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裏切り
少女はまだ、噂を聞いていなかった。
噂は上流階級の貴族たちの間で流れていたからだ。
だから、何も考えていなかった。
そんな時に事件は起こったのだ。
「アイルマロア。この花可愛い」
「リラによく似合ってるよ」
リラというのは少女の名前である。
「お世辞なんていいってー」
「いやいや、本当に似合ってるよ」
「アオイまでそんな…」
こんな平和な会話の中で、ある作戦が進められているとは、夢にも思っていなかった。
「リラ、そのカバンの中身、何だ?」
「…え?」