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輝け! 黒の十四軍  作者: ぷぺんぱぷ
2-5.エルフィン、いなくなる
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6.黒島、やっぱりのんびり朝食

『これが明日、宇宙に打ち上がる宇宙ステーションです!』

「え? これ、もう出来ちゃったの?」


 平日朝、黒島大吉アパート大食堂。

 朝のニュースに大吉は素っ頓狂な声を上げた。

 それにしても早い、早すぎる。

 計画発表をテレビで見てからまだ一ヶ月。予定では来年じゃなかったっけと首を傾げる大吉だ。

 長さ四十キロ、直径六キロなんて巨大構造物を一年で作る計画自体がオカルトだったのだが実際はさらにオカルトだ。

 一般オカルトもやっぱりすごい。集まればさらにすごい。 

 こんな事が出来るなら黒島オカルト労働組合に苦情を言う事ないじゃんと思ってしまった大吉だ。 


「計画では来年だったのに実際は一ヶ月。十分の一以下の工期ですね」

「オカルト見積もりが甘かったんだろうなぁ」


 エルフィンの言葉に大吉がうなる。

 事業を進める為に必要なのはだいたい人、モノ、金。

 さらに人は数と技術に分かれるが、それら全てをオカルトでまかなってしまったのだろう。

 船サイズの部品を電気製品の部品のように軽々組み付け、複雑な機械も無いのに部品を作り、対価はサラリーマンと変わらない。

 まったくオカルト、あなどれない。


「これ、失敗しないだろうな?」

「暁の艦隊が補助をする。大丈夫」

「あー、それなら安心だな」


 セカンドの言葉に安堵する大吉だ。

 クーゲルシュライバーと同じサイズの艦隊旗艦ピロシキを持つ暁の艦隊ならこの程度の宇宙ステーションなど木っ端船。ホホイと宇宙に浮かべてくれる事だろう。


「私なら一週間でやってみせましょう」

「ほう、ならば黒軍は一日で」

「俺ら黒軍は力と数を兼ね備えてるからな、ビルヒムの死んだ頭も役に立つ」

「そうですわね」

「一日あったら昼に打ち上げて夜は完成パーティーだな」

「らく、しょう」

「完成パーティーの準備も同時進行できる事でしょう」

「頭悪いから作れないです!」

「半日でしゅ!」「がんばるです!」「ですぅ!」

「ほんなら、わては一時間かなぁ」『『『サケーッ!』』』

「ふ。黒の艦隊ならば標準輸送艦を出して終わりですね」

「「「「「「「「「「「「ずるい!」」」」」」」」」」」」

「お前ら、やらない事で張り合わないの」

「あはは。大吉さんこの際やらせてみましょうよ!」

「あやめさんも無責任にあおらないで下さい」


 ヒートアップする皆をいさめる大吉だ。

 それにエルフィン、お前絶対一週間かからんだろ。

 輝き一発で完成しても驚かないぞ。いや驚くけど。

 そんな事思いつつ、大吉は呟いた。


「お前ら、本当にどこからそのパワーを得てるんだよ」

「日々の食事に決まっています」

「それでここまでは出来んから。ご飯で核融合でもしてるのか?」


 人間が食事で得るエネルギーは化学エネルギー。

 たき火と同じ物質の組み替えで生まれるエネルギー。菓子や弁当に書いてあるカロリーって奴だ。

 一カロリーは一ミリリットルの水の温度を一度上げるエルネギー。

 一キロカロリーは一リットルの水の温度を一度上げるエネルギー。

 一回の食事で得られるカロリーはヤカンで数回湯沸かし出来る程度のもの。

 その程度であんな事が出来るなら蒸気機関車はヤカンの湯気で動くだろう。

 まったくもってオカルトなのだ。


「核融合? 太陽程度の輝きでしたら負けません」

「いや、そこは負けていい」


 こんな近くで太陽以上の輝きなんざ受けたら一瞬で炭だ。

 その身体のどこにそんなエネルギーが保持されてるんだよと大吉は首を傾げ、エルフィンの身体を持ち上げてみた。


「だ、大吉様?」

「別に重たくないよなぁ」

「大吉様が私をだ、抱き上げ……ああーっ!」

「エルフィン!」


 ずぱーん!

 激しく輝きそうになったエルフィンにフォルテのボディーブローが炸裂する。

 ずごん! ばきん! ごろごろごろごろ! どかん……どすん。

 普段は物腰柔らかなフォルテもやはりオカルト。直撃を受けたエルフィンは柱をへし折り、天井を突き破り、天井裏を転がって壁に激突した後にもう一度天井を突き破って落下した。

 こんな派手な事をしても大吉は無傷。フォルテ、冷静オカルトだ。

 そしてこんな派手な事をされてもエルフィンは無傷。デタラメオカルトだ。


「いい加減そのダメ無限力を何とかなさい! というか努力のかけらも見られないではありませんか! この黒島で何をしていたのですか!?」

「す、すみません師匠!」

「フォルテで結構。こんな出来の悪い弟子などノーサンキューですわ!」


 大吉、フォルテのおかげで輝き死回避。

 ありがとうフォルテと思わず拝む大吉である。


「こ、今度はお姫様だっこでお願いします! 輝き我慢しますから!」

「やだ。我慢できなかったら俺が死ぬ」

「ええーっ! おあずけですか? 輝きおあずけですか!?」

「なんでもかんでも輝きをつけるな」


 まったくこいつはどうしようもないなぁ……と、苦笑する大吉だ。


「なんだエルフィン、まだその程度の輝きすら我慢できんのか」

「てめぇが我慢できんとうちのフォルテが行き遅れになっちまうじゃねーか」

「こまっ、た」

「こやつの父上もさぞ困っている事だろうなぁ」

「当然でございましょう。うっかり輝けば炭。ばっちり輝けば灰ですからなぁ。縁談をトンズラされたのも納得でございます」


 そしていつもの黒軍連中、ここぞとばかりにいじりまくり。


「……何か、文句でも?」

「「「「「アタマが、お悪うございます」」」」」

「はぁ!?」


 べぇちこーん!

 そしてエルフィンにこてんぱん。まったくこりない面々だ。

 こんな生活がこれからも続くのかと呆れる一方、これからも楽しく過ごせそうだと大吉は笑う。


 ……そう。

 次の日にいきなり終わるとは、まったく思っていなかったのである。

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