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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
3-3.世界が二人を分かつまで
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7.黒の十四軍、Vと対峙する

「ついに、戻って来たな」

「これが闇の渦……私達と大吉様の世界を結んだ道」


 ぺっかぺぺっかぺー。

 大吉がエクソダス世界に旅立った地下九十九階、闇の渦を前に大吉とエルフィンが呟いた。

 闇の渦。

 この世界とエクソダス世界を結び、夢とオカルトを使い世界を食らう門。

 かつてあやめに導かれてここに来た皆は今、自らの力でここに立っている。

 闇の渦に対峙する黒の十四軍の皆は輝き、チラついている。

 Vの輝き追放と黒の十四軍の輝き異世界転送の輝き殴り合いの結果だ。追放と転送が超高速で行われ、消失と出現を繰り返しチラついているのだ。

 なんか昔のゲームみたいだな……大吉はそんな事を思いながら、闇の渦に立ち塞がる存在を見た。


「Vの範囲輝き追放にここまで対抗できるとは、さすがは黒の十四軍」

「私はそんな輝き追放も華麗にスルーッ! いぇい!」

「いぇい! じゃないでしょあやめさん……」


 闇の渦を背に黒の十四軍と対峙するのは、黒曜の騎士O。

 そして二者の間に、コタツミカンなあやめだ。

 あやめ、どうやら今まで輝き追放をスルーしまくっていたらしい。

 今も輝き殴り合いをしているVOIDと黒の十四軍の間にいて、無風。

 この状況でのんびりコタツミカン。

 緊迫感台無し。Oのため息半端無い。


「まあ、このコタツミカンはもうスルーしましょう。無駄ですし」

「あれぇ?」


 どうしようも無いのでスルーする事に決めたらしい。Oはあやめから視線を外すと大吉達を見た。


「黒の十四軍。あなた達の目的は私達VOIDならびにこの道の排除、それでよろしいですね?」

「そうだ」


 問いに大吉が頷くと、次にOは黒の十四軍に聞く。


「先程エルフィンが言った通り、この闇の渦は私達の世界とこの世界を結ぶ道。その道に導かれたあなた方がこの道を潰すと言うのですね? ここを潰せば二つの世界のつながりが失われ、輝き異世界転送で渡る事すら出来なくなるかもしれません。それでも良いと言うのですね?」

「私達は素晴らしい、良い夢を見たのです」

「その良い夢は、私達のような選ばれた者だけの特権なのですか? 力を持つ一部の者達だけしか享受出来ないものなのですか? 私達の世界にはまだまだ多くの者が貴方達の言う『良い夢』を夢見ているというのに、それを断つのですか?」

「それが大吉様のご意志ならば、私達は従うのみ」


 エルフィンが答え、皆が頷く。

 Oはエルフィンの答えを受け、再び大吉に聞いた。


「今も誰一人として不幸になってはいないのに?」

「今のところは、だろう? お前達が俺達を本気で食う気になったらその関係はすぐに終わる」

「私達の中にそれをする者などいませんよ。それに善意が枯れれば縁を切ります。黒島にもそういう者がいたでしょう?」

「それも今のところは、だろう?」


 その気になればエクソダスの使用者を根こそぎ食らう事が出来る。

 それをしていないのは世界を渡った者の善意、ただそれだけだ。

 エクソダス世界の善意に頼りきりな危うい関係は、今のままでは確実に破綻する。一方的な善意はやがて枯れるのだ。


「それにお前達だけじゃなく、俺達もお前らを食えるからな」


 この世界でただ一人、世界を渡った大吉は世界を食って力を使った。

 谷崎にこの事を伝えなかったのは、世界がそれを知れば必ず欲する事が分かっていたからだ。


「確かに世界を渡ったオカルト達は食べないかもしれない。しかし俺達は違う。俺はお前達の世界を食べてオカルト力を使った。お前達の力に頼りはじめた世界がこれを知ったら皆こぞって世界を渡り、世界を食い散らかすだろう」

「輝き異世界転送が出来る者などこの世界にいないのにどうやって? 門はVが管理しておりますし、我々に敵対する黒の十四軍とて自らの世界を生け贄に捧げる事はしないでしょう」

「いずれ現れるさ。俺達以外に輝き異世界転送が会得出来ないとなぜ言える?」


 大吉達の世界にとってエクソダス世界は『ゲーム世界』。

 オカルト達とは違って大吉達の世界にエクソダス世界に対する善意は少ない。

 都合良く利用しているだけの者達がそれを知れば、必ずエクソダス世界に渡り遠慮無く世界を食う。

 世界がオカルトを求めるのは愛でも善意でもなく、欲望。

 今以上に愛や善意を都合良く使い、欲望を満たす事だろう。


「互いに食い合う関係なんてうまく行く訳がない。いずれは自らの世界を食った相手に恐怖を感じ、互いの世界を食い争う事になるだろう。今は良くてもすぐに善意も愛も枯れ果てるだろうさ」

「そうなる前に世界を分かつという事ですか」

「そうだ」

「私達がこの世界に愛を感じていても? 貢献したいと思っていても?」

「……そうだ」

「そうですか……では、私達は戦わねばならないのですね。クロノ様」

「クロノ様?」


 Oの言葉に大吉が首を傾げる。

 そんな時、闇の渦の背後から一人の男が現れた。


「だから相手が全てを知る前に食っておけば良かったのですよ、O」


 現れたのは背広を着たビジネスマン風の男だ。


「あ、社長!」

「面倒なのでコタツミカンはスルーという事で」

「あれぇ?」


 男はOと同じくあやめをスルーし、大吉達に頭を下げる。


「はじめまして。私はフラットウェスト社長、平西影です」

「社長?」

「皆さんにはVOIDの代表Vの方が通りが良いでしょうね」

「……」


 今も輝き追放攻撃を仕掛けるVに大吉達が身構える。

 Vはそんな大吉達から視線を外し、Oに言った。


「O、相手が知ればこうなる事は貴方も分かっていたでしょう。貴方は本当に甘い。世界はやった者勝ち、やられる前にやるべきなのですよ」

「……そうでしたねV。貴方は私達とは根本的に違うのでしたね」

「当然でしょう。私は最初の一人なのですから」

「最初の一人?」


 Vの言葉に大吉が首を傾げる。

 Oが皆に聞いてきた。


「黒の十四軍に聞きます。貴方達はクロノ様……井出大吉様を愛していますか?」

「「「「「「「「「「「「「「当然」」」」」」」」」」」」」」


 Oの質問にあやめを含む皆、即答。

 Oは頷き、話を続けた。


「この世界に訪れた他のオカルト達も思いは同じ。皆、エクソダスの無数の夢の中で鍛えられ、得た力で世界をより良く変えました。そして自らを最も良く導いた者に感謝し、愛し、再会を願った」


 Oの言葉に黒の十四軍の皆が頷く。


「形は違えどエクソダスに住むグレムリン達も同じ。彼らとプレイヤーは語る事こそありませんが長い付き合いであり、プレイヤーのより良い人生の為に悪いものを選んで食べています。互いに利のある相利共生の関係を築いているのです」

「長い関係になるように私が道を用意したのですから当然です。だからエクソダスはゲーム機であり、殺伐とした夢にはしなかったのです」


 Oの言葉に自慢げに胸を張るV。

 大吉はVを睨んだ。


「……俺達がこうなるように、お前らが仕向けたって事か?」

「それは正しくもあり、間違ってもいます」


 大吉のVに向けた問いに答えたのはOだ。


「道は確かにVが用意したものでしょう。しかしどんな道が用意されていようが選ぶのは私達であり、その思いが変わるものではありません」


 出会った場が違ければ、感じる思いも違うもの。

 もし大吉と黒の十四軍の出会いがエクソダスではなくこの世界であったならば、大吉も世界の大多数の者と同じように欲と恐怖だけで見ていただろう。

 また、エクソダスのゲームがもっと殺伐としたものならば互いに良い感情を持つ事は無かっただろう。

 Vが用意した場は現実ではない夢であり、やり直せるゲーム。

 繰り返す事で互いを理解できる道が用意されていたからこそ、大吉と黒の十四軍の今がある。

 Vの意図はどうあれ、エクソダスは二つの世界を結んだのだ。


「ですが……」


 Oの言葉は続く。


「ですが、最初の一人にそんな道はありません」

やっと書けた。

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