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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
3-1.黒の十四軍、異世界遠足
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8.ルオ国王、余の顔を見忘れたか(※なお、顔は全く違う)

「黒の艦隊全艦、全軍団員を乗せ出撃完了」

「よし。我らも出撃する」


 大吉の号令に要塞世界樹バウルの門が開くと、外は人族連合軍の悲鳴であふれていた。


「黒い月から出たあれは何だ!」「戦艦だ!」「なんて大きい!」「甲板に並んでいるのは……黒軍か!」


 人族連合軍の頭をかすめるように飛ぶ全長数キロの戦艦、数万。

 甲板には黒の十四軍の皆がズラリ並び、驚愕する人族連合軍を見下ろしている。

 大地には要塞世界樹バウルにパウロ。

 空を覆うクーゲルシュライバー。

 そして頭をかすめる数万の巨大戦艦。

 戦いは高所を取った者が圧倒的優位に立てるという。

 人族連合軍の大半はリリィにも及ばない一般オカルト以下。攻撃が届かない時点で人族連合軍の戦力は激減だ。

 そして、大地に留まる唯一攻撃可能なバウルの門が開いて大吉一行が現れる。


「「「巨人、ガトラス!」」」


 人々が叫ぶ。


「ガトラスだ!」「鬼軍団長、巨人ガトラス!」「地獄の悪鬼か!」「あのガトラスが……何かを引いている!」


 まずバウルより現れたのは、ぶるるん運転手の鬼軍、巨人ガトラス。

 ガトラスはボルンガが変形した綱をしっかと握り、力強く進んでいく。

 人々が固唾を呑んで見つめる中、バウルからガトラスが引く何かが現れる。

 人々がまた叫んだ。


「「「金剛竜、ブリリアント!」」」


 次に現れたのは金剛の翼を悠然と広げた金剛竜ブリリアント。


「竜軍団長、金剛竜ブリリアント!」「黒軍最強の金剛竜!」「なぜ飛ばないのだ!?」「あの空の王者ブリリアントがガトラスに引かれるまま、地を這う無様を晒している!」「待て、金剛竜ブリリアントが背に何かを乗せているぞ!」「一体何を……」


 人々はブリリアントの背を見つめ、またまた叫ぶ。


「「「スライムボルンガ!」」」


 金剛竜ブリリアントの上にある天幕や装飾は、全てスライムボルンガ。


「獣軍団長、スライムボルンガ!」「金剛竜ブリリアントの上でボルンガが飾り物!」「飾りか! ボルンガほどの者がただの飾りか!」「あのボルンガ天幕の中に誰がいるというのだ!」


 人々は天幕の中を見て、またまたまた叫ぶ。


「「「リッチービルヒム!」」」

「椅子!」「屍軍団長リッチービルヒムが、まさかの椅子!」「座るあの男、一体何者!」「惑軍団長サキュバスフォルテが側で熱視線!」「うらやましい!」

「後ろで遊んでる幼女達と犬は一体?」「知らん!」

「フォルテの反対側に立ってる女は?」「知らん!」

「酒盛りしてる女は?」「知らん!」

「執事のような男は?」「知らん!」


 ぐぉん!

 そしてガトラスに引かれるブリリアントの背後には三体のロボ。

 グラン、アクア、ウィンザーだ。


「あれはゴーレムか?」「黒軍にあんなゴーレムが存在したとは!」「黒い月、空を飛ぶ巨大戦艦、そしてゴーレム!」「黒軍はどれだけの力を新たに手に入れたのだ!」


 驚愕する人々の前を、花びらが舞い踊る。

 バウルとパウロが花を咲かせているのだ。


「「「要塞世界樹バウル! そしてパウロ!」」」


 大吉達が進む道を、バウルとパウロの花吹雪が清めていく。

 これぞ花道。まさに花道。

 敷き詰められていく花を踏みしめ、大吉一行が進んでいく。


「巨人ガトラスが車引き!」「金剛竜ブリリアントが車!」「スライムボルンガがお飾り!」「リッチービルヒムが椅子!」「バウルとパウロが花吹雪係!」「そしてフォルテが……愛人?」「そして知らないメンツ!」

「しかし黒軍の軍団長達、なんて満ち足りた表情なのだ!」

「あの男に服従する喜びに、全身が輝いている!」

「魔王! あれが魔王井出大吉か!」


 あまりの出来事に人族連合軍、動けず。

 ブリリアントが号令した。


「者共、凱歌を響かせよ!」

「「「おう!」」」



 ばばばーん、ばっ、ばっ、ば、ばーん……!



 大地を揺るがす凱歌は、大吉が黒軍王ネーロ時代に使いまくった人気時代劇シリーズのオープニングだ。


「こ、この音楽は!」「何年か前に夢で聞きまくったぞ!」「怪物に支配される夢の奴だ!」「毎日続いた悪夢だ!」「悪夢が現実に!」「うわぁ!」


 人族連合軍、混乱。

 夢というものは理不尽でも受け入れてしまうもの。

 そして意外と現実に影響を与えてしまうもの。

 エクソダスの夢のような起きても忘れない鮮明な夢ならなおさらだ。かつてエルフィンが夢で苦悩したように王も宰相も国民も夢で苦悩していたのだ。

 エクソダス、本っ当に罪作りなゲーム機であった。


「ルオ・エイブラム!」 


 ガトラスが引くブリリアント車の上、傍らにフォルテとセカンド、Aを従えビルヒム椅子に座る大吉が叫ぶ。

 そして夢で見た頃よりも老けた国王を見つけた大吉は、ビルヒム椅子に座ったまま恐怖に引きつった国王の顔を見据えて再び叫んだ。



「ルオ国王、余の顔を見忘れたか!」



 なお、顔は全く違う。

 しかし大吉の気迫や黒軍が作り出す雰囲気は夢と変わらない。

 王と宰相は大吉の顔を睨み、気迫にうろたえ、雰囲気によろめく。

 二人とも思い当たる夢がバッチリあったからだ。


「あ、あの口上……」「そしてあの音楽」

「そして黒軍を手足のように使う姿……」「まさか!」


 ルオ国王とレギム宰相が揃って叫んだ。


「「黒軍王ネーロ!」」



 カーン! カカーン!!



 そして黒軍の皆から輝き効果音、炸裂。

 黒軍の皆は、泣いていた。

 ブリリアントが、ガトラスが、フォルテが、バウルが、ボルンガが、ビルヒムが、そして配下の者達が感涙にむせぶ。


「我の夢、ここに叶う!」

「おおぅ……この瞬間、俺は一生忘れないぜ!」

「素晴らしいですわ! さすが私達の黒軍王ネーロ様!」

「ぬぅおおおお! ネーロ様! 黒軍王ネーロ様!」

「さい、こう!」

「くううううっ! これです! これぞネーロ様でこざいます!」


 大地に黒軍の涙が雨となって降り注ぐ。

 そして黒軍の雨に濡れる人族連合軍は驚愕に叫ぶ。


「光の黒騎士を夢で一日十回はこてんぱんにした黒軍王の中の黒軍王!」

「人族最強の光の黒騎士を夢で一方的にこてんぱんにした悪夢の黒軍王ネーロ!」

「や、奴は夢の中だけの存在ではなかったのか!」

「では目の前のコレは何だというのだ! 黒軍が心酔しているコレは!?」

「しかも黒い月という、新たな力を手にしているだと!」

「やべえ!」「逃げろ!」「国の守りを固めねば!」「エイブラム王、我らは撤退する!」「王国の奮闘を期待いたします!」「とんずらーっ!」


 人族連合軍、総崩れ。

 光の黒騎士エルフィン・グランティーナを夢の中とはいえ一方的にこてんぱんにしまくった黒軍王ネーロに加え、クーゲルシュライバーを従えた夢より強い黒軍。

 対する人族連合軍は主力オカルトを温存している上、最強のエルフィン不在。

 周辺諸国から集まった軍隊が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

 もはや戦いは終わっていた。


「さすが大吉様。戦いにすらならんとは」

「まぁ当然だな。大吉様だもんな!」

「大吉様、さすがでございますわ!」

「大吉様の勇姿、その魂に刻むがいい!」「そうだねにーちゃん!」

「大吉、様、万歳!」

「完勝どころか不戦勝。さすがは大吉様でございますな!」

「勝負ありです!」

「散り散りでしゅ!」「こてんぱんです!」「やったですぅ!」

「大吉様の勇姿の立体録画はバッチリ。永久保存確定」

「決まり手は夢トラウマやな」『『『サケーッ!』』』

「いやあ爽快。まさに痛快でございます」


 大吉、戦わずして勝つ。

 勝利の決め手は黒軍でも黒の艦隊でもない。大吉の寝ゲー遊び倒しであった。

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