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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-5.エルフィン、いなくなる
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幕間.人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてこてんぱん

「あやめ君、井出大吉君と黒の十四軍を向こうの世界に渡したね?」

「はい」


 闇の渦を前に、あやめはVに頷いた。

 世界をつなぐ闇の渦からは、あやめが投げ込んだ蜘蛛の糸ロープがひょっこりと頭をのぞかせている。

 しかしV、それをスルー。

 あやめの輝きスルーの成果だ。

 それにしてもさすがはこの門の主ですね。この場にいなかったのに門を通った者を認識しているとは……

 と、あやめは内心冷や汗をかきながら頭をかいて笑った。


「いやー、馬に蹴られてこてんぱんにはなりたくありませんので」

「人の恋路を邪魔する奴は、って奴か。若いねぇ」


 あやめの言葉にVは笑い、続けた。


「まあ、光の黒騎士が戻ってこなければいいか。向こうでの暮らしは大変だろうが井出大吉君の門出を祝うと共に幸せを祈ろう」

「そうですね。大吉さん、お幸せにーっ!」


 秘密結社VOIDの黒曜の騎士O。

 黒の十四軍にエルフィンあらば秘密結社VOIDにOあり。

 もし敵対する事があってもエルフィンさえいなければOで圧倒できる。

 だからVはD、ダグラス・グランティーナ子爵をこちらに呼び出し、うまいこと説得してエルフィンもろとも里帰りさせた。

 VOIDに唯一対抗出来た黒の十四軍の力を敵対する前に削った事になる。

 戦わずして勝つ。Vは戦う前に勝負を決めたのだ。

 そんなVにあやめが聞く


「ところで光の黒騎士なら世界を渡れそうですが、大丈夫なのでしょうか?」

「そう簡単にはいかないよ」


 対するVはのんきなものだ。


「世界の境界も、世界の外も普通認識できないからね。出口がわからなければ外には出られないのと同じさ」


 存在の認識は簡単でも形状の認識は至難。それが世界。

 その外に何が存在するかなど完全に理解の外。井の中の蛙大海を知らずだ。

 Vは言う。


「何十年も研究した僕がこの世界に門を繋げたのだって偶然なんだから、出来ると知っているだけで狙って渡るなんてムリムリ。僕の門を使わない限り別の世界に行くのがオチさ。あやめ君は夢を経由してこっちに来たけれど、それだってエクソダスが経由している時にしか出来ないだろ? 今は光の黒騎士が出てくるゲームは無いから大丈夫。そうだ、あの星が関わるゲームはサービス終了にしよう。万が一をなくしておかないとね。これで僕らはこの門だけ警戒していればいい」


 まあ、その門は私が輝きスルーでロープ垂らしてますけど。

 あやめはそんな事を思いながら、もう一人の自力で渡った者について聞いた。


「ですがOは六年前に渡って来ましたよ?」

「それはこの世界にひっかかりがあったからさ。知らない土地でも町の名前が分かっていればその町まで行ける。そんなもんだろ?」


 Vは笑う。


「光の黒騎士のひっかかりは井出大吉だ。こっちにいればワンチャンあったかもしれないけど向こうにいるならこの門を通って戻るしかない。入ろうとしたら門を閉じればいいだけさ。その度にエクソダスはシステムメンテナンスだけどね」


 えーっ、閉じられるんですかぁ?

 あやめは垂らしたロープがちょん切られないか心で焦りながら、態度に出さずに会話を続ける。

 さすが諜報軍団長。鉄壁の輝きスルーと輝きポーカーフェイスだ。

 あやめがVに聞く。


「そういえば、Oのひっかかりはまだ見つかっていないんですね」

「別のゲームに没頭してるからだろうね。ひっかかりとしては存在しても今は別人。光の黒騎士だって井出大吉君の近くをしばらくウロウロしていただろ?」

「そうですね」


 あやめが大吉を見つけられたのは、まだ大吉がムッシュ・ノワールだったからだ。 ゲームを無理矢理中断させられた事で頭を切り替えられず、運送会社でひーこら言いながらもエクソダスのゲームを切望していたからこそ見つける事が出来た。

 ゲームプレイヤーの立場はゲームによって変わるもの。

 本人でありながら別人だから、近くまで来る事は出来ても特定は難しいのだ。


「光の黒騎士も井出大吉君がこっちにいれば戻れたかもしれないけれど、今となっては不可能だね。パーフェクトだよあやめ君。ナイス!」

「いぇい!」


 しまったあぁぁあああああああ、トドメ刺したああぁああああああ!

 にっこりと笑いながら心で叫ぶあやめだ。


「これで僕らはやりたい放題。受注し放題だね。これからガンガン稼ぐよーっ!」

「がんばります!」

「それにしても、事業には相応の対価が必要だって事をどれだけの人が理解してるんだろうねぇ。あやめ君、これからも輝きスルーをバッチリ頼むよ」

「わかりました」


 機嫌良く去っていくVを、あやめはにこやかに見送った。

 オカルトだってオカルト力を使えば消耗する。

 しかし今の世界は有り余るオカルト力の良いところだけを見ている。その力の裏づけが何なのかを知ろうともしない。

 そしてオカルトの側も考えていない者ばかり。

 しかしそれも当然。住む世界が変わっただけだと思っているからだ。

 違う世界と繋がる事、食べ物や空気を取り込む意味を理解していない。

 あやめはため息をついて、静かに渦を見つめた。


 困ったーっ!

 でも大吉さんを向かわせないと諦めちゃうから仕方ないですよね?

 これはきっと不可抗力、いえ愛の試練!

 だからエルフィンがきっと何とかしてくれます。

 なんたって彼女はデタラメだから!

 その眩しいデタラメ力で私のミスを帳消しにしてください信じてますよーっ!


 と、あやめが心でテンパッていると現れる者がいる。

 黒曜の騎士Oだ。


「I、黒の十四軍と井出大吉さんを向こうに送ったそうですね」

「Oですか」


 あやめはVにも言った言葉をOに返す。


「大吉さんの希望ですから。人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてこてんぱんですよ」

「なるほど。まあ、それは良いでしょう……ですが」


 あやめの言葉にOは頷き、腰の剣を抜いた。


「それならば、貴方も馬に蹴られてこてんぱんという訳ですね」

「は?」

「貴方ならとうに調べていたでしょうに、よく三年も隠し通してくれましたね」


 黒曜の騎士Oが輝く。

 輝きが仮面を貫通し、Oの怒りの表情が晒される。

 あやめは叫んだ。


「……あなたは!」


 べぇちこぉぉぉぉぉん!


 Oの怒りのこてんぱんがあやめに炸裂する。

 しかしこてんぱんにされたあやめは笑い、そして心で叫ぶのだ。


 勝った! ラッキーいぇい!


 と。

これで二章終わりです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

次回から三章です。


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[一言] Oも黒の人?15軍になっちゃう……
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