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4話 獣人の村

 翌朝、洞窟に差し込む日差しで目を覚ました。


「おはようございます、レーヴェさま」


「ああ、おはよう」


 既にリアは目を覚ましており俺が起きるのを待っていたようだ。


 昨夜は夜まで獣人の二人と話をしていたから、少し寝不足なのか頭がぼーっとしてしまう。


 そんなことを考えていると、洞窟の入り口からなにやら物音が聞こえてくるのに気が付く。


 俺は体を起こし、その物音のする方向に目を向ける。


 すると、洞窟の入り口で獣人の二人が体を上下左右に動かしていた。


「おはようございます。起きるのが早いんですね」


 俺は二人に歩み寄りながらそう挨拶をする。


「おう、にーちゃん。おはようさん。朝早いのが取り柄の一つでね」


 大柄な獣人――名前をザックと言うらしい。が挨拶をしてくれる。


「さて、兄さんも起きたみたいだし村に向かうとしましょうかー」


 一緒に身体を動かしていた細身の獣人――名前をストラスと言うらしい。が全員に聞こえる声でそう言った。


 俺が起きるのを待っていたのだろうか。少し申し訳ない気がしてしまう。


「別ににーちゃんが起きるのを待ってたわけじゃないさ。気にすんな」


 顔に出ていたのだろう。ザックがそう声をかけてくれた。


「今日はよろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


 俺がお辞儀をすると、後ろからついてきていたリアも同じようにお辞儀をする。


「ああ、任せときな」


 今日、俺たち二人はザックとストラスの案内で、近くにある村まで連れて行ってくれることになっているのだ。


 ***


 洞窟を出発して森の中を歩いていく。木々をかき分けるように歩くので足元はお世辞にもいい状態とは言えない。


 飛び出ている木の根で躓きリアは何度か転びそうになってしまう。なので俺はリアが転ばないように転びそうな場所では手を握り、何度か支えてあげるのだった。


 きっと、リアはこういった道を歩きなれていないのだろう。


 そんなことを繰り返し、森の中を進んでいく。


 俺は気になっていたことをザックさんに質問することにした。


「そういえば、偶然洞窟で会った俺たちを村に連れて行って大丈夫なんですか?」


「なぁに、王国兵から逃げてるんだろぉ? 個人的に王国のものは好かん質でな。王国に追われてるといわれちゃ助けないわけいかんのだよ」


「ザックの王国嫌いは生粋ですもんねー」


「獣人であの王国を好きなやつなんているのか聞きたいぐらいだけどなぁ」


 獣人の二人は何度も繰り返しやってきたであろう冗談を言う風にそう会話を続けた。


「にーちゃん一人だったら正直疑ってたところだが、その嬢ちゃんの様子から見るにその言葉に嘘はなさそうだしなぁ。それに夜な夜な語り合った仲だろ、男の友情に二言はねぇぜ」


「おいらとしちゃー、ザックの勘は当てにしてるからなー」


「おまえは頼りすぎなんだよ、自分で判断しろってんだぁ」


「はは、お二人は仲が良いんですね」


 俺の後ろを歩いていたリアが二人のそんなやり取りを見て、口にする。


「まぁな、ストラスとは幼馴染だから付き合いもなげぇんだ」


「そういえば昨夜も話してましたね。もう一人幼馴染がいるとか」


「ああ。そのもう一人ってのは村にいるはずだ。お前さんたちみたいな訳ありなやつを匿ってくれるもの好きだよ」


 言葉ではそう言っているが、ザックさんはどこか自慢げに口にしている。


「っと、そろそろ見えてくるぞ。あれが俺たちの村だ」


 ザックさんが一つの木の枝をかき分ける。その先には、森の中にあると思えないほど立派な村があった。


「森の中にこんな村があるなんて……」


「方位すら曖昧になる森だからねー。道がわからないと絶対にたどり着けない村だよ」


 ストラスさんは簡単に言うが、同じような木々が溢れていた森だ。それを、どうやって道を覚えれるのか。獣人特有の何かがあるのだろうか。


「付いてきな、噂のもの好きに合わせてやるよ」


 ザックさんはそういうと意気揚々と村の中を歩きはじめるのだった。


 俺とリアはザックさんに後れを取らないように少し小走りになりながらもその後をついていく。


 ***


「ここだよ」


 朝早い時間のため村人を見かけることはなく、ザックさんも早い歩みだったので目的の場所にはすぐについてしまった。


「ここ……ですか……」


 見た目は村にあった他の家々とは変わらない。特にこれといった特徴もない普通の民家という印象を持つ。


「朝早くだがじゃまするぜぇ」


 俺たちの様子を気にすることなくザックさんは家の扉を勢いよく開けてしまう。


「ささ、お二人も中へ」


 その様子に戸惑っている俺たちをストラスさんが招き入れてくれる。


「なんだい、朝から馬鹿でかい声でっ」


 そんな大きな声が聞こえてくる。


 中に入ると正面にはいくつもの瓶が棚に並べられており、棚とこちらを仕切るための台がある。


 そして、その仕切り台の向こう側には一人の獣人の女性が立っていたのだった。


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