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第8話 豊穣の魔法陣


「それで、飯も食わせた訳だし、そろそろ呪いを解いて、ここから出てってくれない?」


 腹も膨れて、クロノスもご機嫌そうだ。

 ある程度の義理は果たしただろう。


「ププ。何を馬鹿なことを言っているんだい? この程度のおもてなしでこのぼくが満足するはずがないじゃないか。プププ。それになんだい? このお粗末な料理は? パンにチーズを乗っけただけじゃないか。それを上級神であるぼくが喜ぶとでも……」


「ほら。新しいのが焼けたぞ」

「わーい!」

「待て! 呪いを解くのが先だ」


 嬉しそうにパンを受け取ろうとするクロノスを俺はさっと手で制した。


「ぐぬぬ。君は人の身で神を脅迫するつもりかい? この人でなし!」

「フハハ。何とでも言うがいいわ」


 その後、チーズパンの誘惑に負けたクロノスは、悔しそうに解呪の呪文を呟き、俺は晴れて自由の身となった。





「そもそもお前はなんでこんなボロい納屋に住み着いてるんだ? 仮にも神様なんだろ?」


 俺が言うのもなんだが、こんなとこ人が住む場所じゃない。ましてや、神様がこだわるような場所でもないだろう。


「ここはね、ぼくが生まれた場所なんだ。詰まる所、この世界で最初の豊穣の土地という訳さ」

「その割には荒れてない?」


 俺はワイルドボアにパンをあげながら目の前に広がる雑草が生い茂った景色を見た。


「うーん。どーしよっかなー。教えちゃおっかなー」


 クロノスはさも意味ありげに俺の方をチラチラ見てくる。


 顔がウザいというのはこういう状態を指すのだろうか?


「秘密を聞きたいかい? どうしてもっていうなら教えてあげてもいいかな〜」

「いや、別に聞かなくていいや」


「……でも本当は気になっているんだろう? まったく君はひねくれていて困る。素直になれない君の為に今回は特別に見せてあげよう。付いてきてくれ」


 いや、本当にいいんだけど……

 どうやら、俺に秘密とやらを教えたくて仕方が無いらしい。

 クロノスに続いて、納屋に入るとそこで空気が変わった。


「今から魔法を発動させるからね。ちょっと離れていてくれ」


 これは魔力か? 肌がピリつく。

 もしかして、とんでもないことがおこるんじゃないか?


「ヌヌヌヌヌ。いくよ! 3、2、1、はい! オープンザフロアァアア!」


 バコンッ!


「!? ……? これだけか?」


 クロノスの掛け声と共に納屋の床が二つに割れた。

 というよりも開いたというべきか。


 大層な空気と大袈裟な掛け声があっただけに拍子抜けだ。

 爆発でもするのかと思ったのに。


 いや、凄いのか…… 地下室だもんな……

 一応拍手しとこ。パチパチパチパチ


「どうだい? 驚いたかい?」

「ああ。すごいすごい」

「なんか反応が薄いように思えるんだけど、まあいいか。本当に驚くのはこの中だからね」


 そういうとクロノスは縄梯子を使ってスルスルと下に降りて行った。


 俺もそれに続くと、地下だというのに妙に明るい。

 そして下まで降りた時、俺の目に飛び込んできたのは壁一面に淡い光が灯った部屋とその中央に位置する光り輝く魔法陣だった。


「なあ、この魔法陣は一体何なんだ?」


「これはね、『豊穣の魔法陣』さ。ここが世界で最初の豊穣の地っていうのは話したね? ここは人による農地の継承に関わらず、豊穣エネルギーが湧き続ける特別なスポットなんだ。その中心がこの魔法陣だね」


 豊穣エネルギー?


「よく分からないんだけど、これがあるからお前はここに住みついてるってことで合ってるか?」


「まあそうだね。だけど、ぼくはここに住みついてる訳じゃないよ。世界には様々な理由で荒れてしまった土地があるんだ。ぼくはここで豊穣エネルギーを充填して、そんな土地を癒して周っているんだ。どうだい? 尊敬して貰っても構わないんだよ?」


「つまり、上の土地が雑草まみれの石ころだらけなのはお前がここから、その豊穣エネルギーとやらを持ち出してるからっていうことか。よしこの魔法陣消すぞ」


「ちょっ! たんまたんま! 何しようとしてるのさ!」


 ハッ! 俺は何を?

 欲に目がくらんで、一瞬理性が吹き飛んでいた。


「ハァハァ…… 君にはちゃんと説明しないといけないみたいだね。人の手が加えられていない土地は豊饒エネルギーの影響を受けないんだ。つまり僕がいくら魔法陣から豊穣エネルギーを持ち出しても、人の手を離れて久しい上の土地への影響はない訳だ」


「だけど、あの土地はこれから俺が耕すことになるんだけど、悪影響はないのか?」


「安心してくれていいよ。ぼくが多少持ち出したところで、並以上の収穫は約束しよう」


「そうか…… 分かった」


 過ぎたる欲望は身を亡ぼすか。

 並以上の収穫が約束されるのなら、それ以上求めるのは毒だ。


 それにしてもこいつ割とちゃんと神様なんだな。

 迷惑神とか思ってて悪かったわ。


「君、今失礼なことを考えなかったかい?」

「気のせいだろ?」


八ヶ月ぶりの更新になりました。それに伴って展開に変更を加えました。これからちょこちょこ書いていこうと思うのでよろしくお願いします。

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