因縁と追撃と本領
【アンクルバンナ王国】
《上空》
「進化前のロゼッタと同じくらいの大きさね」
『我ハ【レヴィアタン】…全テヲ呑ミ込ミ食ラウ者ナリ邪魔ヲスルナラ容赦シナイ』
レヴィアタンって事は水と毒の技かしらね。
「そろそろ鑑定結果が来る頃ね」
通信が入ってきた。
『沙葉ちゃん鑑定結果が出ましたよ。種族名は【レヴィアタン】で属性は水と毒と虚無の3つの属性を持つ特殊な個体です。そして…特殊なファントムホエールから進化した個体故に通常より巨大な姿をしているようです』
「……そう。余計に私が戦わないとかしらね」
『それはどういう?』
『沙葉!』
「あら武治じゃない。ちょうど良いわね、悪いけど地上の指揮を任せて良いかしら?私は上空の戦闘に集中したいの」
『お前がそこまで言うとは…』
「えぇ。私の元相棒が進化したかも知れないのよ」
『!……ヤバかったら退けよ?もし手が欲しければ必ず連絡をしろよな!』
「わかったわ」
それだけ言うと通信を切った。
「さてロディーヌ頼んだわよ?」
「( ・`ー・´)」
『我ハ絶望ヲ運ブ者、ソシテ全テヲ喰ラウ者」
「随分と落ちるところまで堕ちたわね……まさか姉から元西のトップの手に渡っていたなんてね?」
『始メヨウ我ガ勝デハコノ地ハ滅ビヲ向カエ、貴殿ガ勝テバコノ地ハ滅ビヲ免レルダロウ』
「ロディーヌ【知恵の策略】」
ロディーヌは【レヴィアタン】に勝つための道筋を探り始めた。レヴィアタンは【弧毒の雨雲】を作り雨が振りだした。
「この雨ヒリヒリするわね。これは早くケリをつけないとアンクルバンナ王国に被害がでるわね」
「(ノ`△´)ノ~」
ロディーヌは【聖なる炎】をレヴィアタンに向けて放ったがいつの間にか紫色の靄を纏ってダメージが通らなかった。
「……毒の雨を降らせる雲…か……ケホッ…(毒は空気にも含まれていてプレイヤーにもダメージが来るのね。紫色の靄をどうにかしないと…こちらもヤバイわね)」
ロディーヌは【聖風の旋風】を使ったが靄が晴れることがなかった。
「( ̄□ ̄;)!」
「簡単には行かないわよ…ロディーヌ…(さてどうしましょうか?)」
『人間、モウ終ワリカ?マァ人間ニ取ッテハ毒ガスニナリ、もんすたーニハ蝕ム毒トナル。ソシテ建物ハ腐敗スル……デハサッサト終ワラセテ貰オウ【暗愚ウノ水泡】!』
「ロディーヌ…避けるのよ」
ロディーヌにも毒が効いてきたのか動きが鈍くなりレヴィアタンの技が迫ってきていたが。
【負けるにはまだ早いよ?君に少しだけ力を貸してあげる……僕の仲間を止めてくれるかい?】
ロディーヌは新たな技を覚えようとしています。覚えさせますか?
「(これは…前にいなりが言ってた奴ね)えぇ……覚え…させる!」
【認証しました。これより…ロディーヌの技が変更されます!【聖風の旋風】が一時的に【虚無と虚像を払う風】に変わり【知恵の策略】は【虹の采配】に変更されました!】
ロディーヌは直ぐに【虚無と虚像を払う風】を巻き起こし紫色の靄を払った。
「はぁー…コレで呼吸しやすくなったわ」
「(´∀`)」
『ホゥ…我ガ作リ出シタ靄を払ウカ!ダガ…雲ハ消セナカッタ見タイダナ』
「雲に関しては心配ないわ」
『何?』
「3年前に【西からの進軍】の時に建物を建て直すならかなり丈夫にしようって決めてね。ダンジョンでしか取れない資材を使って直したんだ」
『ソレガナンダト言ウノダ!』
「この東陣営の居住地にある90%の建物はモンスターの技を食らっても効果を受けないのよ」
『何ダト!』
「だから地上も良い具合に防衛が出来ているんじゃないかしら?…私たちも手を貸して貰ったし…反撃と行きましょうか」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【アンクルバンナ王国】
《育成センター》
「おっ…沙葉は猛攻に入ったみたいだ。…アリサさん達の方はどうなってますか?」
『最初は紫色の雨に殺られ掛けたけど、どうにか持ち越したわ。それに中ボスみたいなのが出始めて来たわ』
「了解、交代しながら敵の撃破を任せます」
『了解』
…敵が攻めてきて3時間がたっての中ボスか…ペースが早いな。前の【西からの進軍】の様に早く終わると良いんだけどな。
そこへ緊急回線が入った。
『今、アンクルバンナの指揮を取っているのは誰だ』
「(この声は…)ヤチヨ教官殿、おれです武治です」
『沙葉はどうしたんだ』
「沙葉は因縁のモンスターと上空にて戦闘に入っています」
『そうか…』
「どうしたのです。ヤチヨ教官殿」
『オレと元帥はサンゼアル天山で奴を抑えていたのだか…しくじった』
「…それで奴は今どこに」
『…多分だが…【夜空の領域】だろう』
「……いなり…チャンピオンは?」
『こちらに回線を入れる前に知らせておいた』
「(だとしたらもう向かってるな)了解しました。ヤチヨ教官殿と元帥殿に迎えを【サイゼンリアの街】に居るプレイヤーを向かわせます」
『向かえは必要ない…元帥と共に脱出アイテムを使い避難する』
「了解、ではこのまま策を練りながら作戦を続行します」
『それで良い。ではまた』
武治はふぅとため息を着いた。
「武治君がため息を吐くなんて珍しいわね」
「アゲハさんか…居たなら教えてくださいよ」
アゲハさんは【夜の胡蝶蘭】と言うオネェさんパーティーを組んでいる人でりりぃ姐さんとは「何しとんじゃワレェー!」と良く言い争っている中である。
「悪かったわよ」
「もしかして回線聞いてました?」
「何の事かしら?」
「(このオネェさんは聞き流してくれるのか?)……さてどうしようか?沙葉はレヴィアタンに対して攻撃している見たいだし。周辺のプレイヤーたちも敵が予想していた通りに強く疲弊し始めている」
「武治ちゃんに話して置きたい事があるのよ」
「何ですか?アゲハさん」
「アタクシのパーティーメンバーの3人が1時間前ぐらいに【夜空の聖域】に行ってくると言ったまま消息を絶ったのよ」
「えっあの強い3人がですか?」
「そうなの…どうしてかしらね?それに防衛するのをパスした人たちの方にも5人居ないらしいのよ」
「まさか…その5人って」
「えぇ、そのまさかよ」
おれはリストを見て頭を抱えた。
「よりによってりりぃ姐さんとねねさんと嘉帆とザインと桔梗の異色の組み合わせかい!」
「それに聖域で例のイケメンとドラゴンがどこからともなく現れて何かしている見たいよ」
「まさか…アゲハさんのパーティーの3人はもしかして」
「えぇ、例のイケメンを見るために向かったのよ」
「沙葉の作戦を無視して向かったんかい!」
「もうどうにも止まらなかった見たい。アタクシも行きたかったわ」
「だとすると他のプレイヤーにも沙葉の指示を無視しているプレイヤーも居そうだな。けっこう血の気が多いのが居るし…クッソ…おれではプレイヤーの動きを確認することが出来ないからどうするか?」
「その辺はこのデカいマップに乗っているプレイヤーたちだけを見て指示をしていれば良いんじゃないかしら?その他は悪さをしない限り放置しときなさいよ」
「そうスッか…悪いなオウカ、分身を出して周辺の様子を見てくれるか?」
「(^_^ゞ」
オウカは分身を5体出して東西南北に散って行った。
「もう一体はおれがいる【作戦本部】周辺に探りを入れて来てくれないか?」
最後の分身も作戦本部の周辺を探りに向かった。




