絶望と希望2
いなりは目を瞑って居たが、痛みも何もないことに気付き目を開けるとソウルスピリットの腕が心臓を貫いて居たのは嘉帆であった。
「転けて迫り来る剣の元に…行けなかったのが幸いした見たい…」
『ようやく我が探していた人物にたどり着いたぞ』
「……何の様が有るのかな?」
『貴様が持つ最期の鍵を返して貰う為だ。どこにある?』
「何の事?……わたし物覚え悪いから分からない」
『小癪なガキだ』
するとソウルスピリットは嘉帆の背中を突き破った腕を更に進めた。ぐぐっと嘉帆は両手を使ってソウルスピリットの腕を押さえているが力が入らない様だった。
「……………」
『ほう、痛みに強いか。これだけ進めても悲鳴を出さぬか。だか喋る余裕はなくなったみたいだな…さて目的のものは貴様が背よう物の中であるな』
それだけ言うとソウルスピリットは嘉帆のリュックから灰色の何かを取り出した。
「!……モンスターはリュックを漁れない筈なのに」
『やはり貴様が管理していたか…コレで我を封印している鍵を外せる。隠さず持っていたことに感謝だけはしてやろう…ついでに貴様が腕に着けている壊れかけの物を次いでに壊してやろう』
ソウルスピリットが嘉帆の【絆のブレスレット】に手を掛けようとすると空から巨大な炎を纏った氷の塊が落ちてきた。
ソウルスピリットは嘉帆を貫いている腕を切り捨て避けるとソウルスピリットから『ギャァア!痛い!腕が俺の腕がぁあ!』と悲鳴が聞こえた。
『くっ!呑み込んだ人間が目覚めたか!』
「良くもオレにダメージを負わせたな…それ相当の覚悟は良いか~!」
空から巨大な竜がやって来た。ヤチヨ教官のモンスター進化してない?最終進化してなかったの?
「ヤチヨ教官!」
「チャンピオン!良く時間を稼いでくれた倒れている連中の話はまた後だ!」
『黒く染まったはずの夜空が光を取り戻しただと!』
ソウルスピリットの発言からあたしはロゼッタに嘉帆を回収するように指示をして空を見上げると星空の景色に戻りしかも星の輝きが増していた。
嘉帆を回収したロゼッタとイルゼが戻ってきた。すると嘉帆がリュックから【恨ミノ怨念ノ呪石】を取り出してセンチュリオドラゴンに投げろと言ってきた。
「センチュリオドラゴンに呪石を投げて…」
「わかったわ!センチュリオドラゴンに渡すからもう喋らないのよ!」
いなりは石を受け取ると立ち上がるとセンチュリオドラゴンに向けて【恨ミノ怨念ノ呪石】を投げると【恨ミノ怨念ノ呪石】から強烈な黒い光が放たれセンチュリオドラゴンを包み込んだ。
『何だこの光は!グォオオ!我が焼かれるだと!?』
ソウルスピリットも黒い光に当てられロゼッタの白い焔が当たっても効いていなかった場所から白い炎が発火し燃えた。
センチュリオドラゴンの方は黒く染まった体が黒い炎に焼かれている。
『………希望を捨て去ったワタシへの罰でしょうか…そして5人の旅人を巻き込んでしまいました…』
「センリュオン…」
青年ルクスはセンチュリオドラゴンの側によった。そして真っ黒いボロボロになっている古代樹の根本からゾロゾロと天狗やらさまざまなエリアのボスモンスターが出て来た。
「…話からすると古代樹の栄養にされたんじゃないの?」
『我々は大樹の中でこの衣装を着させられずっと踊らされていたのだ』
天狗やら人型であろうと異形種であろうと♂であろうとエリアボス達がサンバの派手な衣装を身に付けていた。
『我らも死を覚悟していたのだが…な』
『ソレニこれハナンダ。我ニモ透ケ透ケノ衣装…』
『恥ずかちぃ…もうお婿に行けない…』
「ん?どう言うことだ?」
エリアボスたちは悲観した表情をしていた。
そこへ通信が入って来た。
『あ゛ぁ゛ーー!やっぱりカオスになってるぅう!』
「この声は花沢か!」
『ひっ!ヤチヨ様も居る!』
「エリアボスのサンバ状態の理由と健吉たちが裏で何をしていたか分かるように簡潔明察に話せ」
『…上からの指示でセンチュリオドラゴンを精神的な部分から救うためにエリアボスを捕まえて【聖星の古代樹】の根本の空間でサンバを踊らせてました。
センチュリオドラゴンが真っ黒く染まったのはタダの思い込みで、空が真っ黒く染まったのはセンチュリオドラゴンの影響を少し受けたからです』
「『へっ』」
センチュリオドラゴンと青年ルクスが間抜けな声を出した。
「でも…アナウンスが鳴ったわよね?」
『それは違う場所でのアナウンスです』
「違う場所だと?」
『はい、違う場所です。りりぃ姐さん達にはエリアボスたちにサンバを踊らせて置いてくれと依頼していたので変異に関して成立しないんですよ』
「えっ…もしかしてヤられ損ってこと?」
『はい』
すると死んだ振りをしていた5人がスッと起き上がった。
「なーんだ。死んだ振りなんてバカげた行為だったわ」
「リアルな吐血をした振りをしたのに」
「でもチャンピオンとか騙せたみたいだぞ」
「なんで皆は冷静なんです!貫かれている人が!」
その貫かれている人が立ち上がった。
「大丈夫、死んでないよ」
立ち上がったのは良い(?)が吐血していた。もしかして嘉帆も死んだ振りをしてたの?…本当に心配したあたしの気持ちを返して。
「きゃぁああ!ぞんびっ!」
「「ん?」」
「誰だ乙女の様な声を出したのは」
立ち上がった四人の方を見ると元盗賊の頭領であるザインが乙女のようなポーズを取っていた…この人だな。
「…イルゼの身代わりで防御力が異常に高いから(?)貫かれる瞬間そこまで痛くなかったよ。ぐぐっと腕を押される時は痛かったけど」
こちらもトンでも発言をした嘉帆である。そこへ花沢さん?が説明した。
『相棒とプレイヤーは【絆のネックレス】や【絆のブレスレット】【絆の指輪】【絆のアンクレット】で繋がってますからね。プレイヤーにモンスターの技や攻撃が降りかかったときは【絆のアクセサリーシリーズ】に【相棒の加護】というのが自動で発動されるようになってます。相棒のステータスに応じてプレイヤーが強化される様になってますよ』
「【隠れスキル】の【絶望】って…」
『この場に居る【相棒】たちには着いてませんよ』
「えっ」
『本当はネタバレしたくないのですが…【隠れスキルの絶望】を持っている相棒を連れているのは【西側のプレイヤー】さんですよ』
「おっふ…【アンクルバンナ】の方は大丈夫かしら?」
「ここでは通信出来んからな」
話している間にセンチュリオドラゴンを燃やしていた黒い炎が消え元に戻ることなく…新たな美しい七色の鱗を持つドラゴンに変化していた。
『エリアボス達に【聖星の古代樹】の中で踊らせていたサンバの効果が出てますね!』
「何処が!」
「ではどうして健吉たちが今回の件に選ばれた」
『それはですね。彼女たちの相棒は主人が危険な事に晒されない限り普段はかなり穏やかで優しい性格をして【手加減】が出来るモンスターだったので選ばれました」
「そんな理由なのね」
『そして主人が危険に晒されるとかなり過激になり主人を危険に晒した相手を徹底的に潰してやるになります。現に嘉帆さんのパートナーを見てください。茶釜から【ロケットランチャー(弾∞)】を取り出し危険に晒した奴に狙いを定めてますよ』
イルゼはサングラスを掛けてロケットランチャーを取り出しソウルスピリットに狙いを定めていた。
「そう言えばどうしてソウルスピリットは動かないの?」
『答えは簡単です。取り込んだプレイヤーがソウルスピリットの中で腕を失った痛みにもがき苦しんで融合が解かれそうになっているのと【古代樹】の本来の力が解放されたからです』
古代樹の方を見ると巨大な剣は無くなっていて貫かれた筈の【聖星の古代樹】から光が溢れ【聖星の古代樹】は夜空に浮かぶ星の光を吸収し輝きがましていた。




