一方その頃の西の大陸では
【西の陣営本部】
《会議場》
「こちらは纏まりが全く無いものですね。いつになったら話し合いがまともに出来るやら」
「相変わらず失礼な婆さんだな。サポートプレイヤー何だろう?手伝ってくれても良いだろうが」
「それは無理です、我々はサポートプレイヤーですので【スタンピード】等の手伝いしか出来ませんよ。それに礼儀を知らぬ者たちを助ける義理はありません」
チッと舌打ちが聞こえた。
「おばあ様もう我慢なりません!傲慢な奴らを相手にしたくないです!」
「マトイ、落ち着きなさい。相手のペースに呑まれてはこちらが不利になりますよ?」
「そうだぜ、マトイ…今日は定例会議なんだいつも通り穏やかに過ごそうぜ?」
「あなた達に呼ばれたくありません!」
すると沙葉の姉である真弥がため息を付いた。
「ねぇ…もう帰っていい?アタシ暇じゃ無いんだけど?こんな茶番が行われてるなら帰るわ」
「帰れませんよ、貴女もここに居る方たちと同じように2番隊の指揮官なのですから」
「それで【チャンピオンサマ】は相変わらずサボりの様ね」
「全く何やってるんだが…」
「坊っちゃま…確認してきましょうか?」
「その必要はありません」
「相変わらず東のプレイヤーの動きはわからずじまいですからね」
「仕方ないんじゃない?3年前に馬鹿を仕出かした代償でこうなっちゃたし…一応、東も同じようにこちらの情報は掴めないだろうから」
「西の王位を乗っ取ったプレイヤー様の意見を聞こうかな?」
「ぼくちんに話を降るなんて、志織きゅんたらどうしちゃったのかな?」
「別にどうもないですよ。東陣営から流れてきたプレイヤーたちの処遇をいい加減決めて欲しいのですよ。王サマ…らしくね?」
「あーそれな?リアルでの結構な有名人が混じってるし大変なんだよねーしたっぱ扱いもで来ないやつと出来るのに分けて活動させてるけどねん」
すると西のチャンピオンが遅れてやって来た。
「悪いな、女たちを相手してて時間がかかった」
「真っ昼間からなにしてんのよ」
「全くです」
「こちらの身を考えて欲しいものですね」
「だから悪かったって言ってるだろ?…マトイちゃん、いい加減俺様の女になる気ない?」
「全くもってありませんよ!」
これまで無言を貫いていた西の自由軍の元帥が口を開いた。
「マトイに手を出したら…どうなるか分かっているかい?」
「ひゅ~…怖いね~軍の元帥さんは…冗談ですよ冗談。で今日はどんな話をするんでしたっけ?」
「…これまで身勝手に行動するのを許していたけど……そろそろ【最後の戦い】に向けて準備を初める為の話し合いと言った筈だよ?やはり君は話を聞いてなかったんだね」
「あぁ~わりぃ~わりぃ~俺様の下僕がちゃんと話を聞いてなかったせいだな~……おい、馬鹿を連れてこい」
「へっへい!」
じゃらじゃらとボロボロの服を着た元西のトップであるジニスが四つん這いになりながら首元から伸びる鎖に引っ張られながら現れた。
「お前…俺様にちゃんと話を伝えられてなかったみたいだな?どうしてくれるんだ?」
「ぐぉっ……お許しお…」
「全くよぉ~ますます自由軍の人から完全に避けられたらどうするつもりだぁ?」
「もっ申し訳ありません…」
「俺様が聞きたいのは謝罪じゃねぇんだよぉ!」
西のチャンピオンは鞭を取り出しジニスに向かって打とうとしたがそこにボロボロのクジラが現れ主人の変わりに鞭に打たれた。
「出てくる元気があんのかよぉ~…チッ興が冷めたわ……不愉快だからコイツらを外に放り投げろ」
すると会場からクスクスと笑い声が響いた。
「今の時期外に出すのは止めて上げなさいよ~…さすがに可哀想じゃなくて」
「この周辺は狂気種達が常に徘徊してて危ないですよ?」
「別に食われようがこのゲームの世界では死ぬことは無いんだ。別に構わないだろう?」
「本当に人間ってここまで落ちぶれるのですね…こうはなりたくないものです」
その様子を見ている自由軍の元帥であるとみの夫リチャードとその母であるエファニエは箍が外れた人間……いや人間とはとても残酷でそこまでの事が出来るようになってしまうことに戦慄していた。
(本当に人間は恐ろしいものですね。理性を無くした人たちはここまで残酷に人をいたぶるのですか……今はまだゲームの中に居るから問題は起きていませんが。現実に戻った後の元の生活に戻り耐えられるでしょうか?)
「君たちいい加減にしたまえ。ここは人をいたぶる為の場所ではない、会議する場である。さもなくば我々は帰らせてもらうが?」
「良いところだったのに。まぁ良い、コイツはこのまま放置して構わない会議を始めようか…作戦会議を」
「……では…我々自由軍はー…」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【西の運営本部】
《会場前》
「コレで会議も綺麗になりましたし帰り…」
「よぉ、マトイちゃん」
「貴方はチャンピオンさんですか…何かご用でも?」
「いや…マトイちゃんが居たものだから声を掛けただけだ」
西のチャンピオンがマトイの背後を取ろうとした。
「もう、その手に引っ掛かりませんよ?」
「ぐぉっ!」
マトイは回り蹴りをチャンピオンの脇腹に入れた。
「3年前から言っておりますが…例えゲームの世界であろうとも如何わしい事は一切しません」
「サポートプレイヤーの癖に」
「わたくしの事はお好きに侮辱してくださいませ(ヤチヨお姉様が西担当でなくて本当に良かったですね。もし担当であれば大変な事になってましたか?…それとも…少しは統率が取れてたでしょうか?)」
「俺様の側に居ない事がいつか後悔する事になるぞ?」
「我々はサポートプレイヤーですが…その様なサポートは業務内容に含まれていません。お引き取りを」
「チッ……あ~あ…今日は美人な奏ちゃんに相手して貰おう」
そう言ってニヤニヤと気持ち悪い笑い方をして西のチャンピオンは帰って行った。
「本当に疲れます……年がら年中発情期で困ったものですね(後悔するのはチャンピオンを含めた好き勝手に馬鹿をしている人たちですよ。現実に戻りどんな言い訳をするのか……楽しみです)」
「おや、 僕の天使が悪い顔をしているね」
「お父様」
「ついさっき助けなくてゴメンね」
「良いのですよ。ハーレム野郎に対してお父様が左手に持っている鈍器を持ち出してヤバイですから。わたくしが行った事は過剰防衛にならないでしょうから……もしそうなったとしても後悔はありません。刑に処されます」
年がら年中発情していて勘違いしているお猿さん相手にはあれくらいね?
「それにしても本当に困ったね。彼等が現実に戻ったらどれだけの事態が起きているのか身をもって知るだろう……僕たちはこう言った事を止めるために居るのに止められなかったから」
「その辺は運営側に言われた通りです「止めに入って自分たちに被害が来るようなら好き勝手させても良い。もし君たちが現実に戻っても追及されない様に手を打つ」と言ってましたし」
「本人が本気で拒否をすれば向こうは手出しできないと言うのに嘆かわしいものだね」
「我々が何度も言っても無駄なのですから気を病む必要はありませんよ。リチャード」
「母上………我々が次にこの地に降りるのは何れくらい先になりましたか?」
「【最後の戦い】の前日まで降りなくてもよいと許可を貰ってきました【下げずまれていた者が突如力を与えられたらどんな事をするのか?】という3つのグループからのデータが充分に取れたそうですから」
「おばあ様、チャンピオンたちから連絡を受けても無視を決め込んで良いのでしょうか?」
「構わないそうです。上から言質を取りました」
…コレで暫くはストレスから解放されます。
「これからは我々の【スカイパレス】に逃げ込んできたまともな神経を持つプレイヤーたちを鍛え【最後の戦い】に備えましょう。彼等を預かる許可も得ています」
「わたくしもヤチヨ姉様に会った時にシバかれない為にも鍛え直さないとですね」
「それは僕もだね。とみからヤチヨと父上の様子を聞いているがここに来る前よりほんの少しだけ優しさが出ているそうだよ」
「まぁ…現実世界に戻るのが楽しみになってきましたね」
「マトイ、偵察だけは続けるよ?もしかして現状から抜け出したいと言うプレイヤーが現れるかも知れないからね」
「その辺は心得ております」




