12.エルフィン、ひとつになる
「「輝き、合体!」」
黒島、地下九十九階。
どちらが黒かで揉めていたエルフィンとオルタが、ついに合体を開始した。
大吉と皆の前で行われるエルフィンとエルフィン・オルタの融合。
最強な二人のぺっかーが混ざり、溶け合って強く輝く。
眩しい、超眩しい。
「「光と黒が両方そなわり最強に!」」
「……いや、お前ら合体前から最強だろ?」
「「大吉様はハエが混ざらないよう見張っていて下さい」」
「暇なのか? 合体中は暇なのか?」
「「アップデート中は電源を切らないで下さい!」」
「暇なんだな? 超暇なんだな?」
「「大吉様との会話が二人の対等黒合体に必要不可欠なのです!」」
「俺は糊か? つなぎか?」
ついでに合体、超うるさい。
いつも一瞬で分割と合体をしていたエルフィンだが今回は六年ぶりの半身との合体。あらゆる事象を輝き一発でねじ伏せるエルフィンも慎重だ。
OSのアップデートをたまにやると時間がやたらかかったりするのと同じ。細かな違いのすり合わせに手間がかかっているのだ。
「この合体の輝き……今でも一割こてんぱんなのにどうなるのだ!?」
「指先ひとつでこてんぱんか?」
「もはや冗談みたいな存在だな」
「つよ、すぎ」
「強い! 絶対に強い! コウモリサーン!」
そんな輝き合体を前に、怪獣組は今から戦々恐々。
「「私が合体した暁には怪獣組など視線でこてんぱんです」」
「「「「「ひどい!」」」」」
「まあお前らのは単なる舌禍だから、軽口叩かなければいいだけだな」
「「「「「やめない!」」」」」
しかし怪獣組、今までの態度を改める気は無いらしい。
まあ、仲良くケンカしてくれ。
と、猫とネズミのアニメを思い出して大吉は笑う。
あれも猫が酷いやられっぷりだったがそれでも仲良し? だった。
怪獣組とエルフィンもそんな感じだろう。
こてんぱんで済む限り交流は続くのだ。
そんな事を考えながら見つめる大吉の視線の先でエルフィンとオルタの輝きは絡み合い、やがて一つの輝きとなる。
べっかーっ!
強烈な輝きのもと、ひとつとなったエルフィンが叫んだ。
「爆誕! パーフェクトエルフィン!」
「「「「「ん? パーエルフィン?」」」」」
「はぁ!?」
べぇちこーんっ!
「「「「「あいたっ!」」」」」
「お前ら、もうそのネタから離れろよ……」
こりない怪獣組、エルフィンに視線こてんぱん。
そして合体を終了したエルフィン、フォルテに叫ぶ。
「フォルテ! ひとつになった今なら私の真の女力がわかるはず!」
「いきなりマイナス∞が出ましたわ! 無限ダメ力マシマシですわ!」
「ええっ!? 前回は9が延々と続いていたのにいきなり∞!」
「デタラメ一号が超デタラメ一号にレベルアップです!」
「マシマシでしゅ」「∞二倍です」「二倍しても∞ですぅ」
「同じものを足し合わせても増えるだけ。マイナス二倍」
「あちゃー。掛け算じゃなかったかー」『『『タシザンーッ!』』』
無限ダメ力に無限ダメ力を足してもやっぱり無限ダメ力。
これでプラスになったらオルタのプラスがエルフィンのマイナスを上回っていた事になる。勝負はオルタの圧勝で終わっていただろう。
と、納得する大吉の横でコタツミカンなあやめが笑う。
「そうです×です! カップリングです! タチとウケですいぇい!」
「タチウケやめれ……でもまあ、そんなものかもしれないな」
言い方はアレだがあやめの言葉はそれほど的外れではない。
同じものを合わせても大きくなるだけで方向は変わらない。
違うものと組み合わせるから長所を伸ばしたり短所を減らしたり出来る。
そして互いに力を出し合う事であらゆる方向に進む事が出来るようになる。
だから人は誰かと組んで組織を作り、その組織の力をもって己の力を高めるのだ。
「その通りです大吉様! ですから我らは小言をやめませんぞ!」
「俺らが黙っちまったら、コイツ何するかわからんからな」
「そのためならこてんぱんの千や二千、耐えてみせましょう」
「がん、ばる」
「我々黒の十四軍が束になってかかればエルフィンも何とか……ナントカ……フォルテ殿ーっ!」
「ええっ!? 私にエルフィンをぶん投げる気なのですか?」
「お願いします師匠っ!」
「あなたのような出来の悪い弟子はいりません! フォルテで結構!」
「そんなーっ!」
「さすがデタラメ一号です!」
「一人では無理でしゅ」「三人でも無理です」「全員なら出来るかもですぅ」
「私達も鍛えねばなりませんね」
「いやぁ、あそこまでは絶対ムリやでぇ」『『『デタラメーッ!』』』
「いぇい!」
黒の十四軍はエルフィンの仲間。
視線ひとつでこてんぱんな存在でも大吉を頂く志を同じくする者達だ。これからもうまくやっていく事だろう。
人々も、組織も、世界もそうやってバランスを保ちながら進んでいくのだ。
「……頼むよ、お前ら」
「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」
「大吉様までっ!」
俺らの世界とエクソダス世界もそんな関係なのかもしれないな。
と、大吉は主こてんぱんな闇の渦を見て思う。
互いの世界を食い合う事で、力を得る関係。
上手く使えば互いの世界の繁栄にもっと貢献出来ただろう。
しかし最初に世界を渡ったVは世界を食っている事を隠して振る舞い、大吉達の世界を一方的に貪った。
大吉達の世界が喜ぶオカルト貢献など所詮はおこぼれ。食われた世界に比べれば大した事はない。
「大吉様。この渦いかがなさいますか?」
「潰そう」
オカルトにも対価がいるという、新たな関係の構築が必要だ。
今時は医者も手術や投薬のメリットとデメリットを説明するもの。この関係も良い事ばかりでは無いと世界に知らしめねばならない。
Vは倒れた。
しかし第二第三のVが現れないとは限らない。
うまい話には裏がある事を承知で手を取り合うならそれも良し。ダメなら縁が無かったという事だ。
ここは、仕切り直しだ。
大吉の決定にエルフィンと皆が力強く頷く。
「わかりました……大吉様」
「ん?」
そして……べべべべべべべべべべべべべべっかーっ!
強烈な輝きが大吉の視線を潰す。
何もかもが真っ白になる輝きの中、大吉はエルフィンと皆の声を聞いた。
さようなら。
「……っ!」
輝きから解放された時、大吉は航行する護衛艦こんごうの飛行甲板にいた。
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