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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
3-1.黒の十四軍、異世界遠足
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9.黒軍王ネーロ、英雄クロノ、井出大吉

「グランティーナ子爵領への通行許可を、いただきに参りました」


 エイブラム王国、王都ラドニアス近くに布陣した王国軍本陣。

 国王の天幕の中、ビルヒム椅子に座った大吉はルオ国王に言った。

 ルオ国王の王国本陣、完全包囲。

 空にはクーゲルシュライバー。周囲は黒軍その他。

 先刻までは黒の十四軍が見た目だけ四面楚歌だったが、今は王国軍本陣が真の意味で四面楚歌。さらに天すら封じられている。


 おいでまーせー、おいでまーせー、くろーしまー……


 Aあたりから故事を聞いていたのだろう、黒の十四軍の皆は黒島歓迎音頭熱唱。

 奇妙な踊りも相まって王国軍を恐怖のどん底に叩き込んでいた。


「こ、黒軍王ネーロ。グランティーナ子爵領に行って何をするつもりだ?」

「光の黒騎士不在に乗じて復讐か?」


 震える声でルオ国王とレギム宰相が聞く。 

 大吉に付いてきたフォルテが答えた。

 

「黒軍王ネーロ様ではありません。井出大吉様でございます」

「?」「??」


 首を傾げた国王と宰相にフォルテはさらに告げる。


「黒軍王ネーロ様にして偉大なる黒の十四軍の長たる我らが黒、それが井出大吉様でございます。人族と対峙していた我ら黒軍は今、より大きな枠組みである黒の十四軍の一部となったのでございます」

「黒の十四軍?」

「あのクーゲルシュライバーという黒い月も、その黒の十四軍なのか?」

「その通り。私達黒の艦隊は黒の十四軍の第十二軍、宇宙軍」

「それが黒の十四軍……」

「そ、そこの別大陸の獣人族もその一人なのか?」

「第八軍、聖軍です!」


 フォルテ同様付いてきたセカンドとエリザベスが頷く。

 人族と大陸を二分していた怪物の軍団、黒軍。

 海を渡った別大陸で繁栄する獣人族。

 そして銀河の星々を渡り歩く黒の艦隊。


「さらに言うなら井出大吉様はこことは別の世界の存在でございます」

「世界すら超越!」

「わけわからん!」


 黒の十四軍、大陸を超え、星を超え、世界すら超える。

 半端無いスケールに唖然の国王と宰相だ。


「それと光の黒騎士エルフィン・グランティーナは我ら黒の十四軍の第一軍、大吉様をお守りする近衛軍団長でございます。彼女を盾に我らと事を構えるのはおやめになった方が賢明ですわ」

「「ええええええっ!」」


 さらにフォルテ、爆弾発言。

 人族の守りの要、すでに黒の十四軍に採用済み。


「ま、まさか光の黒騎士がすでに取り込まれていたとは……」

「だから不在だったのか!」


 光の黒騎士エルフィン・グランティーナは人族ぶっちぎり最強。

 そのエルフィンがすでに取り込まれているという。

 もうおしまいだと頭を抱える国王と宰相。

 さすがにここまで来ると不憫だな……

 と、大吉は懐かしくも恥ずかしい口調で二人に語りかけた。


「オイオイ、黒軍王ネーロを憶えているなら俺も憶えているだろエイブラム王。お前の下らない用事をこなしまくった腹いせに引っこ抜いたそのヒゲ、この場で本当に引っこ抜いてやろうか?」

「その礼儀のかけらも無い尊大な口調、ネーロとは別の夢でよく聞いた!」

「光の黒騎士を育てたあやつにそっくりだ!」


 国王と宰相、二人は叫んだ。


「「クロノ!」」


 これまた王や宰相の夢に出まくった名だ。

 半端無い頻度で夢に現れ、数々の偉業を成し遂げた英雄クロノ。

 ……まあ、夢の中だが。


「お、憶えてたか。ボケてないな二人とも」

「黒軍王ネーロなのに、光の黒騎士を育てた英雄クロノ?」

「なんで?」


 しかし首を傾げる二人である。

 すみません。本当にエクソダスがすみません。エクソダスガー。

 大吉は心でひたすら謝罪して、ビルヒム椅子に座り偉そうに宣言した。


「それが、異世界!」

「「イセカイ!」」


 エクソダスがどーのゲームがこーのと説明するのも面倒臭い。

 何でもかんでも異世界で押し切る事に決めた大吉だ。

 国王と宰相は驚愕し疲れたのだろう、脱力して椅子に身体を沈めた。


「……そういえば彼女はクロノにぞっこんであったな」

「夢の中だけの存在だと思っていましたが、実在しているのであれば光の黒騎士が易々と取り込まれるのも納得。長期の不在も納得でございます」

「レギム、これは馬に蹴られて死んでしまえというアレか?」

「そうですな。王子の再縁談、あきらめるしかないかと」

「そうか……まぁ、仕方無いな。相手がクロノではな」

「ですなぁ」


 国王と宰相、トンズラ王子との再縁談をあきらめる。

 相手がクロノではエルフィンは絶対に折れない。それが分かっているからだ。

 国王が大吉に言う。


「クロノ……いや、井出大吉よ。汝ら黒の十四軍が人族に危害を加えないのならば、グランティーナ子爵領への通行を許可しよう。レギム、道中の領主への通達はまかせたぞ」

「わかりました」

「それと光の白騎士の名誉回復もお願いいたします。リリィは黒の十四軍が所属する黒島オカルト労働組合の組合役員。道案内を引き受けてくれただけですので」

「労働組合? 黒の十四軍も何かの一部なのか……世界は広いのぅ」

「わかりました。光の白騎士の名誉、必ず回復いたします」

「ありがとうございます」


 おいでまーせー、おいでまーせー、くろーしまー……


 黒の十四軍とエイブラム王国との戦い、終結。

 が、しかし……バウルへと戻ろうとした大吉一行の前に立ち塞がる者がいた。


「黒軍王ネーロ、いやクロノ、いや井出大吉! 貴様に決闘を申し込む!」

「……へ?」


 エイブラム王国トンズラ王子、現る。

 うわーっ、この王子蒸し返しやがったぞ。こういう時こそトンズラしとけよ空気読めねえなぁーっ……

 国王、宰相、王国兵。

 はっちゃけトンズラ王子に皆、頭を抱えるのであった。

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