべべべぇちこぉーんっ!!!!!!!!!!!!!


「大吉様ーっ!」


 光となって飛ぶ大吉をエルフィンが受け止める。

 避ければ大吉は粉みじん。エルフィンが避けようはずもない。

 大吉、エルフィンと光速合体。

 全身でエルフィンを確保、いわゆるだいしゅきホールド状態の大吉は受け止めたエルフィンにゴリ押し宣言した。


「俺の勝ちだ! それでいいなエルフィン!」

「はい!」

「盆と正月には帰省するぞ! 皆と約束したからな!」

「お供します!」

「そして俺は何もしないぞ! やったらお前らの世界を食っちまうからな!」

「皆で養います!」

「よぉし、行くぞエルフィン!」

「はい!」

「着いたら十年前の夢の続きだ! わかったか!」

「は……はい!」




 世界から黒島が、輝きが消えていく。

 そして世界が本来の静けさを取り戻した頃、去り行く者達の言葉が空に響いた。


「黒島オカルト労働組合、スローガン!」

「「「「「「「「「「「「「「食う、寝る、遊ぶ」」」」」」」」」」」」」」

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[一言] これぞ君臨すれど統治はせず・・・!(なんか違う気がする
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