6.いや、そういう事こそスルーしてやれ
黒島は、混乱の中に……なかった。
「貴様ら、我ら黒軍と一戦交える気か?」
「お? やるのか? 俺らとヤるのか?」
「こてんぱんな夢を見たい方はいらっしゃい」
「俺の根でプチンがいいか、俺の枝でバチンがいいか、選べ」
「こい、こい」
「私ども屍軍は活きの良い屍を常に募集しております。フレッシュミート!」
「「「すみません! ホントすみません!」」」
大陸では超有名な黒軍、戦わずに土下座させる。
「お手です!」「「「はいっ!」」」
黒軍とは別の大陸では超有名なエリザベス、戦わずにお手させる。
「ぐぉんでしゅ」「がきーんです」「どかーんですぅ」
「亜光速ガチンコ勝負、久しぶりです」『粉々に砕いたる(#゜Д゜)ゴルァ!! 』
「「「降伏します!」」」
宇宙では超有名なアイリーン、マリー、エミリ、セカンド。戦わずに降伏させる。
「わてに酒をくれやー。くれやぁ?」『『『サケーッ!』』』
「「「ええーっ……」」」
酒好きで超有名なミリア、戦わずに酒をタカる。
「あなた方の秘密はすでに握っております。まずは性癖から……」
「「「やめてーっ!」」」
スパイなので無名なAと諜報軍、相手の弱みで不戦勝。
「ええい鬱陶しい! なんて鬱陶しいのですかエルフィン!」
『私の師はクロノ様! 故にえげつない手段も正しいのです!』
『えーっ……俺、そんなにえげつなかったか?』
ぺっかぺっか。
そしてエルフィン、異世界からOの足を引っ張りまくり。
最強のエルフィンと弱点の大吉は今もエクソダス世界で待機。黒島に引っ越したVOID拠点の心臓部たる闇の渦の位置が判明したら直接殴りこむ予定だ。
圧倒的な実力を持つ黒の十四軍の前にVOIDの協力オカルト達は皆降伏し、黒の十四軍はあっさりと黒島奪還の橋頭堡を確保した。
立ち塞がるのは黒曜の騎士Oだけだ。
「ボのOだ!」「ボか!」「エルフィンが足を引っ張っている今がチャンスですわ!」「やっちまえ!」「ボか、ボか」「屍、アターック!」「聖軍召喚です!」「グランパンチでしゅ!」「アクアキックです!」「ウィンザーエルボーですぅ!」「クーゲルシュライバープレス!」「わての酒ーっ!」
ドカンズバンズドンバキンブチンボカンベキンドドンババンボキンベチンバコン!
エルフィンに足を引っ張られた分割Oを軍団長達がこてんぱんにする。
しかし所詮は輝き分割で世界に溢れるギガ放題のO。へなちょこだ。
Oはこてんぱんにされた自らを引き上げ合体させて皆の前に再び現れる。
「さすがは黒の十四軍。軍団長相手にギガ放題では歯が立ちませんね。百分の一……いえ、十分の一くらいですか。いつまで足を引っ張っているのですかエルフィン!」
『私の嫌がらせはクロノ様直伝!』
「いばる所ですかそれは! 邪魔ですエルフィン! 輝き異世界足蹴!」
『痛い痛い痛い! なんてえげつない!』
「貴方に言われたくありません! そしてボはやめなさい! ボは!」
ぺっかー、げしげしっ!
世界を超えた足蹴でエルフィンを蹴飛ばしたO、今度は軍団長達にお返しだ。
ドカンズバンズドンバキンブチンボカンベキンドドンババンボキンベチンバコン!
十分割O、軍団長達をこてんぱん。
「ぬぅおお強い!」「絶対に強い!」「エルフィン並みですわ!」「一割でこれか!」「つよ、い」「強い、強すぎる!」「デタラメ三号です!」「痛いでしゅ」「こてんぱんです」「べちんされたですぅ」「くうっ、一割でこてんぱんとは!」「わての酒ーっ」
軍団長達、阿鼻叫喚。
そして怪獣組、エルフィンにダメ出しだ。
「エルフィン! もっとしっかり奴の足を引っ張らんか!」「手ぇ抜いてるのかてめえ!」「ちゃんと、やれ」「お前の陰険さはこんなものではないはずだ!」「そうですぞ! 異世界だからって甘えるのはやめて頂きたい!」
『……大吉様、こいつらの足を引っ張ってもいいですか?』
『やめれ。そしてA、どうだ?』
「全力でVOIDの地下施設を捜索中です。現在地下六十階」
『あやめさんの行方はつかめたか?』
「それは軍団長に知らせてもらうしかありません。うちの軍団長に隠れられたら諜報軍全軍でも探し出すのは不可能なのです」
どうやら地道に探すしかないらしい。
そんな会話をAと大吉がしていると、会話に割り込む者がいる。
黒曜の騎士Oだ。
「あやめ? Iの事ですか?」
『知っているのか?』
「そりゃもう元気ですよ。今も闇の渦の前でのんびりしてます。こてんぱんにしたと思ったら『それはニセ者だ!』と高笑いされるし、攻撃はことごとくスルーされるし、黒島に本拠地を移せば『私もセットで』と付いてくるし、『寒い』と言ってコタツを持ち込むし、『お腹すいた』と私やVにご飯をタカるし自由すぎて困ります。アレはちょっとデタラメすぎませんか?」
『えーっ……それなら場所くらい教えてくれよあやめさん』
『さすがあやめ! クロマメ!』
あやめ、デタラメにデタラメすぎると評される。
喝采するエルフィンの横でどんだけだよと首を傾げる大吉に、Oが話しかけてきた。
「そういえば、礼を言うのがまだでしたね」
『礼?』
「エクソダスの無力化です。彼らも酒に溺れたかった事でしょう。彼らもユーザーとは長い付き合い。あなた方が想定した事を望むとは思えませんから」
『……それは、あんたも望んでいないという事か?』
「当然です。私もその人に会いたいが為に世界に渡った者の一人ですから」
『そんなあんたが、なぜVOIDに?』
「世界を愛で満たすため。そして……Vは、私達とは違うからです」
『違う?』
大吉が聞き返すとOは何かに気付いたのだろう、ぺっかーと輝いた。
輝き転送のぺっかーだ。
「どうやら発見されたようですね。それではまた後ほど……エルフィン、いい加減足を引っ張るのをやめなさい!」
『あいたっ!』
ぺっかー、げしげしっ!
エルフィンに輝き異世界足蹴を食らわせOが消えていく。
入れ違いで皆の前に現れたのはAだ。
「大吉様、そして皆さん、闇の渦を発見しました」
『それでは大吉様、私達も輝き異世界転送いたします』
ぺっかーっ!
大吉一行が輝き転送した場所は皆がこの世界を旅立った場所。
エクソダス世界に続く闇の渦。
そしてあやめだ。
「あ、皆さんしっかり輝き異世界転送出来たんですね。さすがです」
「……さすが我らの軍団長」
コタツでぬくぬく。ミカンをむきむき。
敵のど真ん中で何? この余裕?
と、闇の渦の前でコタツミカンなあやめに脱力半端無い大吉だ。
「エルフィンと互角のOを前に、なんてのんきな……」
「この私を舐めてもらっちゃ困ります。するっとスルーですよ。そして皆さんなら自力で世界を渡れると思っていました。私の眼力スゴイ!」
「……で、そこの巻き取ったロープは?」
そしてあやめの脇には耐荷重二百キロのロープがとぐろを巻いている。
あやめはフフンと笑い、言った。
「ロープを使う……」
「「「「「「「「「「「「「敗北者なぞいらぬ!」」」」」」」」」」」」」
「ああっ! 私が言おうとした決め台詞が! Aですねこんちくしょー!」
「いや、そういう事こそスルーしてやれ」
どうでも良い事はスルーしないあやめに大吉はツッコミを入れた。
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