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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
3-1.黒の十四軍、異世界遠足
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1.大吉、大地を貫く

「ここが、エクソダスで繋がった世界か」


 闇の渦の出口から見える風景に大吉は呟いた。

 青い空。白い雲。緑豊かな平原と山々が続く。

 見える景色は大吉がエクソダスで見た世界そのまま。

 寝ゲーにハマッていた当時、あの異様な開発速度はどうやって出しているんだと首を傾げていた大吉だが何のことはない、現実をオカルト夢取り込みしているだけの事であった。まさに夢オチである。


「そりゃ開発速度も半端無い訳だわ」


 オカルトだもんなぁ……と、大吉が嘆息する。

 そして、景色を眺める大吉の後ろでは皆が今後を相談していた。


「さて、これからどうする?」

「このまま輝き転送でいいんじゃねえか?」

「あやめを待たせ過ぎるのも悪いですし、それで良いのではないでしょうか」

「エルフィンの位置は輝きアクティブソナーで探るのだな」

「そう、だね」

「それでは輝きアクティブソナーで位置特定、輝き転送で移動という事ですな」

「速攻です!」

「探すでしゅ」「見つけるです」「戻るですぅ」

「では、渦を出たら輝きアクティブソナーで」

「やるでぇ!」『『『サケーッ!』』』

「普段はコソコソしてますが、たまには派手にやるのも良いでしょう。大吉様、それでよろしいでしょうか?」

「俺はこの世界を夢でしか体験してないから、まかせるよ」


 異世界素人の大吉は皆の方針を了承する。

 が、しかし……輝こうとする皆を止める者がいた。


「それはなりません!」


 光の白騎士、リリィ・カーマインだ。


「黒軍の皆様は自らのお立場をご存じでしょう? そのような事をしたら人族と怪物の戦争になってしまいます」

「「「「「「あ」」」」」」

「忘れていたのですか?」

「「「「「「はい」」」」」」


 エルフィンや黒軍はこの世界における核兵器のようなもの。

 存在そのものが脅威の黒軍が人族の領域に輝き転送で現れるという事は予告なく弾道ミサイルが飛んでくる事と同じ。つまり戦争状態だ。

 だからミサイルの試験やロケットの発射は前もって公表して相手に知らせ、それで戦争が起こらないように配慮している。

 黒軍ら怪物も人族の領域に入るならしかるべき手続きが必要なのだ。


「それでは、黒軍とは無関係な黒の艦隊の私が輝きアクティブソナーを」

「まったく変わりませんよ!」


 黒軍では無いとのたまうセカンドにツッコミを入れるリリィだ。

 侵略される側にとっては黒軍も黒の艦隊も同じく敵。変わらないのである。

 首を傾げる皆を前に、リリィは額を押さえながら方針を考える。


「この地はすでに人族の領域のようですから関係諸国への了解が必要です。まずはこの地がどこであるか確認しましょう。次に役場への連絡。了解を取りましたら軍の監視のもと決められた日程とルートで移動。こんなところでしょうか」

「「「「「「「「「「「「「さすが一般オカルト!」」」」」」」」」」」」」

「誉めてませんよね、それ。大吉様もよろしいですね?」

「おまかせします」

「では、まずはこの場所を確認です」


 伯爵令嬢に頭を下げる大吉だ。

 すぐにエルフィンに会いたかった大吉だが仕方無い。

 郷に入っては郷に従え。人捜しで戦争が勃発するのはさすがにまずい。

 ここは人族のリリィに従っておこうと大吉は思い、闇の渦から外に出る。

 が、しかし……すかっ。


「えっ?」


 踏み出した大吉の足が地面をえぐり、バランスを崩した大吉は地面にびたーんと倒れ込んだ。


「なんと!」

「大吉様が五体投地!」

「そこまで我らの世界を……!」

「すば、らし、い!」

「埋もれるほどの五体投地! さすがは大吉様でございます!」

「違う! 地面が崩れたんだ!」


 感動する怪獣組に叫びながら大吉が身体をひねって上を見れば人型の穴から空が見える。

 マンガだ。マンガ穴だ。なんだこの世界? とにかく止まろう。

 と、手を突っ張って止まろうとした大吉だが、突っ張った手が地を削る。


「と、止まらん! なんつー脆い世界だ!」


 ズボボホボボボ……大吉が地を貫いていく。

 怪獣組が感動してから三十秒。フォルテがようやく事の重大さに気がついた。


「五体投地ではありませんわ! 大吉様の偉大さが大地を貫いているのです!」

「「「「「「「「「「「「なんと!」」」」」」」」」」」」


 皆が叫び、バウルがしゅぱたんと枝葉を穴に突っ込み大吉を助け出す。


「大吉様ご無事ですかーっ!」

「た、助かった!」


 あのままどこまでも落ちていくかと思ったぞ!

 と、枝葉に引き上げられながら大吉は思う。

 貫いて三十秒。それだけの時間で地下百メートルは突破している。

 一日あったら地殻を貫いてマントルに届くかもな……怖ぇええ。

 地上からマンガ穴を覗き込み、震え上がる大吉だ。


「フォルテ、ちょっとそこの小石を取って」


 大吉はフォルテから小石を受け取り、握る。

 ぐしゃっ……大して力を込めていないのに粉々。

 サラサラと風に流れる小石だったものを眺め、首を傾げる大吉だ。


「まるでスポンジだな。なんでだ?」


 ブリリアントらが大吉に答える。


「これは世界の違いでしょうな」

「俺らには大吉様の世界は頑丈だから、大吉様には俺らの世界は脆いのか」

「さすがは大吉様!」

「なる、ほど」

「これだけの偉大さをお持ちとは、さすがは大吉様!」

「いや、お前らの方がずっと強いのに、なんでお前ら貫かないんだよ?」

「「「「「さあ?」」」」」


 大吉と怪獣組が首を傾げる。

 とにかくも、支えが無いとまともに暮らせない。

 とんでもない世界に来たと大吉は思った。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 微妙に前作と世界観つながってそうなそうでもないような。
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